平和外交研究所

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朝鮮半島

2018.01.04

新年も米朝両首脳の激しい口合戦で始まったが、、、

 金正恩委員長が新年の辞で、「執務机の上に核のボタンが置いてある」と言ったのに対し、トランプ米大統領は2日、自分はそれより「ずっと大きく強力な」核ボタンを保有しているとツイートした。
 新しいことは何もない。金正恩委員長は北朝鮮の核戦力が完成したとの考えであり、そのことを米国にできるだけ大きく、また強く見せつけようとしている。それにトランプ大統領が独特の反知性的スタイルで反応しているに過ぎない。ばかばかしいやり取りであり、アニメにでもすればよいだろう。今年もこのような低俗な口げんかに付き合わされるのかと思うと憂鬱だ。
 
 一方、南北朝鮮間では緊張緩和の機運が高まっている。これも金正恩委員長が同じ新年の辞で平昌オリンピックに言及して、「大会が成功裏に開催されることを心から願っている。われわれは代表団の派遣を含めて必要な措置を講じる用意があり、そのために北と南の当局が至急会うこともできる」と述べたことから始まった。韓国側では以前から北朝鮮のオリンピック参加の可能性を模索していたので、最初の働きかけは韓国から行われたのであろうが、ともかく金正恩委員長の発言から物事が動き始め、翌2日、文在寅大統領が金正恩委員長の発言を支持する意思を表明した。
 両国は南北会談を開く準備にかかり、停止されていたホットラインを復活させた。北朝鮮は韓国批判を一切中止した。

 最大の問題は、例年2月末から3月初めに開始される米韓合同演習をどうするかである。オリンピックは2月9~25日、パラリンピックは3月9~18日開催されるので、例年通りであればオリンピックの開催中に米韓の演習が開始されることになる。この演習は北朝鮮が仮想の相手であり、北朝鮮はかねてよりこれを嫌悪し、また、米韓両国を非難する際に「北朝鮮に対する敵対行為だ」と繰り返してきたことなので、実際にそのような事態になれば、南北間の緊張緩和はいっぺんに吹き飛んでしまうかもしれない。
 米韓両国はこの重要な演習を延期すべきか、すでに検討を始めている。マティス米国防長官は12月29日、「計画変更は常に両国と軍次第だ。(検討結果は)米韓両政府から発表があるだろう」と語っていた。この話しぶりからすれば、演習が延期されることになる可能性は大きいように思われる。

 米韓合同演習が首尾よく延期されれば、われわれは2か月間、平穏な毎日を過ごせることとなる。昨年は金正恩委員長が新年の辞で「大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射実験の準備が最終段階に入った」と述べ、2月初めの安倍首相とトランプ大統領の会談の際にミサイルの発射実験を行い、その後もミサイル実験を繰り返したのと大違いになる。

 平昌オリンピックまでの2か月間、北朝鮮をめぐる状況が平穏に保たれれば、その後も積極的な方向に進むきっかけになりうる。長年こじれてきた問題なので安易に楽観的になれないが、関係国はその方向で努力するのは当然である。

 今月16日に、北朝鮮問題に関する閣僚級会議がカナダ・バンクーバーで開催される。北朝鮮の脅威に対して各国が意見交換することはもちろん必要だが、現在ほんのりと浮かび上がってきた緊張緩和の兆しにもうまく対応してもらいたいものである。 

2017.12.29

悪化しつつある慰安婦問題

 慰安婦問題については、日韓間の動向と国際的な状況(国連や米国など)は関連がないわけではないが、区別して見ていく必要がある。

 日韓間では、この問題の「最終的かつ不可逆的」な解決をうたった2015年合意の交渉過程などを調べていた韓国の外相直属の検証チームが、27日、検証結果を発表した。その内容は、「元慰安婦の意見が十分反映されなかった」、「不均衡な合意が一層不均衡になった」、「政府間で最終的・不可逆的解決を宣言したとしても問題は再燃するしかない」などであった。
 文在寅大統領は翌日、日韓合意は「手続き上も内容上も重大な欠陥があったと確認された」とし、「両首脳の追認を経た政府間の公式的な約束という重みはあるが、この合意では慰安婦問題は解決されない」などと表明した。

 これに対し河野外相は、訪問先のトルコ・アンカラで、「韓国政府がすでに実施に移されている合意を変更しようとするなら、日韓関係が管理不能となり、断じて受け入れられない」と、検証結果と文氏の発言を明確に拒否するとともに、合意に従って解決を図ることの重要性を強調した。当然の反応だったと思う。

