2015 - 平和外交研究所 - Page 3
2015.12.24
中国の経済成長が鈍化傾向にあるだけに何が話し合われたか知りたいところだが、立ち入った内容は公表されていない。2016年のGDP成長率目標については、「中高速の成長を維持する」ということだけであった。どうも経済面ではあまりぱっとしない内容だったらしい
一方、この会議は今年1年間の反省会を兼ねていた。米国に本拠がある多維新聞(12月19日)などの報道によれば、主要点は次のようなことだった。
習近平主席はすべての会議参加者に対し、2015年中に犯した失敗について「全面的かつ深刻に」反省することを求めた。
また、天津の爆発事故、株式市場の大暴落、外国訪問の不手際(原文は「安排失当」 興味ある言及だが何のことか不明)、米国による台湾への武器売却、台湾の総統選挙戦などについての考えを述べ、さらに、今後の通貨政策、国有企業改革、軍の改革、人事、全国人民代表大会・政治協商会議(後者には選挙によらない非共産党の代表が含まれる)、G20などについても語った。
「中央経済工作会議」の開催前に、最高法院(我が国の最高裁判所)と最高検察庁が連名で「刑事事件に関する解釈」を発表した。この「解釈」は、国家機関に従事している者が他人の名義を使って企業の株式を取得し、また、株主であることを隠して犯罪行為をする例が増えていることを指摘している。
習近平はこの問題を重視し、2016年2月以降、裁判所と全国4000の銀行をインターネットで結び、強制執行を受ける者の銀行口座、カード、預金その他の金融資産に対し、他の金融機関が調査、凍結、差し引き(扣划)を直接できるようにした。
注 共産党の一党独裁だからこのようなことができるのだろうが、新たな混乱を招くのではないか。金融機関が常に正しいとは限らない。この制度を悪用することもありうる。強力な反腐敗対策になるか疑問だ。
習近平政権の2015年
中国では「中央経済工作会議」が毎年末に開かれる。今年は数日延期された後12月18日になってようやく開催され、21日に終了した。中国の経済成長が鈍化傾向にあるだけに何が話し合われたか知りたいところだが、立ち入った内容は公表されていない。2016年のGDP成長率目標については、「中高速の成長を維持する」ということだけであった。どうも経済面ではあまりぱっとしない内容だったらしい
一方、この会議は今年1年間の反省会を兼ねていた。米国に本拠がある多維新聞(12月19日)などの報道によれば、主要点は次のようなことだった。
習近平主席はすべての会議参加者に対し、2015年中に犯した失敗について「全面的かつ深刻に」反省することを求めた。
また、天津の爆発事故、株式市場の大暴落、外国訪問の不手際(原文は「安排失当」 興味ある言及だが何のことか不明)、米国による台湾への武器売却、台湾の総統選挙戦などについての考えを述べ、さらに、今後の通貨政策、国有企業改革、軍の改革、人事、全国人民代表大会・政治協商会議(後者には選挙によらない非共産党の代表が含まれる)、G20などについても語った。
「中央経済工作会議」の開催前に、最高法院(我が国の最高裁判所)と最高検察庁が連名で「刑事事件に関する解釈」を発表した。この「解釈」は、国家機関に従事している者が他人の名義を使って企業の株式を取得し、また、株主であることを隠して犯罪行為をする例が増えていることを指摘している。
習近平はこの問題を重視し、2016年2月以降、裁判所と全国4000の銀行をインターネットで結び、強制執行を受ける者の銀行口座、カード、預金その他の金融資産に対し、他の金融機関が調査、凍結、差し引き(扣划)を直接できるようにした。
注 共産党の一党独裁だからこのようなことができるのだろうが、新たな混乱を招くのではないか。金融機関が常に正しいとは限らない。この制度を悪用することもありうる。強力な反腐敗対策になるか疑問だ。
2015.12.23
しかし、米欧とロシアの意見が全く違っているアサド大統領の処遇について決議は何も言っておらず、ロードマップ通りに事が運ぶか、楽観的に見られないと広く指摘されている。
確かにそれも問題だが、過激派組織ISの問題がどのように扱われているか、分かりにくい。
まず、和平会議にISは招待されるか。答えはノーだろう。決議はそういう想定で書かれていると読める。常識的に考えても、テロ集団であるISが国連主催の会議に招かれることはまずない。この会議は、シリア政府と反体制派の間で先に新政府を作る、それと並行して、あるいはその後、ISの問題に取り掛かるという手順を想定しているようだ。
しかし、シリアの停戦には特殊な点がある。シリアの武力紛争は、大きく言って、シリア政府、反体制派およびISの3者の間で発生しており、それに米国、ロシアなど空爆を実行している国が関係して複雑な構図になっている。その中でISが絡む紛争が最も激しく、また厄介である。シリアで和平を実現するにはISを含めて停戦しなければならない。
しかるに、ISは和平会議に参加する主体でないので、通常の紛争のように紛争の当事者間で停戦するということにはならない。つまり、ISはシリアでの停戦の実現のために最大の障害であるが、停戦交渉の当事者とは見られていないのだ。
このような問題があるので、今般採択された決議は「停戦のmodalities and requirements」を決めなければならないと指摘している。珍しい文言だ。
決議はシリア全土の停戦を’nationwide ceasefire’と言っている。これはISによる武力闘争を含んでいると読めるが、この紛争については、「まず停戦。それから交渉」という形にならない恐れが大きい。停戦はISに関する限り、最終目標である可能性が高い。このような複雑性があるので国連決議は、「停戦のmodalities and requirements」を決めなければならないと述べた上で、先にシリアの新政府を樹立し、それと同時に、またはその後でIS問題の解決を進めるとしたものと思われる。
以下が、安保理決議2254号の関係部分である。
5. Acknowledges the close linkage between a ceasefire and a parallel political process, pursuant to the 2012 Geneva Communiqué, and that both initiatives should move ahead expeditiously, and in this regard expresses its support for a nationwide ceasefire in Syria, which the ISSG has committed to support and assist in implementing, to come into effect as soon as the representatives of the Syrian government and the opposition have begun initial steps towards a political transition under UN auspices, on the basis of the Geneva Communiqué, as set forth in the 14 November 2015 ISSG Statement, and to do so on an urgent basis;
