カレント
2013.12.05
○張成沢の部下である李龍河行政部第一副部長と張秀吉同副部長が11月末に公開処刑された。両人はかねてから張成沢の腹心の部下であった。
○総参謀長の李英浩が2012年7月に処分された後、張成沢は金正恩によって清算される第1の候補になっていた。張成沢が8月訪中した際、朝鮮労働党の国際部部長の金英吉、副部長の金成男、党中央副部長の李秀栄、合営投資委委員長の李光根、外務省次官の金亨俊などを含む50人の随員を連れていった。このような大規模でハイレベルの代表団を連れていくのは、金日成と金正日以外の人にはありえなかったことである。
○もっとも重要なことは、金正恩が自己の指導的地位を確立するため父金正日の言いつけた通りに振舞わなくなったことであった。金正恩が言い出した「核兵器と経済建設を並行して進める」のは、金正日が重視した「先軍」を緩和し、軍の権限を縮小するためであった。
○金正日の葬儀の際葬列に付き添った7人のうち5人の軍人はこの1年の間に張成沢を除いて全員が追放されている。
○張成沢を倒す上で最大の問題は金正日の妹である金敬姫であるが、健康状態にかねてから問題があり、2012年12月、平壌市内で各国大使などを招いた会合に姿を見せた際には、「立っていられないほど体調が悪い」(外交筋)と伝えられていた(この項は読売新聞12月5日)。
○崔龍海(現人民軍総政治局長)は登場した後、地位が急上昇したが、党、保衛部、保安部に固い基礎を持つ張成沢の上に行くことは困難であった。一方、張成沢は軍に対し影響力が弱かった。両者の間には激しいライバル競争があり、最近は金正恩に崔龍海が同伴することが顕著に多くなっていた。
北朝鮮No2の問題
北朝鮮のNo 2、張成沢労働党中央行政部長(国防委員会で金正恩に次ぐ副委員長)が失脚したという観測が流れている。失脚でなく「粛清」されたとも言われている。中国の新聞は本5日時点で、まだ確定的ではないが、ソウルから出た情報を紹介している。情報のきわめて少ない北朝鮮のことであり、軽々に予測することははばかられるが、いずれにしても張成沢について中国の新聞で語られていることは参考になる。とくに次の諸点である。○張成沢の部下である李龍河行政部第一副部長と張秀吉同副部長が11月末に公開処刑された。両人はかねてから張成沢の腹心の部下であった。
○総参謀長の李英浩が2012年7月に処分された後、張成沢は金正恩によって清算される第1の候補になっていた。張成沢が8月訪中した際、朝鮮労働党の国際部部長の金英吉、副部長の金成男、党中央副部長の李秀栄、合営投資委委員長の李光根、外務省次官の金亨俊などを含む50人の随員を連れていった。このような大規模でハイレベルの代表団を連れていくのは、金日成と金正日以外の人にはありえなかったことである。
○もっとも重要なことは、金正恩が自己の指導的地位を確立するため父金正日の言いつけた通りに振舞わなくなったことであった。金正恩が言い出した「核兵器と経済建設を並行して進める」のは、金正日が重視した「先軍」を緩和し、軍の権限を縮小するためであった。
○金正日の葬儀の際葬列に付き添った7人のうち5人の軍人はこの1年の間に張成沢を除いて全員が追放されている。
○張成沢を倒す上で最大の問題は金正日の妹である金敬姫であるが、健康状態にかねてから問題があり、2012年12月、平壌市内で各国大使などを招いた会合に姿を見せた際には、「立っていられないほど体調が悪い」(外交筋)と伝えられていた(この項は読売新聞12月5日)。
○崔龍海(現人民軍総政治局長)は登場した後、地位が急上昇したが、党、保衛部、保安部に固い基礎を持つ張成沢の上に行くことは困難であった。一方、張成沢は軍に対し影響力が弱かった。両者の間には激しいライバル競争があり、最近は金正恩に崔龍海が同伴することが顕著に多くなっていた。
2013.11.30
北朝鮮はかねてから現体制の維持を最重要課題とし、それを脅かす恐れがあるのは米国であるとの認識の下に、米国に対して北朝鮮を攻撃しない保証を求めてきた。それは今日に至るも実現しておらず、したがって、北朝鮮としては防衛のため、つまり体制維持のために核兵器もミサイルも必要であるというのが北朝鮮の主張してきた論理であった。
米国が北朝鮮の求めにある程度歩み寄った表明をしたことが2回あった。第1回目は1994年の「枠組み合意」であり、そのなかで米国は「北朝鮮に対して、核兵器で攻撃または脅威を与えないという正式の確約を与える(will provide formal assurance to the DPRK, against the threat or use of nuclear weapons by the United States)」と言明した。
第2回目は、2005年9月の6者協議共同声明における、北朝鮮に「核兵器または通常兵器による攻撃または侵略を行う意図を有しない(has no intention to attack or invade the DPRK with nuclear or conventional weapons)」との声明である。
