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2014.04.08

核物質の安全に関する日韓協力

3月24~25日ハーグで開かれた核セキュリティ・サミットは日米韓首脳会談やウクライナ問題のあおりで注目度が低かったが、重要な会議であったことは本ブログで指摘した(3月24日)。
さらに、同サミットにおける朴槿恵大統領の演説(24日)も日本ではほとんど注目されなかったが、テロリストが核物質や核兵器を入手すると大惨事を起こすかもしれないこと、北朝鮮の核施設は平壌の北側であまり遠くないヨンビョンに集中しており、事故が発生すれば、チェルノブイリよりさらに深刻な被害を起こす恐れがあること、この脅威に対処するために各国は協力して核の不拡散、核廃絶および核の安全確保につとめなければならないことなど重要な発言であった(演説内容は韓国政府の公式サイトKorea.netによった)。

韓国では福島原発事故に対する関心が非常に強い。日本では、福島事故が原因で放射能に汚染された可能性があるとして韓国が日本からの魚介類の輸入を制限していることに関心が集まっているが、それもさることながら、ソウルから平壌までの距離は2百数十キロしかなく、北朝鮮の核施設で事故が起こればその影響はただちに韓国に及んでくる。だから韓国は福島の事故に強い関心を持つのである。これは日本では分かりにくい感覚である。
しかも、北朝鮮とテロリストの関係はどうなっているか、不明なことが多い。韓国として北朝鮮の核物質、あるいは核兵器でさえもテロリストの手に渡ることを恐れるのはある意味で当然である。
これまで、北朝鮮については非核化、つまり核兵器を持たせない、あるいは放棄させることがもっぱら話し合われてきた。しかし、日韓両国は核物質の安全について共通の利益を持っており、また、北朝鮮ともこの点で協力関係に立てるのではないか。今後、探求していきたい問題の一つである。

2014.04.07

イランの核交渉が順調に進んでいる?

イランと米英独仏中ロの6カ国による核問題に関する交渉が順調に進展している。昨年11月には「第1段階の合意」が成立しており、その履行も問題なく行なわれており、IAEA(国際原子力機関)はこの2月に、イランによる20%の高濃縮ウランの貯蔵量が昨年11月の196キロから161キロに減ったことを発表していた。
米国政府も今後のイランとの交渉について、予定通り7月20日の期限までに最終合意を達成できる見通しであると報道されている。
すべてはロハニ大統領が2013年8月に就任して、イランが国際社会と協力する姿勢を取るようになってから起こったことであり、前任のアフマドネジャド大統領との違いはそれほど大きかったとあらためて思わされるが、強硬策はアフマドネジャド大統領に限らなかったので、ロハニ大統領は稀に見る国際派ということなのであろう。
イランの核に関する交渉がかくも順調に進んでいることは誠に喜ばしいが、かつてはあまりにもトラブル続きで、米国や欧州諸国が繰り返し苦渋を飲まされてきた記憶があるだけに、正直に言って、これからも交渉が順調に進むのか、半信半疑のような気分を払拭できない。
しかも、最近のウクライナ問題に関してロシアが米欧諸国と鋭く対立し、G8ではロシアを除外することさえ話題になっただけに、ロシアを交えた交渉が順調であることには一種不思議な感じもあるが、そのような経緯や国際情勢にも関わらずイランの核交渉が進展しているのであり、その意義は大きい。
一方、米国はイスラエルとパレスチナの和平交渉が進まないことには非常に不満で、双方にあててではあるが、「米国が費やせる時間と努力には限界がある」とケリー国務長官が警告している。
パレスチナ問題にしてもイランの核問題にしても過去には複雑極まる経緯があっただけに、単純に割り切った見方をするべきでなく、時間をかけて今後の推移を見守る必要があるのは当然であるが、イランとの核交渉はそもそも事実上核武装をしているイスラエルのために困難になっていた面があり、イスラエルが変化していないのにイランの核交渉が進みだしたことの意味合いは大きい。また、イランとの核交渉はロシアとの協力の場でもある。
イランは米国にとってよい国になり、昔から米国が支えてきたイスラエルが問題国になっていると言うには早すぎるが、これまでの常識だけではとらえにくい面が生じてきているのかもしれない。

2014.04.01

南シナ海に関する仲裁裁判への提訴

2014年3月30日、フィリピンは南シナ海の紛争を国連海洋法条約の強制的仲裁に提訴した。これより約1年前の2013年1月22日、フィリピンはそうすることを中国に通報していた経緯がある。

米国務省は同日、「米国は脅迫や強制などを含め報復攻撃を受ける心配なく、海洋に関する紛争を平和的に解決することを支持する。すべての国は、フィリピンも含め、国連海洋法条約の下の紛争解決システムを利用する締約国の権利を尊重すべきである。米国は今回のケースが海洋に関する国際法の確実性とその順守につながる(this case serves to provide greater legal certainty and compliance with the international law of the sea)ことを希望する」という声明を発表した。

一方、中国からは4月1日、人民日報の評論が出た。その内容は、南沙諸島は古くから中国の領土でフィリピンが侵攻してきたなどとかねてからの主張を繰り返すもので、「。中国政府は、フィリピンとは話し合いで解決することを提案している。問題の核心は、南沙諸島の一部の主権について主張が対立していることであり、領土主権問題は海洋法の管轄ではないという立場であり、今後もこの立場を堅持する。フィリピンが一方的に海洋法の仲裁手続きに提訴したことを拒否する」などと述べている。

国連海洋法第286条などには、「条約の解釈又は適用に関する紛争であって話し合いで解決できない場合、いずれかの紛争当事者の要請により、管轄権を有する裁判所に付託される」「いずれの国も、(中略)書面による宣言を行うことにより、この条約の解釈又は適用に関する紛争の解決のための次の手段のうち又は二以上の手段を自由に選択することができる」として、国際海洋裁判所、国際司法裁判所、仲裁裁判所のいずれか(複数も可)を選択できると明記している。フィリピンと米国の行動と立場表明はこの規定にかなっているではないか。

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