ブログ記事一覧
2021.05.10
サミットの準備のため、ロンドンで5月3-5日開催された外相会議では、新疆ウイグル自治区やチベットでの人権侵害、香港情勢、中国の国際経済における責務などが議論され、またロシアおよび北朝鮮についても話し合われた。
今次会議は、なかでも台湾支持の姿勢を強く打ち出した。外相会議の共同声明は2006年以来初めて台湾に言及し、中国に対し、「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調し、両岸問題の平和的解決を促し」た。中国が台湾に対し軍事的圧力を加えていることに、一致して強い危機感を示したのである。
その上、5月24日から始まる世界保健機関(WHO)年次総会への台湾の参加について「支持」を明記した。
これまでも日米欧の各国は、台湾の参加(オブザーバーとして)を支持してきたが、中国の反対は強く、実現しなかった。今回も中国は反対だろうとみられており、実現の可能性は高くない。
しかし、中国の主張を曲げない範囲内で台湾のオブザーバー参加を認めることは可能である。中国が仮にそれを認めれば中国の協調的姿勢を示すのに役立つであろう。
コロナ禍の対する台湾の経験と対策をWHOの参加国が共有するのは極めて意義深いことであり、中国の柔軟な対応を期待したい。
WHO総会への台湾の参加問題
今年のG7首脳会議(サミット)はイギリス南西部のコーンウォールで、首脳どうしが直接対面する形式で開催される。最大の議題は中国への対応になりそうである。サミットの準備のため、ロンドンで5月3-5日開催された外相会議では、新疆ウイグル自治区やチベットでの人権侵害、香港情勢、中国の国際経済における責務などが議論され、またロシアおよび北朝鮮についても話し合われた。
今次会議は、なかでも台湾支持の姿勢を強く打ち出した。外相会議の共同声明は2006年以来初めて台湾に言及し、中国に対し、「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調し、両岸問題の平和的解決を促し」た。中国が台湾に対し軍事的圧力を加えていることに、一致して強い危機感を示したのである。
その上、5月24日から始まる世界保健機関(WHO)年次総会への台湾の参加について「支持」を明記した。
これまでも日米欧の各国は、台湾の参加(オブザーバーとして)を支持してきたが、中国の反対は強く、実現しなかった。今回も中国は反対だろうとみられており、実現の可能性は高くない。
しかし、中国の主張を曲げない範囲内で台湾のオブザーバー参加を認めることは可能である。中国が仮にそれを認めれば中国の協調的姿勢を示すのに役立つであろう。
コロナ禍の対する台湾の経験と対策をWHOの参加国が共有するのは極めて意義深いことであり、中国の柔軟な対応を期待したい。
2021.05.05
全人代と軍人代表大会の中間の4月23日に、宋学副参謀長は、中国が2隻目の空母を建造すること、初の空母「遼寧」よりも大型化することなどを明らかにしたという。処分が決定した後で、このような説明を行うことは異例である。
宋学副参謀長は、空母と関係が深く、その関連でメディアに説明することがよくあった。空母「遼寧」は海軍の3艦隊のいずれにも属さず、海軍直属となっており、このことにも関与していたらしい。また同副参謀長は装備の担当であり、その地位を利用して賄賂を受け取ったと、4月30日付の米系華字紙『多維新聞』は示唆していた。
習近平主席は2014年10月に開催された政治工作会議の席で、海軍における腐敗問題を解決しなければならないと述べていた。宋学副参謀長以外にも、海南省軍区元政治委員葉青、江蘇省軍区元政治委員の孟中康、解放軍戦略支援部隊元副司令員兼参謀長の饒開勛、西部戦区陸軍元副司令員の徐向華など5人の高官が全人代代表の資格をはく奪された。
なお、2012年、「遼寧」が就役する際に作られた艦内規則の中に、男女が二人だけになってはならないという趣旨の規定が置かれた。外国人記者がそのことに関して質問をしたところ、米国海軍の空母の内部規則を倣ったのだという説明であった。中国海軍のイメージに合わない出来事が時折出てくる。
宋学中国海軍副参謀長の罷免
中国人代網(全人代のサイト)は4月29日、宋学中国海軍副参謀長が重大な規律違反の廉で全人代代表を罷免されたと発表した。実質的には、4月9日開催された軍人代表大会で処分が決定していた模様である。全人代と軍人代表大会の中間の4月23日に、宋学副参謀長は、中国が2隻目の空母を建造すること、初の空母「遼寧」よりも大型化することなどを明らかにしたという。処分が決定した後で、このような説明を行うことは異例である。
宋学副参謀長は、空母と関係が深く、その関連でメディアに説明することがよくあった。空母「遼寧」は海軍の3艦隊のいずれにも属さず、海軍直属となっており、このことにも関与していたらしい。また同副参謀長は装備の担当であり、その地位を利用して賄賂を受け取ったと、4月30日付の米系華字紙『多維新聞』は示唆していた。
習近平主席は2014年10月に開催された政治工作会議の席で、海軍における腐敗問題を解決しなければならないと述べていた。宋学副参謀長以外にも、海南省軍区元政治委員葉青、江蘇省軍区元政治委員の孟中康、解放軍戦略支援部隊元副司令員兼参謀長の饒開勛、西部戦区陸軍元副司令員の徐向華など5人の高官が全人代代表の資格をはく奪された。
なお、2012年、「遼寧」が就役する際に作られた艦内規則の中に、男女が二人だけになってはならないという趣旨の規定が置かれた。外国人記者がそのことに関して質問をしたところ、米国海軍の空母の内部規則を倣ったのだという説明であった。中国海軍のイメージに合わない出来事が時折出てくる。
