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2023.11.11

辺野古の基地建設まで暫定措置が必要

2019年2月25日、本研究所は普天間飛行場の辺野古移設問題について新飛行場建設のための埋め立てを強行することは考え直すべきだとの論旨を発表した。その理由として挙げた5点は基本的には現在も変わらないが、その後に重要な情勢変化もあったので、あらためて考えをまとめてみた。

橋本龍太郎首相の下で米軍普天間基地を移設する検討が始まったのが1996年。翌97年に名護市辺野古付近に移設する方針が固まったが、沖縄県民の多くは辺野古新基地の建設に一貫して反対している。沖縄県民の是非を問う投票が2019年2月24日に行われ、その結果、「反対」が72・15%と圧倒的多数が反対していることが示された。それ以来数年が経過するが、沖縄県民の反対は変わらない。

普天間基地は在日米軍のなかで重要な役割を担っている。日本としては新基地の建設を急がなければならない。県民が強く反対している沖縄県と国は対立しつつも、法的手続きに従い建設は始められた。

その後、埋め立て予定海域に軟弱地盤があることが判明し、地盤を強化する改良工事が必要になった。工事の方法は元の計画から変更しなければならないが、それには沖縄県知事の許可が必要である。防衛省は2020年4月、変更を県に申請したが、沖縄県は工事の変更を承認しないので国は県に対して裁判を起こした。2023年9月4日、最高裁判所は「県に許可を求める国の指示は適法だ」と判断し、沖縄県の敗訴が確定した。  

 この判決を受けて軟弱地盤に対応する工事が再開されることになるが、国も県もあらためて検討すべき問題が出てきている。

元来、普天間基地は早ければ2022年度に返還とされており、検討が始まってからすでに20数年が経過している。軟弱地盤に対応するため、防衛局によればさらに12年待たなければならないのだが、あまりに長すぎる。当初の計画と比べれば絶望的だという声も上がっているくらいである。検討が始まったときに生まれた子は今や30歳を優に超えている。住所も変わっているかもしれない。ともかく、住民の安全を確保するため暫定措置が必要である。

米軍がどのように考えるかは重要な問題であるが、暫定措置に反対するとは思えない。米軍にとって周辺の住民の安全が確保されることは願ってもないことだろう。

在沖縄米軍幹部はさる11月7日、辺野古に建設する代替施設の課題を挙げ、「純粋に軍事的な観点からはここ(普天間)にいたほうがいい」と述べた。

普天間の滑走路は約2700メートルだが、辺野古で建設が進む代替施設の2本の滑走路はいずれも約1800メートル。幹部は「より短い滑走路は、この地域で運用する米軍の能力に大きな影響を与える」と述べ、「おそらく嘉手納基地で補完するのではないか」とも語った。要するに、米軍としては辺野古への移転が実現しなくても任務の遂行に支障はないどころか、普天間の方がベターだという考えである。

また、日米両政府の合意では、長い滑走路が必要な場合、民間施設の使用が普天間返還の条件の一つとされたが、民間空港については何も決まっていないという。要するに、辺野古へ移転しても長い滑走路が必要な場合、日本側は民間空港の使用を米軍に認めなければならないが、そちらについては何も決まってないのである。

さらに、普天間は西海岸に近い高台にあるため「レーダーやセンサーを使うのに好都合である」という。一方、東海岸に面する辺野古は「大きな山に覆い隠されて、西や北の方向が見えにくい」と指摘されている。

この幹部はさらに、軟弱地盤の、米軍の運用への影響を問われ、「もし(問題を)軽減できなければ、影響があるかもしれない」と話したという。辺野古には致命的な欠陥が残るかもしれないとみていることを示唆する発言ではないか。

一方、この幹部は、日米間のDPRI(防衛政策見直し協議)の専門家の見解として、辺野古の代替施設の完成時期は2037年以降になるとの見通しを示した。滑走路だけでなく、格納庫などの建物の建設も考慮した見方だという。

このような状況を勘案すると、辺野古の新基地が完成するまで暫定措置を実施することは不可欠である。そのようなことに政府・防衛省・外務省などは同意しがたいかもしれない。それはよくわかる。辺野古移転は日米両国間の合意であり、簡単に変更できるものでない。

また、かりに暫定措置を講じるとすれば追加費用の問題も出てくる。しかし、移設工事費用は、軟弱地盤への対応のため3500億円程度から9300億円に膨れ上がることになるが、それは国として呑み込むのであろう。そのことを思えば、住民の安全確保のための暫定措置に伴う追加費用は安いものではないか。

普天間住民の移転も暫定措置の一つである。普天間飛行場の周辺には約1万2000世帯が居住している(2019年時点)。その移転を無理じいすることはできないが、移転を希望する住民に国として支援することは十分考えられる。ただし、住民移転案は以前にも出たことがあるが、あまり広がっていない。辺野古案と住民移転案の費用比較、沖縄への政府からの補助への影響、運動を推進している政党の考えなどさまざまな事情が絡んでいるのだろうが、細かい損得勘定はともかくとして、飛行場移設より住民移転のほうが負担は少ない。政治的立場の違いを超えて合意を形成できる案だと考える。
 
以上のような状況を考慮すれば、辺野古への移転を考え直すのが望ましいが、それができない場合でも暫定措置は不可欠だと考える。

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