2017 - 平和外交研究所 - Page 11
2017.09.25
「第18回党大会以来、中国軍においては4000件の検挙があり、1万3千人あまりが処分を受けた。そのうち将官クラス(原文は「副軍級以上」)のいわゆる「軍の老虎」は50人強に達している。上将(大将)クラスでは徐才厚、郭伯雄、田修思、王建平、王喜斌の5人が含まれている。
しかし、問題はまだ多数残っている。中央軍事委員会は9月15日から「巡視組」を派遣して、軍の各機関、各部隊、軍事学校などに派遣して郭伯雄、徐才厚(ともに元軍事委員会副主席で有罪判決を受けた)が残した影響の一掃を図ることになっている。この調査は19回党大会の開催の3日前まで続けられる。」
中国の軍は共産党の一党独裁体制を支えるかなめであり、また、中国政府が尖閣諸島付近で強硬策を取るのは軍の影響があるからである。
一方、中国軍は近代的な軍に脱皮しておらず古い体質が温存されている。また、軍人の規律は必ずしも高くないなどの問題がある。腐敗の蔓延はこれら諸問題とも関係している。
中国軍内の反腐敗運動
本HPは9月8日付「中国における軍改革の完成と習近平の絶対体制」で、第19回中国共産党大会の開催を来月に控え、中国軍の改革がほぼ完成し、軍事においても習近平主席に権限を集中させることになったことを紹介した。その中で「最大の難問は軍内の腐敗の除去であり、これは郭伯雄および徐才厚の処断後も継続中である」とだけ記載したが、香港の『明報』紙は9月22日、解放軍のサイトに基づき、取り締まりの現状について数字をあげて次のように報道している。「第18回党大会以来、中国軍においては4000件の検挙があり、1万3千人あまりが処分を受けた。そのうち将官クラス(原文は「副軍級以上」)のいわゆる「軍の老虎」は50人強に達している。上将(大将)クラスでは徐才厚、郭伯雄、田修思、王建平、王喜斌の5人が含まれている。
しかし、問題はまだ多数残っている。中央軍事委員会は9月15日から「巡視組」を派遣して、軍の各機関、各部隊、軍事学校などに派遣して郭伯雄、徐才厚(ともに元軍事委員会副主席で有罪判決を受けた)が残した影響の一掃を図ることになっている。この調査は19回党大会の開催の3日前まで続けられる。」
中国の軍は共産党の一党独裁体制を支えるかなめであり、また、中国政府が尖閣諸島付近で強硬策を取るのは軍の影響があるからである。
一方、中国軍は近代的な軍に脱皮しておらず古い体質が温存されている。また、軍人の規律は必ずしも高くないなどの問題がある。腐敗の蔓延はこれら諸問題とも関係している。
2017.09.20
演説は41分間。イランの核問題、ベネズエラの民主主義を巡る問題、イスラム過激派、キューバ政府などについても言及したが、最も鋭い矛先を向けたのは北朝鮮であった。
トランプ氏は、北朝鮮が米人学生を非人道的に扱い、「日本の浜辺で13歳の少女を拉致した」ことなどに触れ、「邪悪な国家」だと表現しつつ、「米国は強大な力と忍耐力を持ち合わせているが、米国自身、もしくは米国の同盟国を守る必要に迫られた場合、北朝鮮を完全に破壊する以外の選択肢はなくなる。『ロケットマン』は自身、および自身の体制に対する自爆に向かっている。北朝鮮にとっては非核化が将来への唯一の道だ」と言明した。
また、国連加盟国は北朝鮮が敵対的な態度を改めるまで 金正恩体制の孤立化に向け共に取り組む必要があるとの考えを示し、「一部の国が北朝鮮と貿易を行うだけでなく、武器を提供し、財政支援を行っていることに憤りを感じる」と述べた。中国を非難したのだろう。
トランプ氏の発言は、北朝鮮問題に限らず全般的に分かりやすく、理解を得られやすいのが特徴的だが、北朝鮮はもとより中国やロシアなど米国と対立気味の諸国からは反発を受けやすい。ラブロフ・ロシア外相などは、米国第一主義は受け入れられないとさっそくコメントしている。
トランプ氏は米国が主導的に北朝鮮を攻撃すると言ったのではない。あくまで米国や同盟国が北朝鮮から攻撃されて場合のこととして北朝鮮を破壊する覚悟もあると述べたに過ぎないが、言葉は激烈であり、非難合戦がさらに高じる危険はある。また、マティス国防長官は、ソウルに対する反撃を防ぎつつ北朝鮮を攻撃することは可能だとか、また10月に空母を朝鮮半島に派遣するなどと発言している。このように強硬姿勢に対して北朝鮮は強気で反撃してくる恐れが大きいことを勘案すると、不測の事態が発生する危険性は一段と高まったと見ざるを得ない。