6. Requests the Secretary-General to lead the effort, through the office of his Special Envoy and in consultation with relevant parties, to determine the modalities and requirements of a ceasefire as well as continue planning for the support of ceasefire implementation, and urges Member States, in particular members of the ISSG, to support and accelerate all efforts to achieve a ceasefire, including through pressing all relevant parties to agree and adhere to such a ceasefire;
7. Emphasizes the need for a ceasefire monitoring, verification and reporting mechanism, requests the Secretary-General to report to the Security Council on options for such a mechanism that it can support, as soon as possible and no later than one month after the adoption of this resolution, and encourages Member States, including members of the Security Council, to provide assistance, including through expertise and in-kind contributions, to support such a mechanism;
8. Reiterates its call in resolution 2249 (2015) for Member States to prevent and suppress terrorist acts committed specifically by Islamic State in Iraq and the Levant (ISIL, also known as Da’esh), Al-Nusra Front (ANF), and all other individuals, groups, undertakings, and entities associated with Al Qaeda or ISIL, and other terrorist groups, as designated by the Security Council, and as may further be agreed by the ISSG and determined by the Security Council, pursuant to the Statement of the ISSG of 14 November 2015, and to eradicate the safe haven they have established over significant parts of Syria, and notes that the aforementioned ceasefire will not apply to offensive or defensive actions against these individuals, groups, undertakings and entities, as set forth in the 14 November 2015 ISSG Statement;
シリア和平に関する安保理決議
12月18日、シリアの和平に関して成立した安保理決議第2254号は、来年早々に国連がシリア政府と反体制派を集めて和平のための会議を開催し、6カ月以内に暫定政府を樹立し、新憲法の起草を始め、18ヶ月以内に選挙を実施するというロードマップを決定した。しかし、米欧とロシアの意見が全く違っているアサド大統領の処遇について決議は何も言っておらず、ロードマップ通りに事が運ぶか、楽観的に見られないと広く指摘されている。
確かにそれも問題だが、過激派組織ISの問題がどのように扱われているか、分かりにくい。
まず、和平会議にISは招待されるか。答えはノーだろう。決議はそういう想定で書かれていると読める。常識的に考えても、テロ集団であるISが国連主催の会議に招かれることはまずない。この会議は、シリア政府と反体制派の間で先に新政府を作る、それと並行して、あるいはその後、ISの問題に取り掛かるという手順を想定しているようだ。
しかし、シリアの停戦には特殊な点がある。シリアの武力紛争は、大きく言って、シリア政府、反体制派およびISの3者の間で発生しており、それに米国、ロシアなど空爆を実行している国が関係して複雑な構図になっている。その中でISが絡む紛争が最も激しく、また厄介である。シリアで和平を実現するにはISを含めて停戦しなければならない。
しかるに、ISは和平会議に参加する主体でないので、通常の紛争のように紛争の当事者間で停戦するということにはならない。つまり、ISはシリアでの停戦の実現のために最大の障害であるが、停戦交渉の当事者とは見られていないのだ。
このような問題があるので、今般採択された決議は「停戦のmodalities and requirements」を決めなければならないと指摘している。珍しい文言だ。
決議はシリア全土の停戦を’nationwide ceasefire’と言っている。これはISによる武力闘争を含んでいると読めるが、この紛争については、「まず停戦。それから交渉」という形にならない恐れが大きい。停戦はISに関する限り、最終目標である可能性が高い。このような複雑性があるので国連決議は、「停戦のmodalities and requirements」を決めなければならないと述べた上で、先にシリアの新政府を樹立し、それと同時に、またはその後でIS問題の解決を進めるとしたものと思われる。