 文在寅大統領の声明が日本に対し再交渉を求めていなかったことは評価できるが、そもそも文在寅政権の慰安婦問題についての対応は中途半端な印象が強い。
 最大の問題は、日韓の合意を一方的に否定しても事態は改善しないことである。国家間の合意は尊重していかなければ、正常な関係は維持できない。韓国側は、日本側の国際法と国際常識に基づく立場は岩のように堅固であることを容易に予測できたはずだのに、あえて検証を始めたのは賢明でなかったのではないか。
 
 日本の常識と韓国の常識がずれているという問題はあろう。韓国政府は、前政権がしたことを覆す。米国との間のTHAAD配備問題についても前政権が実行したことを覆そうとした。
しかし、それでは相手の国は困る。到底認められない。外交の常識から言えば、こちらの主張が100%正しいとは言えないかもしれない、相手方の主張もよく聞かなければならないが、慰安婦問題については、2年前の合意のほか、韓国から可能な具体策を聞いたことがない。安倍首相に謝罪を求めているが、日韓合意でも謝罪しているし、十数年前、橋本首相は謝罪の手紙を被害者に送っている。

 一方、国際社会での慰安婦問題をめぐる状況も悪化している。この面では、国連だけで慰安婦問題に関係する委員会がいくつかあり、また、米国各地で慰安婦問題を取り上げようとする動きがあるので、メディアとしても報道しにくいのだろうが、ともかく日本国内にはわかりやすく伝えられていない。日韓間の状況の報道に比べると、数分の一程度である。

 いずれにしても、2年前の「女子差別撤廃委員会」(1979年採択の条約の運用状況をモニターし、必要な措置について国別に勧告を行う場。条約の締約国数は現在189)での日本審査以降、国際社会の状況は日本にとって厳しさを増している。
 「拷問禁止委員会」が2017年5月、慰安婦問題に関する日韓合意について「見直すべきだ」とする勧告を含む「最終見解」を公表したことはその表れであった。
 サンフランシスコ市と大阪市との間のやり取りは、政府間のことでないが、慰安婦問題全体について日本側のイメージダウンを助長した恐れがある。

 日本では、慰安婦問題というと日韓間のことに注意が向きがちであるが、国際社会の状況はある意味では日韓の問題より深刻である。今後、国連などでどのように対応すべきか、徹底した検討が必要である。

2017.12.27

女子差別撤廃委員会での北朝鮮審査

 「女子差別撤廃委員会」とは、男女の平等を達成することを目的とし、女子に対するあらゆる差別を撤廃することを基本理念とする「女子差別撤廃条約」(1979年採択。現在の締約国数189)の運用状況をモニターし、必要な措置について国別に勧告を行う場であり、日本についての最新の審査は2016年2月に行われた。
 
 北朝鮮の審査は2005年以来行われていなかった。同国政府が条約の規定に反して、4年ごとの報告を怠っていたためであるが、2017年11月に実現した。どうして応じることにしたのか。先般の安保理緊急会合に北朝鮮代表が出席したのも異例であった。北朝鮮政府は、国際社会と対立するだけでなく、北朝鮮の立場を積極的に説明する方針に転換しようとしている可能性もある。仮説にすぎないが、今後も注意深く見守っていく必要がある。
 
次回の北朝鮮審査は2021年11月に予定されている。
 
なお、今回の審査に出席した同国代表団は、在ジュネーブ国際機関代表部大使をはじめ、人民最高会議、中央法院、教育省、保健省、外務省などの官員から構成されていた。審査は厳しいものとなることが予想された中で、北朝鮮として最善の体制で対応しようとしたのであろう。

 今回の審査ではこのほか、次のような点が注目された。

 北朝鮮に対する国連などの制裁は女性に対する影響が特に強いので、女性の権利を擁護するため必要な措置を優先的に取るべきだと指摘された。

 今回の審査にはHuman Rights WatchなどNGOが事前に文書で委員会に情報を提供し、審査にもオブザーバーとして出席した。その調査に基づいて、北朝鮮から中国へ出国し、一定の期間中国で性的サービスを強要された女性が北朝鮮へ帰国した後に収容所などでふたたび暴行される例などが報告された。女性差別撤廃委員会の審査では、当該国に対して最も重要な勧告を数点「フォローアップ事項」として指摘し、2年以内の再度の報告を求める慣例となっているが、北朝鮮に関しては、脱北し帰国した女性に対する収容所での性暴力・堕胎の強要がフォローアップの対象となった。
 北朝鮮の女性の性的被害はさまざまな形で、また、児童も被害者となるなど深刻であり、法整備を含め至急対策を講じる必要があると指摘された。

 今回の審査結果は北朝鮮にとって厳しい内容であったが、北朝鮮においては、一定の分野で女性が進出しており、例えば、最高人民会議の事務局長(閣僚レベル)も女性であり、最近は外交官になる女性も増加しているという説明もあった。

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