平和外交研究所

中国

2018.05.01

中国経済の現状に対する一警鐘

 在米の中国語新聞『多維新聞』4月30日は、中国経済の問題点を率直に指摘する談話を紹介している。
中国経済を負の側面だけから見るべきでないが、参考になる。

 復旦大学の経済学部長張軍教授は要旨次のように述べた。

 「中央の部(日本の「省」に相当)や委員会などの指導機関にはものを動かす力がないし、改革に対する情熱はすでに冷めている。
 習近平政権は前代未聞の激しさで反腐敗運動を展開した。人々は政府が改革に本気だと思ったが、その後、経済成長率は下降し、また、国民の満足度は下がった。これは隠れもない事実である。
 国民生活に密接な問題を見ても、家賃は高騰し、医療難、入学難はあいかわらずだ。環境、交通、地域格差なども未解決のままである。
 中央の高官はこれらを解決しようと、昼夜熱心に努めているが、一般の人たちは様子を見ている。

 現在、改革の多くの問題、例えば、環境汚染、利益分配の不合理などはいずれも1980年代、鄧小平の時代から存在してきたことである。それは認めるが、かつては、改革について強い情熱があった。鄧小平は、思想を開放し、事実に基づいて真理を求めることを提唱し、民間に対し大胆に改革を試みるよう呼びかけ、間違ったら直せばよいと説得した。民間に情熱的に改革すること、無限に創造力と想像力を高めよと呼びかけたのだ。当時、中央の改革にかける力は巨大な効果をもたらした。
 しかし、現在の中央は、一方で、艱難に負けず改革を継続することを呼びかけるが、他方で、世論を強く統制している。このような統制は改革に伴う「雑音」を聞こえなくし、民間が改革に加わる意欲をなくさせている。
 1978年以来40年間の改革開放の結果、中国社会にはすでに多くの「既得権益集団」が形成されている。政府は最大の既得権益者である。習近平総書記の言葉を使うなら、「おいしい肉はすべて食べつくした。残ったところは食べにくい骨ばかり」である。

 上海財経大学の金融研究センターの副主任である奚君羊および陳波の両氏は、次のように述べた。
 「金融監督機構とその傘下の利益集団は自由貿易特区内での金融改革にとって最大の障害となっている。かつて李克強首相は上海自由貿易特区構想を進める際に、机をたたいて怒った。「金融改革を妨げる鬼が内部におる」と言ったとおりである。」

2018.04.10

バチカン・中国関係

 さる2月末、バチカンと中国が司教の任命に関して原則合意に達し、細部の詰めに入っている、最終合意が成立すると中国とバチカンが国交を結ぶのは時間の問題になる、と西側のメディアで報道された。
 しかし、この合意は短時日のうちに成立しそうにないようだ。交渉事だから、双方が、あるいは一方が妥協して合意に至る可能性が完全になくなったわけではないだろうが、一時の楽観的な雰囲気はなくなっている。

 あらためて振り返ってみると、バチカンと中国との間の最大問題は司教の任命権である。バチカンは司教の任命はあくまで教皇が行い、外国政府が介入することを認めないという立場である一方、中国は政府のコントロール下にない宗教活動は認められない、司教の任命は中国政府が行うという立場であり、両者の主張は長らく並行状態にあった。
 教皇フランシスコは2013年に就任して以来中国との関係改善に意欲を示し、バチカンと中国政府は定期的に非公式交渉を行ってきた。その背景には、中国内に約1000万人のカトリック信者いる(推定)という事実があった。教皇の積極姿勢を支持する人たちは、これだけの数のカトリック信者にいつまでも背を向け続けるべきでない、中国政府と何の合意もないよりは一定の関係を作ったほうが彼らを保護することになるという考えだったと言う。

 両者の間で成立するとうわさされた妥協はどのような内容か。バチカンは、「中国政府の同意を条件として司教を任命する」ことにする一方、「中国政府が任命した司教をバチカンは認める」ことになったとも言われていたが、推測の域を出るものではなかった。なお、後者は、中国政府寄りの「愛国教会」がバチカンの許可を得ないで任命している司教のことである。

 バチカン側では、妥協に賛成する人たちもいたが、あくまで反対の人もおり、意見統一はできていなかったらしい。反対派の主張は、中国政府に限らず、昔から各国の政府が司教の任命権を教皇から奪おうとするのにバチカンは戦い、多くの人が犠牲になってきた、そのカトリックの伝統と原則に反しているということである。