ケリー長官の発言はこれら過去2回の声明に比べ、かなり踏み込んだ内容である。最大の違いはケリー長官が「協定を結ぶ用意がある」と明言した点であり、1994年の枠組み合意の「正式の確約」は条約かどうか明確でなかった。北朝鮮はかねてから条約による保証を求めていたので、これは大きな、決定的ともいえる違いであった。2005年の声明は、現在攻撃する意図はないという現状の説明に過ぎず、これは1994年にも及ばない内容であった。
しかしながら北朝鮮は10月12日、ケリー長官の発言に対して国防委員会のスポークスマンが北朝鮮に対する制裁を撤廃し、軍事演習などの挑発をやめるべきだ、と声明を発表したにとどまった。ケリー長官の発言に乗ってこなかったと見られている(たとえば、10月12日AP電)。
しかし、この発言は、直接的には10日から2日間日米韓が海難救助合同訓練を行なったことに向けられていた。この訓練は韓国内でも日本と協力するという点で反対意見が強かったものであり、北朝鮮はこれを軍事演習とみなし、軍事的に対抗する用意があると反発する姿勢を見せていた。軍事的な駆け引きの性格が強いが、いずれにしても北朝鮮がこの合同訓練を不快視していたことは明らかである。
また、ケリー長官の発言は、日米の外務・防衛大臣の協議(いわゆる2+2)後の記者会見で質問に答えて行なわれたものであり、北朝鮮に直接述べられたことではなかった。このようなことにかんがみると、北朝鮮は、ケリー長官の発言が、米政府がこれまでどうしても踏み切れなかったことを変更する新しい方針であるか確かめようとしている可能性がある。北朝鮮に対する安全の保証問題についてはさらに米朝双方の動向を見極める必要があろう。ちなみに、米国の北朝鮮問題担当のデイビス大使はケリー長官のようなことはその後何も言っておらず、従来からの米政府の姿勢を説明するにとどまっている(たとえば11月25日の記者会見での発言)。
ケリー長官の不可侵協定発言
少し時間がたってしまったが、10月3日、ケリー国務長官は日本側との2+2協議の後の記者会見で、北朝鮮との関係に関する米国の方針について重要な発言を行なっていた。「我々は北朝鮮の体制変革を目指していないし(not engaged in regime change)、もし北朝鮮が非核化を決心し、そのため正しく交渉する(engage in legitimate negotiations)ならば、不可侵協定を結ぶ(sign a non-aggression agreement)用意がある」というものである。北朝鮮はかねてから現体制の維持を最重要課題とし、それを脅かす恐れがあるのは米国であるとの認識の下に、米国に対して北朝鮮を攻撃しない保証を求めてきた。それは今日に至るも実現しておらず、したがって、北朝鮮としては防衛のため、つまり体制維持のために核兵器もミサイルも必要であるというのが北朝鮮の主張してきた論理であった。
米国が北朝鮮の求めにある程度歩み寄った表明をしたことが2回あった。第1回目は1994年の「枠組み合意」であり、そのなかで米国は「北朝鮮に対して、核兵器で攻撃または脅威を与えないという正式の確約を与える(will provide formal assurance to the DPRK, against the threat or use of nuclear weapons by the United States)」と言明した。
第2回目は、2005年9月の6者協議共同声明における、北朝鮮に「核兵器または通常兵器による攻撃または侵略を行う意図を有しない(has no intention to attack or invade the DPRK with nuclear or conventional weapons)」との声明である。
ケリー長官の発言はこれら過去2回の声明に比べ、かなり踏み込んだ内容である。最大の違いはケリー長官が「協定を結ぶ用意がある」と明言した点であり、1994年の枠組み合意の「正式の確約」は条約かどうか明確でなかった。北朝鮮はかねてから条約による保証を求めていたので、これは大きな、決定的ともいえる違いであった。2005年の声明は、現在攻撃する意図はないという現状の説明に過ぎず、これは1994年にも及ばない内容であった。
しかしながら北朝鮮は10月12日、ケリー長官の発言に対して国防委員会のスポークスマンが北朝鮮に対する制裁を撤廃し、軍事演習などの挑発をやめるべきだ、と声明を発表したにとどまった。ケリー長官の発言に乗ってこなかったと見られている(たとえば、10月12日AP電)。
しかし、この発言は、直接的には10日から2日間日米韓が海難救助合同訓練を行なったことに向けられていた。この訓練は韓国内でも日本と協力するという点で反対意見が強かったものであり、北朝鮮はこれを軍事演習とみなし、軍事的に対抗する用意があると反発する姿勢を見せていた。軍事的な駆け引きの性格が強いが、いずれにしても北朝鮮がこの合同訓練を不快視していたことは明らかである。
