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2013.11.15

イランの核問題協議

核問題に関するイランとP5などとの協議は、11月10日中断したが、会談の雰囲気は良好で、第一段階ではあるが、協議が再開され合意に達する可能性は高いというのが大方の見方であろう。
ただし、楽観視しているばかりではいけないかもしれない。一つはイランと北朝鮮の核・ミサイルに関する協力であり、ミサイルについては北朝鮮がかねてからイランにミサイルを提供していた。これはほぼ周知の事実である。
これに比べ、核に関する協力について分かっていることは少ないが、さる8月、イランと北朝鮮は核・ミサイルに関して協力することに合意したと報道された(共同 11月3日)。右報道を受けて、ブッシュ政権時代に国務次官として核拡散防止に強面で臨んで名をはせたジョン・ボルトン氏は、「もしそれが真実であれば、オバマ政権の政策は見直しが必要となるかもしれない」と語っている(WSJ 11月7日)。
イランの核問題に関して、楽観視できないもう一つの要素は、イランに対し柔軟な姿勢を示している米国政府にイズラエルが批判的な姿勢を見せていることである。
一方、中東から核兵器をなくすことを目指す中東大量破壊兵器禁止地帯構想に関する国際会議は、2012年末に開かれることになっていたが延期されたままになっている。事態を打開するためスイスの小村Glionで非公開の会合が10月21・22日開かれ、イラン・イスラエル・アラブ諸国・米国が出席した。そのこと自体は一つの前進であったが、各国の出席者は各々の立場を主張し、国際会議開催の日程は決まらなかった。イスラエルの代表が直接イラン・アラブ諸国の出席者と話し合うこともなかったそうである(ロイター 11月5日)。
2013.11.11

イランの核問題に対する日本の協力」

イランの核協議は、イランの核開発の縮小と引き換えに同国への制裁を緩和するという第一段階は合意に近いと思われていたが、9日と10日の協議で合意は成立しなかった。しかし、交渉は決裂したのではなく、イラン側も米国やEUの代表も今回の協議で重要な進展があったと述べるなど積極的な意義があったことを認めており、20日には協議が再開されるそうである。
このように第一段階は進展しているが、イランの核協議が最終的な合意に到達できるか、この点についてはまだ不透明、というより、明らかな違いがある。米欧は、兵器に使われる高濃縮ウランの製造はもちろん、医療用などに利用される低濃縮度のものもすべて禁止されるべきだという考えであるのに対し、イラン側は低濃度のウラン製造を禁止される理由はない、原子力の平和利用は主権国家が有する権利であり誰にも奪われないと主張している。
ジュネーブでの協議と同時期に岸田外相がイランを訪問し、ロハニ大統領と会談した。日本はイランの核協議に参加していないが、イランの核開発には強い関心を抱いている。また、イランは日本の原子力平和利用、とくに国際的に核サイクルを認められていることに関心を持ち、イランは日本のようになりたいとさえ言っている。そのような事情があるので、日本としてイランの核開発問題の解決に協力する用意があるとの姿勢を示すことは重要なことである。
注目すべき点は2つある。岸田外相がロハニ大統領に対し、包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期批准を促したのは、イランは核兵器の開発はしないことを関係国に理解させるために一つの有効な手段となりうるとの考えからである。この条約は平和利用の問題は全く扱っておないので、低濃縮ウランに関するイランの主張の是非を問題にすることなく、核兵器は開発しないというイランの主張を国際社会に理解させるのに役立つわけである。
もうh1つのポイントは、国際原子力機関(IAEA)による査察に対しどのように対応するのがよいか、国際社会に理解してもらうにはどうすればよいかについて日本には経験とノウハウがあることである。これは核兵器国には分からないことであり、現在イランと核協議している国のなかではわずかにドイツでけが日本と同様の状況にあるが、ドイツはEUの一員であるため、日本のようにイランとの協力関係には立てない事情があり、したがって査察に対しどのように応じるかという肝心の問題について日本は独特の立場にある。
イランは今後長期にわたってIAEAの査察を受けることになるだろうが、日本の経験とノウハウが役立つのであり、イランが日本の例に見習うことが望ましい。また、日本としても岸田外相が述べたように、イランとIAEAとの交渉でイランを支援する用意があることを示すことも重要である。
イランの核協議が次の段階にまで進むには、査察について明確な合意が作られ、実行していくことが鍵となるだけに、日本が協力する余地は増大していくのではないかと思われる。

2013.11.09

韓国軍は強いか

韓国の国会で11月5日、国防省の国防情報本部長が、南北のどちらが勝つかと問われ「米韓同盟を背に戦えばわれわれが圧勝するが、米軍を除き南北が一対一でやれば負ける」と明言し、韓国で騒ぎになっているそうである(共同電11月8日)。
何を根拠にそのような発言をしたのであろうか。軍事には素人であるが、いくつか考えさせられる。
まず、「米韓同盟を背に戦えば韓国側が圧勝する」と情報本部長が言っている。そんなことは当たり前のことであり、そもそも言及すること自体がおかしいが、それは本論でないので大した問題でない。
南北が一対一でやればどうかという点が本論であるが、「米軍を除き」という想定はそもそもありうるのか。南北の装備は核兵器の有無で大きく違っており、かりに米軍のことを考えなければ、核兵器を持っている北朝鮮と持っていない韓国の比較になるが、その場合軍事力としての優劣は誰の目にも明らかであり、情報本部長はごく当たり前のことを言ったにすぎず、問題になりえないはずである。韓国の通常兵器の装備は最新のものでかなり強力であり、北朝鮮より優れているだろうが、それでも核兵器の軍事的優位性は変わらない。
つまり、核兵器を北朝鮮が保有している限り、南北の軍事力を一対一で比較しても意味がなく、したがってまた、米軍との協力がなければという仮定も意味がないのである。
もう一つの問題点は韓国軍兵士の能力と意志である。かつてベトナム戦争のころ、韓国軍は米側に兵力を派遣していた国のなかでもっとも戦闘力に優れ、かのベトナム軍も恐れていた。しかし、それは半世紀近く以前のことであり、現在の韓国軍兵士に当時の勇猛さが残っているか、疑問視されていても不思議でない。著しい経済成長をなしとげ、豊かな生活に慣れている韓国人は、今やあの手この手で徴兵義務から逃れようとしているらしい。それはどの国でもありうることで、ごく自然なことである。
しかるに、韓国が北朝鮮から軍事的脅威を受けていることはそう変化していない。北朝鮮は相変わらず敵対的な姿勢を韓国に示している。北朝鮮は、韓国側の挑発が先だとよく言っているが、どちらが先にことを始めたかはともかく、南北が敵対することになるのは現在も依然とさほど変わらず継続している。
そうであるにもかかわらず、韓国人、とくに若者の考えがかなり違ってきているのであれば、情報本部長の発言は必ずしも非難されることではない。
韓国内で騒ぎとなったのは、装備の問題でもなく、また、兵士の能力でもなく、軍として北朝鮮と戦う決意が発言から感じられなかったのが本当の原因であったかもしれない。軍人には客観的に情勢を分析することも、かりに状況が不利であっても戦って勝つという気構えを示すことも両方要求されているのであろうか。

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