北朝鮮の李容浩外相は22日に演説予定であり、そのなかで米国との関係をどのように表現するか注目される。
トランプ大統領の国連演説
トランプ米大統領は9月19日、ニューヨークの国連本部で行った就任後初の一般討論演説で、非常に強い言葉で北朝鮮を非難した。演説は41分間。イランの核問題、ベネズエラの民主主義を巡る問題、イスラム過激派、キューバ政府などについても言及したが、最も鋭い矛先を向けたのは北朝鮮であった。
トランプ氏は、北朝鮮が米人学生を非人道的に扱い、「日本の浜辺で13歳の少女を拉致した」ことなどに触れ、「邪悪な国家」だと表現しつつ、「米国は強大な力と忍耐力を持ち合わせているが、米国自身、もしくは米国の同盟国を守る必要に迫られた場合、北朝鮮を完全に破壊する以外の選択肢はなくなる。『ロケットマン』は自身、および自身の体制に対する自爆に向かっている。北朝鮮にとっては非核化が将来への唯一の道だ」と言明した。
また、国連加盟国は北朝鮮が敵対的な態度を改めるまで 金正恩体制の孤立化に向け共に取り組む必要があるとの考えを示し、「一部の国が北朝鮮と貿易を行うだけでなく、武器を提供し、財政支援を行っていることに憤りを感じる」と述べた。中国を非難したのだろう。
トランプ氏の発言は、北朝鮮問題に限らず全般的に分かりやすく、理解を得られやすいのが特徴的だが、北朝鮮はもとより中国やロシアなど米国と対立気味の諸国からは反発を受けやすい。ラブロフ・ロシア外相などは、米国第一主義は受け入れられないとさっそくコメントしている。
トランプ氏は米国が主導的に北朝鮮を攻撃すると言ったのではない。あくまで米国や同盟国が北朝鮮から攻撃されて場合のこととして北朝鮮を破壊する覚悟もあると述べたに過ぎないが、言葉は激烈であり、非難合戦がさらに高じる危険はある。また、マティス国防長官は、ソウルに対する反撃を防ぎつつ北朝鮮を攻撃することは可能だとか、また10月に空母を朝鮮半島に派遣するなどと発言している。このように強硬姿勢に対して北朝鮮は強気で反撃してくる恐れが大きいことを勘案すると、不測の事態が発生する危険性は一段と高まったと見ざるを得ない。
北朝鮮の李容浩外相は22日に演説予定であり、そのなかで米国との関係をどのように表現するか注目される。
2017.09.19
ミャンマーには約100万人のロヒンギャがいるが、その地位は極めて不安定である。ミャンマー人からは差別的な待遇を受けており、不満から暴力行為に走る場合もあり、人権侵害問題が起こっている。ミャンマー国軍によるロヒンギャへの組織的迫害があるとも指摘されている。2015年春に数千人のロヒンギャ難民がどの国からも拒否され海上をさまよった事件は世界的に有名になった。オバマ大統領は2016年9月、訪米したスー・チー氏に対しロヒンギャ問題の解決を促した。
ミャンマーには少数民族が多数存在し、全人口の3分の1を占めているが、これらはすべてミャンマー国籍を持つミャンマー人である。しかし、ロヒンギャはミャンマー国籍を持たず、この中に含まれていない。ミャンマー政府はロヒンギャをミャンマー国内の少数民族と認めず、バングラデシュからの難民と位置付けており、「(不法移民の)ベンガル人」という呼称を用い続けているのである。
スー・チー氏は手をこまねいていたわけではない。2016年8月には、アナン元国連総長を長とする特別諮問委員会を設置し、1年後の8月24日、同委員会は最終報告書を公表した。同報告は、ミャンマーが世界最多の無国籍者を抱えると指摘し、ミャンマー政府に国籍法を改正し、ロヒンギャが国籍を取得できる制度に改めるよう求めている。移動の自由も認めるよう勧告している。アナン委員長が、「実行の責任は政府にある」と述べたのに対し、スー・チー氏は「政府全体で勧告を推進する枠組みを作る」と答えたという。
しかし、報告書公表の翌日には、ロヒンギャとみられる武装集団が警察施設などを襲撃した事件が起こり、治安当局が掃討作戦を行った。
事態は急を要する。スー・チー氏は国連総会を欠席し、9月19日に同国で演説し、その中で国連の調査を受け入れる用意があることも示唆した。
ミャンマーでは、かねてから民主化勢力、軍、少数民族(ロヒンギャは含まれない)が三つ巴状態にあった。軍事政権下では民主化勢力対軍の対立だけが目立っていたが、民主化が実現すると、少数民族問題の解決なくして真の民主化は実現しないことが明らかになり、国民の間の不満が高まった。
