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2019.12.16
五島を訪れてそれまでのイメージを大幅に修正することになった。第1に、五島はガイドブック的には教会群の島であるが、実際にはそれは五島の一面に過ぎない。個人の好みや興味にもよることだが、私のような人間には、教会群よりも遣唐使の遺跡の方がもっと印象的であった。
時系列的に五島の特徴をあげれば、遣唐使時代、中国や朝鮮との交易時代(中世)、教会群時代、それに現代となる。これには異論があるかもしれないが、大づかみな方が分かりやすいだろう。
この四つの時代が五島で折り重なっているように思った。つまり、五島では、地域ごとに違った時代(の跡)があるのではなく、同じ場所で四つの時代があったことが感じられたのである。
たとえば、三井楽という地区(下五島)は遣唐使が出発したところであり、空海の「辞本涯(日本のさいはてを去るの意味)」の言葉の記念碑がある。ここは「なるほどこのようなところから決死の覚悟で船出していったのか」と当時の険しい状況を想像させてくれる印象深い場所であるが、そこから車で5分もかからない場所に「三井楽教会」がある。
このように遣唐使の遺跡と教会が近接しているのは三井楽だけでなく、他のところでも同様である。遣唐使と教会は何の関係もないのに、同じ場所にあるのだ。なぜそうなったのかと言えば、遣唐使関係の遺跡は海岸にあり、五島列島の中でも西端に多い。一方、教会は隠れキリシタンが受難したところ、たとえば、牢屋跡などに作られることが多く、それらは人里離れた場所なので、結局同じ場所になるということではないかと思った。
五島の現代の特色としては、養殖がある。以前はもっぱらハマチ、今はマグロと牡蠣であるが、五島の入り組んだ地形で囲まれた海は養殖に適している。入り江の入り口に網を張って天然の養殖場にしているところもある。そして、これら養殖場は遣唐使関係の遺跡とも、教会とも近いのである。
さらに、風力発電も現代の五島の特色であり、どこへ行っても風車を見かけるが、これもまた海岸沿いに設置されているので、遣唐使関係の遺跡や教会の近くで見ることになる。
第2に、五島列島の地理的環境であり、時代によってはその地理的特性のために日本の中心と関係が強かったことに気付いた。特に遣唐使の時代である。遣唐使についてはこれまで日本の歴史として、また中国との交流として、また仏教の関係で見ていたが、今回の旅で、遣唐使船が中国へ渡航するのに必要な最終準備が五島で行われていたことを実感できた。五島は、遣唐使派遣という国家的事業のなかで不可欠の役割を担っていたのである。
一方、キリスト教信仰の関係では、五島は京都や大阪から遠く離れていたため、キリシタンが迫害を逃れることができたのだろう。当時の五島は、遣唐使とは逆に、日本の中央と関係がないことが役立ったのであろう。
第3に、現在、五島には、遣唐使やキリスト教信仰ほど全国的な問題でないかもしれないが、注目してよいことがいくつかある。
五島は沖縄と同様「東シナ海」に面している。かつては日本の安全保障上重要な場所であり、日露戦争中、五島列島の西南端の大瀬崎に置かれている旧海軍の望楼が、海上でロシアのバルチック艦隊を発見した信濃丸などからの電信を最初に受信したこともあった。
現在、五島には航空自衛隊のレーダー基地が置かれており、ロシアや中国の軍用機が日本の情報区(FIR)に侵入してくれば、この基地から情報を発信し、近辺の航空基地から自衛隊機がスクランブル発進する。しかし、五島の住民が巻き込まれることはないようである。
五島はこのほか、釣り人が集まる場所である。先日他界した梅宮辰夫氏もよく来ていたという。また、五島うどんは全国的に有名だ。椿油がよく取れるのも特色の一つである。かつて捕鯨基地として名をはせた上五島の有川には鯨をウォッチするための小山があるが、椿が山いっぱいに植わっていた。
五島には、さらに地理的環境を利用して上海や済州島を結ぶ観光ルートを建設しようという考えもあるそうだ。実現までには時間がかかるだろうが、夢のある構想である。
五島列島は遠いと感じていたが