 一方、中国は最近、宗教面での統制を以前にもまして強化しており、2017年9月には、旧「宗教事務条例」を修正して新条例を制定した。これは、中国の宗教政策の基本である「国家による正常な宗教活動の保護」および「宗教团体は外国勢力の支配を受けてはならない」は旧条例のままであるが、実際の監督を強化したものである。妥協が成立するとうわさが出たのは、今年の2月1日に新条例が施行されたからだとも言われていた。
 中国政府はその後態度を硬化させたらしい。4月3日に発表された「中国の宗教政策に関する白書」の中では「宗教の中国化を堅持する」と異例の、反宗教的ともとれる言及をした。
また、「外国勢力が宗教を利用して中国に浸透するのを防御する」「カトリックとプロテスタントに基づき、植民地主義、帝国主義によって中国人民が長きにわたって統制・利用されてきた」「中国の宗教に関与し、はなはだしきは中国の政権と社会主義制度の転覆をはかるのに中国政府は決然と反対し法に基づき処理する」など、かねてからの主張ではあるが、共産主義歴史観をあらためて記載した。
 
 中国がなんらかの妥協をするとすれば、台湾に対する圧力を強化するためだ。バチカンが中国との関係を樹立するには台湾との関係を切らざるを得なくなるからだ。
 しかし、過去数週間に起こったことを見ると、中国としては、台湾問題は別に処理する、宗教の扱いに関連させないという考えを固めたのではないかと思われる。

 このような習近平政権の強硬姿勢は、民主化を求める人たちに対する弾圧や、言論の自由の統制などとともに国内を引き締めるためであるとみられる。

2018.03.16

中国の武装警察の改革

 中国の武装警察は国内の治安維持を任務としており、国防を担う人民解放軍と兄弟のような関係にあるが、治安維持以外の任務も持っており、その内情はかなり複雑である。在米の華字紙『多維新聞』3月14日付は、武装警察の経緯と今次全人代での改革を紹介している。

 1983年、人民解放軍の国内担当部隊と徴兵制の武装(注 新兵の訓練のことか不明)、辺境の防衛、消防警察などを統合して武装警察隊が編成された。当時、その主要な指導者は国務院によって任命されていた。

 2年後、人民解放軍の「基建工程兵」のうちの水利電力、交通、黄金の部隊が武装警察に編入された(注 中国はもともと金の算出が少なかったので人民解放軍に金の採掘を任務とする部隊を作っていた)。

 さらに、1988年には東北地方の武装森林警察、1999年には「14乙種陸軍歩兵師団」が武装警察に編入された。

 これらの部隊は、武装警察への編入後も国務院の指示を受けていたが、1999年から中央軍事委員会の指示も受けるようになった。

 2015年末の時点で、武装警察は国内部隊、4大警種部隊(黄金、水利電力、森林、交通)、公安部隊(公安辺防、公安消防、公安警衛)などを含め、総員数は数十万人になっていた。

 2015年12月、中共中央は人民解放軍と武装警察について、2017年末までに大規模な人事異動、司令部・政治工作部・総後勤部・装備部・規律検査委員会の大改革を行うという野心的な計画を発表した。この改革が必要とされたのは、武装警察のなかでも特に公安は国務院の公安部と軍事委員会の両方から指示を受けていること、地方政府も武装警察に対して一定程度指揮調整権を持っていることなど複雑な状況になっていたからである。武装警察は政治闘争においても悪用されることが生じていた。

 そこで、2018年1月1日から、武装警察は中共中央と中央軍事委員会の統一指導下に置き、国務院の指図は受けないこととなった。習近平主席は新しい武装警察の任務は国家の政治安全と社会安定を守ること、海上の安全を守ること、および防衛の3つであることを明確化した。
 今次全人代で決定される国家機構の改革では、武装森林部隊と公安消防部隊は国務院の中へ戻されることとなった。
 ただし、公安警衛部隊と公安辺防部隊の指揮命令系統はまだ調整中であり、明確になっていない。公安警衛部隊の任務は、外事活動など警衛であり、公安系統(注 国務院公安部のことか)に戻るとも言われている。
 
 

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