アウン・サン・スー・チー国家顧問はさる3月30日、民主的な政権が生まれてからの1年を回顧してテレビ演説し、「国民の期待ほどには発展できなかった」と認め、さらに、「私の努力が十分でなく、もっと完璧にこなせる人がいるというなら身を引く」とまで述べていた。
そのような状況の中で、ロヒンギャ問題が悪化し、風雲急を告げる事態になってきた。政府としては、特別諮問委員会の勧告に従い必要な措置を実行していかなければならないが、不満を募らせているミャンマー国民のロヒンギャを見る目は冷たい。その背景には、さらに、国民の大部分が仏教徒であるという事情もある。
しかし、スー・チー氏に代わりうる指導者はいそうもない。なんとしてでも同最高顧問の下で改革を進める必要がある。国際社会もスー・チー氏を支持し、また、必要な援助を提供する必要がある。
ミャンマーとロヒンギャ
ミャンマーのアウン・サン・スー・チー国家顧問が、イスラム教徒のロヒンギャ問題で窮地に立たされている。ニューヨークでは国連総会の開催をひかえた9月18日、ロヒンギャ問題に関する閣僚レベルの非公式会合が開催され、スー・チー氏に暴力を止めさせるよう善処を求める意見が相次いだ。批判的な発言が多かったらしい。同女史はミャンマーの民主化のため軍政権下で抵抗を続け、ノーベル平和賞を受賞しているが、その返還を求める署名がネット上で集められている。同じノーベル平和賞受賞者のマララ氏は、スー・チー氏がロヒンギャ問題について黙していると非難した。ミャンマーには約100万人のロヒンギャがいるが、その地位は極めて不安定である。ミャンマー人からは差別的な待遇を受けており、不満から暴力行為に走る場合もあり、人権侵害問題が起こっている。ミャンマー国軍によるロヒンギャへの組織的迫害があるとも指摘されている。2015年春に数千人のロヒンギャ難民がどの国からも拒否され海上をさまよった事件は世界的に有名になった。オバマ大統領は2016年9月、訪米したスー・チー氏に対しロヒンギャ問題の解決を促した。
ミャンマーには少数民族が多数存在し、全人口の3分の1を占めているが、これらはすべてミャンマー国籍を持つミャンマー人である。しかし、ロヒンギャはミャンマー国籍を持たず、この中に含まれていない。ミャンマー政府はロヒンギャをミャンマー国内の少数民族と認めず、バングラデシュからの難民と位置付けており、「(不法移民の)ベンガル人」という呼称を用い続けているのである。
スー・チー氏は手をこまねいていたわけではない。2016年8月には、アナン元国連総長を長とする特別諮問委員会を設置し、1年後の8月24日、同委員会は最終報告書を公表した。同報告は、ミャンマーが世界最多の無国籍者を抱えると指摘し、ミャンマー政府に国籍法を改正し、ロヒンギャが国籍を取得できる制度に改めるよう求めている。移動の自由も認めるよう勧告している。アナン委員長が、「実行の責任は政府にある」と述べたのに対し、スー・チー氏は「政府全体で勧告を推進する枠組みを作る」と答えたという。
しかし、報告書公表の翌日には、ロヒンギャとみられる武装集団が警察施設などを襲撃した事件が起こり、治安当局が掃討作戦を行った。
事態は急を要する。スー・チー氏は国連総会を欠席し、9月19日に同国で演説し、その中で国連の調査を受け入れる用意があることも示唆した。
ミャンマーでは、かねてから民主化勢力、軍、少数民族(ロヒンギャは含まれない)が三つ巴状態にあった。軍事政権下では民主化勢力対軍の対立だけが目立っていたが、民主化が実現すると、少数民族問題の解決なくして真の民主化は実現しないことが明らかになり、国民の間の不満が高まった。
アウン・サン・スー・チー国家顧問はさる3月30日、民主的な政権が生まれてからの1年を回顧してテレビ演説し、「国民の期待ほどには発展できなかった」と認め、さらに、「私の努力が十分でなく、もっと完璧にこなせる人がいるというなら身を引く」とまで述べていた。
そのような状況の中で、ロヒンギャ問題が悪化し、風雲急を告げる事態になってきた。政府としては、特別諮問委員会の勧告に従い必要な措置を実行していかなければならないが、不満を募らせているミャンマー国民のロヒンギャを見る目は冷たい。その背景には、さらに、国民の大部分が仏教徒であるという事情もある。
しかし、スー・チー氏に代わりうる指導者はいそうもない。なんとしてでも同最高顧問の下で改革を進める必要がある。国際社会もスー・チー氏を支持し、また、必要な援助を提供する必要がある。
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