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2014.05.02

中国雑記 4月30日まで

○国家検査院(国家審計署)は国有企業に対する検査の一環として、4月17日から国家電力網公司の主要幹部に対し、数百名による監督検査を実施した。国家電力網公司は2002年12月に成立、国家の認可を経て投資・設立された機構であり、国有支配企業(国家控股公司)の試験単位である。検査院はさらに中国電力投資集団でも、今年の6月に引退予定の同集団党書記・総経理の陸啓洲の退職検査を行なった。(大公報4月30日)

注 国有企業は利権と権力が絡み腐敗の温床となることが少なくない。国家電力網公司は国家電力公司の電力輸送、変電、配電関係部門が分離独立した企業。電力関係は李鵬元首相の勢力圏であり、今回の検査が李鵬や同人が保守的な立場から重要な役割を演じた天安門事件の再評価に関係するか注目していく必要がある。

○中共政治局は今週、十年ぶりに経済状況の四半期レビューを行なった。習近平政権の経済成長重視姿勢の表れであり、今年初めてのギアチェンジ(換挡)である。ギアチェンジは同政権のキーワードになっている。
(大公報4月29日)

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2014.05.01

習近平の少数民族対策

4月30日、新疆ウイグル自治区のウルムチ南駅で爆発事件が発生し、数十名の死傷者が出た。無差別に人を攻撃するテロは世界のどこで起きようと憎むべきことであるが、この事件には少数民族問題が絡んでいる。同自治区ではウイグル族と漢族の対立が過去何回も起こっていたところ、2009年からまた対立が激化し、死傷者を出す衝突事件が続いてきた。2013年10月には、中国共産党の重要会議(第18期3中全会)の開催を間近にして天安門前広場で車両が突っ込むという一大事件が起こり、今年の3月には雲南省昆明で無差別殺傷事件が発生した。
これらの事件は中国政府にとって頭の痛い問題であり、対策を強化しようとするのは当然であるが、習近平政権の対応にはいくつかの特徴がある。
第1に、中国政府は、これらの事件を「テロ」として発表し、「少数民族問題」という側面は目立たないように努めている。実際には少数民族の間に不満が鬱積しており、時には政府に対して反抗することがあるのは常識であるが、中国政府は、そのような問題は深刻でないというふりをしようとしているのではないか。また、無差別攻撃事件を起こすテロは不幸なことに世界のいたるところで問題となっており、中国で起こっている事件はそのような世界的な現象と同じであり、中国だけが特別なのではないと強調しようとしているのではないか。
第2に、少数民族居住地域で不満が爆発する事件が起こると、政府は再発を防止するためと称して、監視とコントロールを強化し、はなはだしい場合には(これが少なくないようだが)正当な手続きを経ないで、したがってまた人権侵害を冒してまで関係者を拘束し、あるいは反抗の拠点となりそうな施設を封鎖したり、破壊したりしている。
第3に、宗教が絡むことが多い。新疆ウイグル自治区の場合はイスラム教のモスクが当局による弾圧の対象となっている。また、政府の意のままにならないキリスト教徒に圧力を加え、完成直前まで建築が進んでいる教会を取り壊すことも辞さない。中国には政府に協力的、すなわち政府の意のままになるキリスト教徒もいるが、政府に反抗しがちなキリスト教徒は少数民族と類似の立場にある。
第4に、習近平政権は、言論の自由を認めず強い統制を加えている。民主化要求などが暴発しないよう、早い段階から芽を摘んでおくためであり、一種の早期対応体制を敷いているのである。少数民族に対しても同様の発想で、つまり、早い段階から強い措置で対応する方針のようである。今回の事件においても、爆発現場の状況を伝えるインターネットは次々に消されている。
第5に、習近平政権の対応には一種の危うさを感じる。取り締まりと弾圧を強化するだけで、国民の不満を吸収・コントロールできるか。ウルムチで爆発事件が起こったのは、習近平が同地の視察を行なっていた間に発生した。習近平はかねてから新疆自治区の状況と指導者に不満であり(3月9日のブログ参照)、今回周到な準備をし、また民族問題担当の政治局常務委員俞正声と軍人のトップである范長龍中央軍事員会副主席を帯同し、前線を視察などしたのは新疆ウイグル自治区での統治を抜本的に改善しようとしたためであろう。
このような姿勢はいかにも習近平らしい対処ぶりである。
第6に、習近平はウルムチの視察中、「赤い遺伝子を官僚と兵士の血管に埋め込み、代々受け継がれていくようにしなければならない」と語っている(『多維新聞』4月29日付)。この言葉は、共産党の支配を強めなければならないことを強調しようとしているのであろうが、現在の官僚や兵士にはそれが足りないことを暗示しているようにも聞こえる。

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2014.04.30

尖閣付近での中露合同軍事演習

中国とロシアの海軍は5月末から6月初めにかけ、尖閣諸島の西北の海域で初の合同軍事演習を行なうそうである。4月29日に「ロシアの声」が報道したのを30日の『環球時報』(人民日報傘下の大衆紙)が引用している。4月30日現在、最後の協議のためにロシア海軍の代表団が上海を訪問中である。
両国の海軍は、合同演習地域で偵察を行ない、共同行動計画を明確化し、防空、対潜水艦、封鎖、航渡(中国語)、補給などの訓練を行なう。体育・文化活動などもある。
ロシアからの参加者は海軍作戦訓練局長、海軍司令部の職員、太平洋艦隊の代表などが、中国からは解放軍総参謀部の代表および東海艦隊の専門家が参加する。
双方は20艘あまりの海上艦艇、潜水艦および補助艦を派遣する。ロシア側は、ミサイル巡洋艦、ミサイル駆逐艦、補助艦、遠洋タグボート各1艘が含まれている。ロシア海軍の編隊は対馬海峡を南下して上海に来航する予定である。

中ロ両国のこのような合同軍事演習は日本にとって不愉快なものである。
中ロ両国にはそれぞれ狙いがあるのであろう。中国としては、尖閣諸島に関し従来から続けている、嫌がらせを含む示威行動の一環であるが、オバマ米大統領の訪日に際して日米が安全保障面での同盟関係を強化し、日米安保条約が尖閣諸島に適用されることを大統領自らが確認したことを強く意識し、反発しているものと思われる。
ロシアが尖閣諸島付近での中国との合同演習に参加することとしたのは、中国からの働きかけに応じたものと推測されるが、ロシア海軍と日本の海上自衛隊はこれまでに防衛交流を積み重ね、また、捜索・救難の共同訓練なども行なってきており、さらにごく最近、外務・防衛閣僚級協議(いわゆる2+2)を立ち上げることに合意するなど友好協力関係を進めていただけに、今回の中国との合同演習は残念な出来事である。
ロシアは、ただ中国からの要望に応じただけではないのであろう。今回の決定の背景として、ウクライナ問題で惹起された米欧との緊張関係があり、日本もロシア非難に加わり、ビザの発給を制限し、また、岸田外相の訪ロを取りやめたことなどをロシア側は不快視している可能性がある。そのような問題が起こったのはロシアに原因があるが、それはロシアとして認めたくないのも不思議でない。今回の中ロ合同軍事演習は表面上日ロ関係とは結びつかないが、当然強く影響しているものと思われる。

4月30日の国防部網によれば、今回の合同演習は3回目であり、第1回は2012年4月末山東省青海卑近で、第2回目はウラジオストック付近で行われた由。

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