また、ケリー長官の発言は、日米の外務・防衛大臣の協議(いわゆる2+2)後の記者会見で質問に答えて行なわれたものであり、北朝鮮に直接述べられたことではなかった。このようなことにかんがみると、北朝鮮は、ケリー長官の発言が、米政府がこれまでどうしても踏み切れなかったことを変更する新しい方針であるか確かめようとしている可能性がある。北朝鮮に対する安全の保証問題についてはさらに米朝双方の動向を見極める必要があろう。ちなみに、米国の北朝鮮問題担当のデイビス大使はケリー長官のようなことはその後何も言っておらず、従来からの米政府の姿勢を説明するにとどまっている(たとえば11月25日の記者会見での発言)。
2013.11.17
政府が一定のことを国民に知らせないことはどこの国でもありうる。何を秘密にするかについて、特定秘密保護法案は「我が国の安全保障に著しい支障を与えるおそれがある」場合に特定秘密として指定するとしているが、これではあまりに抽象的であり、指定されることが多くなりすぎる恐れがある。
日本の各省庁では以前から秘密の指定を行なっており、名称は必ずしも一致していないが、「取り扱い注意」という軽い指定から「秘密」「極秘」など異なる段階の指定があり、実際には指定が時間の経過とともに増加する傾向がある。官僚にとって、しかるべき秘密の指定を怠れば責任を追及されるが、過剰指定のために責任を追及されることはまずないからである。
また、米国ではconfidentialもあればsecretなど異なる段階の秘密指定があり、米国から秘密の情報を提供される場合、そのいずれかが示されるが、日本側では secretが「特定秘密」にあたるとして扱うのか。しかし、それでは「特定秘密」の範囲が広くなりすぎないか。また、米側では程度の低い秘密指定であっても、日本側では「特定秘密」に指定する必要がある場合があるのではないか。
秘密指定の有効期間は、特定秘密保護法案では5年が原則とされているが、延長が可能であり30年を超えて指定が解除されない場合もあることが規定されている。しかるに秘密指定を解除する際に、日米の間には違いがあるのではないか。
米国では公文書の公開に強い力が働く。政府と民間の関係が日本と異なることが背景にあろう。官尊民卑でない。「お上」の感覚は少ない。知る権利の主張が強いなどの事情である。
日本の官僚は秘密指定の際には熱心になるが、秘密指定の解除には無関心である。米側から公文書が公開されても日本側からは依然として秘密にされる場合がこれまで何回もあった。日本の現代史研究者が公開された米国の公文書によって研究を進めることは現在でもよくある。
さらに、米国の場合、違法な情報リークがある。米国は日本の秘密保護の制度が弱いと思っているかもしれない。制度という点では、公務員法はたしかに弱いかもしれないが、重要な情報が漏れるのは日本側からだけであったか。WikileaksやSnowdenの問題などは、米国政府が絶対に認めないだろうが、だからといって、米国政府の説明をうのみにするべきでない。
どうしても特定秘密保護法を制定するのであれば、5年の指定有効期間経過後は原則すべて公開、秘密の扱いを続けるのであれば、裁判所などの許可を条件にするべきである。現在は内閣が決めれば延長は可能になっているが、日本の省庁が延長を申請してきた場合に内閣が拒否することなどありえない。日本の内閣と省庁との関係を知っている者であれば、常識であろう。かりに、有識者とか、「第三者機関」などであっても、本当に独立・中立であるのはきわめてまれではないか。
特定秘密保護法案
特定秘密保護法案の問題点。政府が一定のことを国民に知らせないことはどこの国でもありうる。何を秘密にするかについて、特定秘密保護法案は「我が国の安全保障に著しい支障を与えるおそれがある」場合に特定秘密として指定するとしているが、これではあまりに抽象的であり、指定されることが多くなりすぎる恐れがある。
日本の各省庁では以前から秘密の指定を行なっており、名称は必ずしも一致していないが、「取り扱い注意」という軽い指定から「秘密」「極秘」など異なる段階の指定があり、実際には指定が時間の経過とともに増加する傾向がある。官僚にとって、しかるべき秘密の指定を怠れば責任を追及されるが、過剰指定のために責任を追及されることはまずないからである。
また、米国ではconfidentialもあればsecretなど異なる段階の秘密指定があり、米国から秘密の情報を提供される場合、そのいずれかが示されるが、日本側では secretが「特定秘密」にあたるとして扱うのか。しかし、それでは「特定秘密」の範囲が広くなりすぎないか。また、米側では程度の低い秘密指定であっても、日本側では「特定秘密」に指定する必要がある場合があるのではないか。