12月4~6日、初めて五島列島を訪問した。今に至るまで五島へ行ったことがなかったのは物理的にも心理的にも遠かったからである。直線距離で測ると同列島から東京までの距離は上海までより遠く、約1.5倍である。五島を訪れてそれまでのイメージを大幅に修正することになった。第1に、五島はガイドブック的には教会群の島であるが、実際にはそれは五島の一面に過ぎない。個人の好みや興味にもよることだが、私のような人間には、教会群よりも遣唐使の遺跡の方がもっと印象的であった。
時系列的に五島の特徴をあげれば、遣唐使時代、中国や朝鮮との交易時代(中世)、教会群時代、それに現代となる。これには異論があるかもしれないが、大づかみな方が分かりやすいだろう。
この四つの時代が五島で折り重なっているように思った。つまり、五島では、地域ごとに違った時代(の跡)があるのではなく、同じ場所で四つの時代があったことが感じられたのである。
たとえば、三井楽という地区(下五島)は遣唐使が出発したところであり、空海の「辞本涯(日本のさいはてを去るの意味)」の言葉の記念碑がある。ここは「なるほどこのようなところから決死の覚悟で船出していったのか」と当時の険しい状況を想像させてくれる印象深い場所であるが、そこから車で5分もかからない場所に「三井楽教会」がある。
このように遣唐使の遺跡と教会が近接しているのは三井楽だけでなく、他のところでも同様である。遣唐使と教会は何の関係もないのに、同じ場所にあるのだ。なぜそうなったのかと言えば、遣唐使関係の遺跡は海岸にあり、五島列島の中でも西端に多い。一方、教会は隠れキリシタンが受難したところ、たとえば、牢屋跡などに作られることが多く、それらは人里離れた場所なので、結局同じ場所になるということではないかと思った。
五島の現代の特色としては、養殖がある。以前はもっぱらハマチ、今はマグロと牡蠣であるが、五島の入り組んだ地形で囲まれた海は養殖に適している。入り江の入り口に網を張って天然の養殖場にしているところもある。そして、これら養殖場は遣唐使関係の遺跡とも、教会とも近いのである。
さらに、風力発電も現代の五島の特色であり、どこへ行っても風車を見かけるが、これもまた海岸沿いに設置されているので、遣唐使関係の遺跡や教会の近くで見ることになる。
第2に、五島列島の地理的環境であり、時代によってはその地理的特性のために日本の中心と関係が強かったことに気付いた。特に遣唐使の時代である。遣唐使についてはこれまで日本の歴史として、また中国との交流として、また仏教の関係で見ていたが、今回の旅で、遣唐使船が中国へ渡航するのに必要な最終準備が五島で行われていたことを実感できた。五島は、遣唐使派遣という国家的事業のなかで不可欠の役割を担っていたのである。
一方、キリスト教信仰の関係では、五島は京都や大阪から遠く離れていたため、キリシタンが迫害を逃れることができたのだろう。当時の五島は、遣唐使とは逆に、日本の中央と関係がないことが役立ったのであろう。
第3に、現在、五島には、遣唐使やキリスト教信仰ほど全国的な問題でないかもしれないが、注目してよいことがいくつかある。
五島は沖縄と同様「東シナ海」に面している。かつては日本の安全保障上重要な場所であり、日露戦争中、五島列島の西南端の大瀬崎に置かれている旧海軍の望楼が、海上でロシアのバルチック艦隊を発見した信濃丸などからの電信を最初に受信したこともあった。
現在、五島には航空自衛隊のレーダー基地が置かれており、ロシアや中国の軍用機が日本の情報区(FIR)に侵入してくれば、この基地から情報を発信し、近辺の航空基地から自衛隊機がスクランブル発進する。しかし、五島の住民が巻き込まれることはないようである。
五島はこのほか、釣り人が集まる場所である。先日他界した梅宮辰夫氏もよく来ていたという。また、五島うどんは全国的に有名だ。椿油がよく取れるのも特色の一つである。かつて捕鯨基地として名をはせた上五島の有川には鯨をウォッチするための小山があるが、椿が山いっぱいに植わっていた。
五島には、さらに地理的環境を利用して上海や済州島を結ぶ観光ルートを建設しようという考えもあるそうだ。実現までには時間がかかるだろうが、夢のある構想である。
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