以下が、安保理決議2254号の関係部分である。
5. Acknowledges the close linkage between a ceasefire and a parallel political process, pursuant to the 2012 Geneva Communiqué, and that both initiatives should move ahead expeditiously, and in this regard expresses its support for a nationwide ceasefire in Syria, which the ISSG has committed to support and assist in implementing, to come into effect as soon as the representatives of the Syrian government and the opposition have begun initial steps towards a political transition under UN auspices, on the basis of the Geneva Communiqué, as set forth in the 14 November 2015 ISSG Statement, and to do so on an urgent basis;
6. Requests the Secretary-General to lead the effort, through the office of his Special Envoy and in consultation with relevant parties, to determine the modalities and requirements of a ceasefire as well as continue planning for the support of ceasefire implementation, and urges Member States, in particular members of the ISSG, to support and accelerate all efforts to achieve a ceasefire, including through pressing all relevant parties to agree and adhere to such a ceasefire;
7. Emphasizes the need for a ceasefire monitoring, verification and reporting mechanism, requests the Secretary-General to report to the Security Council on options for such a mechanism that it can support, as soon as possible and no later than one month after the adoption of this resolution, and encourages Member States, including members of the Security Council, to provide assistance, including through expertise and in-kind contributions, to support such a mechanism;
8. Reiterates its call in resolution 2249 (2015) for Member States to prevent and suppress terrorist acts committed specifically by Islamic State in Iraq and the Levant (ISIL, also known as Da’esh), Al-Nusra Front (ANF), and all other individuals, groups, undertakings, and entities associated with Al Qaeda or ISIL, and other terrorist groups, as designated by the Security Council, and as may further be agreed by the ISSG and determined by the Security Council, pursuant to the Statement of the ISSG of 14 November 2015, and to eradicate the safe haven they have established over significant parts of Syria, and notes that the aforementioned ceasefire will not apply to offensive or defensive actions against these individuals, groups, undertakings and entities, as set forth in the 14 November 2015 ISSG Statement;
2015.12.21
東洋経済オンラインにこの関係の一文、「温暖化防止へ、日本は原発をどうするべきか パリ協定実行に避けられない「原発」の議論」を寄稿した。
地球温暖化対策を決めた「パリ協定」
地球温暖化対策を決めた「パリ協定」は石油、天然ガスなど化石燃料による発電を今世紀後半にはゼロにすることなど画期的な方針を打ち出した。この実行のため、日本は現在全発電の9割以上となっている化石燃料発電をほとんどすべてなくしてしまわなければならない。そうなると原発と再生可能エネルギーに頼るしかない。再生可能エネルギーの大幅増、しかも革命的な大幅増が必要となるだろう。東洋経済オンラインにこの関係の一文、「温暖化防止へ、日本は原発をどうするべきか パリ協定実行に避けられない「原発」の議論」を寄稿した。
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