2021.05.02
バイデン大統領は、中国については日本政府がアップアップするほど力強く対決姿勢を打ち出したが、これに比べ北朝鮮に対する政策の見直しがローキーになることは事前に予想された。バイデン氏にはトランプ氏のような金正恩総書記に対する個人的興味はない。バイデン氏にとって北朝鮮は中国のような危険な相手ではない。北朝鮮にはバイデン氏が重視する人権問題があるが、基本的には北朝鮮国内にとどまっており、またウイグルのようにイスラムを介した外の世界とのつながりはないので、実情を把握しにくく、追及困難だからである。
バイデン政権は北朝鮮との関係改善をあきらめたわけではなく、今後も進めようとするだろうが、その手法は常識的、官僚的であろう。そうであれば、北朝鮮に対する制裁が解除あるいは緩和される可能性はそれだけ低くなる。
一方、北朝鮮はバイデン政権の政策見直しの結果を注視してきたが、膠着状態はすぐには打開されないとなると、不満を募らせ、以前の核とミサイルによる挑発的姿勢に戻る危険性がある。これはバイデン政権にとっても看過できない問題になるので、今後の対北朝鮮政策においては、そのような状況にまで北朝鮮を追い込まないことが重要な目標となるだろうが、それだけでは北朝鮮と米国の関係も、東アジアの安全保障環境も大して変わらない。米朝交渉はかつての6者協議のようになって、会議は重ねるが進まないという結果になりかねない。
米国のこのような対北朝鮮政策で一番困るのは、韓国の文在寅大統領であろう。文氏は今でも北との関係改善に熱意を抱き続けているようだが、客観情勢は韓国が一定に役割を果たした2018年とすでに大きく違っている。金総書記は、文大統領に米朝関係改善に関して役割を与えることに極めて消極的になっている。
また東京オリンピックを、平昌オリンピックのように南北関係と米朝関係を進めるきっかけにすることは、今やだれが考えても無理である。文大統領の支持率低下の傾向に米朝関係が歯止めになることは考えられない状況になっているのである。
日本にとってバイデン政権の「中間政策」はとくに都合が悪いわけでない。バイデン氏は、日本や韓国との協働を重視する考えであり、すでに実行し始めている。また拉致問題の解決にも協力を惜しまない姿勢である。
しかし、そういうことだけで満足すべきでない。北朝鮮を含む東アジアの安全保障環境を改善する努力は常に求められており、北朝鮮が以前の挑発的な姿勢に戻ることは日本としても避けなければならない。日本は、米国が「中間政策」を実行していくのに積極的に協力すべきであり、連絡事務所の設置なども検討対象になるのではないか。
バイデン政権の新北朝鮮政策
バイデン政権が進めてきた対北朝鮮政策の見直しが完了した。これを発表したサキ米大統領報道官は、「バイデン政権の政策はトランプ政権のような『グランドバーゲン』を重視したり、オバマ政権のような『戦略的忍耐』に頼ったりすることはない」と説明したので「中間政策」と呼べるかもしれない。だが、内容については新味はない印象である。バイデン大統領は、中国については日本政府がアップアップするほど力強く対決姿勢を打ち出したが、これに比べ北朝鮮に対する政策の見直しがローキーになることは事前に予想された。バイデン氏にはトランプ氏のような金正恩総書記に対する個人的興味はない。バイデン氏にとって北朝鮮は中国のような危険な相手ではない。北朝鮮にはバイデン氏が重視する人権問題があるが、基本的には北朝鮮国内にとどまっており、またウイグルのようにイスラムを介した外の世界とのつながりはないので、実情を把握しにくく、追及困難だからである。
バイデン政権は北朝鮮との関係改善をあきらめたわけではなく、今後も進めようとするだろうが、その手法は常識的、官僚的であろう。そうであれば、北朝鮮に対する制裁が解除あるいは緩和される可能性はそれだけ低くなる。
一方、北朝鮮はバイデン政権の政策見直しの結果を注視してきたが、膠着状態はすぐには打開されないとなると、不満を募らせ、以前の核とミサイルによる挑発的姿勢に戻る危険性がある。これはバイデン政権にとっても看過できない問題になるので、今後の対北朝鮮政策においては、そのような状況にまで北朝鮮を追い込まないことが重要な目標となるだろうが、それだけでは北朝鮮と米国の関係も、東アジアの安全保障環境も大して変わらない。米朝交渉はかつての6者協議のようになって、会議は重ねるが進まないという結果になりかねない。
米国のこのような対北朝鮮政策で一番困るのは、韓国の文在寅大統領であろう。文氏は今でも北との関係改善に熱意を抱き続けているようだが、客観情勢は韓国が一定に役割を果たした2018年とすでに大きく違っている。金総書記は、文大統領に米朝関係改善に関して役割を与えることに極めて消極的になっている。
また東京オリンピックを、平昌オリンピックのように南北関係と米朝関係を進めるきっかけにすることは、今やだれが考えても無理である。文大統領の支持率低下の傾向に米朝関係が歯止めになることは考えられない状況になっているのである。
日本にとってバイデン政権の「中間政策」はとくに都合が悪いわけでない。バイデン氏は、日本や韓国との協働を重視する考えであり、すでに実行し始めている。また拉致問題の解決にも協力を惜しまない姿勢である。
しかし、そういうことだけで満足すべきでない。北朝鮮を含む東アジアの安全保障環境を改善する努力は常に求められており、北朝鮮が以前の挑発的な姿勢に戻ることは日本としても避けなければならない。日本は、米国が「中間政策」を実行していくのに積極的に協力すべきであり、連絡事務所の設置なども検討対象になるのではないか。
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