秘密指定の有効期間は、特定秘密保護法案では5年が原則とされているが、延長が可能であり30年を超えて指定が解除されない場合もあることが規定されている。しかるに秘密指定を解除する際に、日米の間には違いがあるのではないか。
米国では公文書の公開に強い力が働く。政府と民間の関係が日本と異なることが背景にあろう。官尊民卑でない。「お上」の感覚は少ない。知る権利の主張が強いなどの事情である。
日本の官僚は秘密指定の際には熱心になるが、秘密指定の解除には無関心である。米側から公文書が公開されても日本側からは依然として秘密にされる場合がこれまで何回もあった。日本の現代史研究者が公開された米国の公文書によって研究を進めることは現在でもよくある。
さらに、米国の場合、違法な情報リークがある。米国は日本の秘密保護の制度が弱いと思っているかもしれない。制度という点では、公務員法はたしかに弱いかもしれないが、重要な情報が漏れるのは日本側からだけであったか。WikileaksやSnowdenの問題などは、米国政府が絶対に認めないだろうが、だからといって、米国政府の説明をうのみにするべきでない。
どうしても特定秘密保護法を制定するのであれば、5年の指定有効期間経過後は原則すべて公開、秘密の扱いを続けるのであれば、裁判所などの許可を条件にするべきである。現在は内閣が決めれば延長は可能になっているが、日本の省庁が延長を申請してきた場合に内閣が拒否することなどありえない。日本の内閣と省庁との関係を知っている者であれば、常識であろう。かりに、有識者とか、「第三者機関」などであっても、本当に独立・中立であるのはきわめてまれではないか。
最近の投稿
アーカイブ
- 2024年10月
- 2024年8月
- 2024年7月
- 2024年6月
- 2024年5月
- 2024年4月
- 2024年3月
- 2024年2月
- 2024年1月
- 2023年12月
- 2023年11月
- 2023年10月
- 2023年9月
- 2023年8月
- 2023年7月
- 2023年6月
- 2023年5月
- 2023年4月
- 2023年3月
- 2023年2月
- 2022年12月
- 2022年11月
- 2022年10月
- 2022年9月
- 2022年8月
- 2022年7月
- 2022年6月
- 2022年5月
- 2022年4月
- 2022年3月
- 2022年2月
- 2022年1月
- 2021年12月
- 2021年11月
- 2021年10月
- 2021年9月
- 2021年8月
- 2021年7月
- 2021年6月
- 2021年5月
- 2021年4月
- 2021年3月
- 2021年2月
- 2021年1月
- 2020年12月
- 2020年11月
- 2020年10月
- 2020年9月
- 2020年8月
- 2020年7月
- 2020年6月
- 2020年5月
- 2020年4月
- 2020年3月
- 2020年2月
- 2020年1月
- 2019年12月
- 2019年11月
- 2019年10月
- 2019年9月
- 2019年8月
- 2019年7月
- 2019年6月
- 2019年5月
- 2019年4月
- 2019年3月
- 2019年2月
- 2019年1月
- 2018年12月
- 2018年11月
- 2018年10月
- 2018年9月
- 2018年8月
- 2018年7月
- 2018年6月
- 2018年5月
- 2018年4月
- 2018年3月
- 2018年2月
- 2018年1月
- 2017年12月
- 2017年11月
- 2017年10月
- 2017年9月
- 2017年8月
- 2017年7月
- 2017年6月
- 2017年5月
- 2017年4月
- 2017年3月
- 2017年2月
- 2017年1月
- 2016年12月
- 2016年11月
- 2016年10月
- 2016年9月
- 2016年8月
- 2016年7月
- 2016年6月
- 2016年5月
- 2016年4月
- 2016年3月
- 2016年2月
- 2016年1月
- 2015年12月
- 2015年11月
- 2015年10月
- 2015年9月
- 2015年8月
- 2015年7月
- 2015年6月
- 2015年5月
- 2015年4月
- 2015年3月
- 2015年2月
- 2015年1月
- 2014年12月
- 2014年11月
- 2014年10月
- 2014年9月
- 2014年8月
- 2014年7月
- 2014年6月
- 2014年5月
- 2014年4月
- 2014年3月
- 2014年2月
- 2014年1月
- 2013年12月
- 2013年11月
- 2013年10月
- 2013年9月
- 2013年8月
- 2013年7月
- 2013年6月
- 2013年5月
- 2013年4月