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2023.03.30

ミャンマーにおける民主政党の登録抹消

 ミャンマーで3月28日、アウンサンスーチー氏が率いる政党「国民民主連盟」(NLD)が政党資格を失った。形式的には、国軍が今年1月26日、党員数などを定めた政党登録法を発表し、申請しない政党は資格を抹消するとしていたのに対し、NLDなど約40の政党は政党登録を申請しなかったので政党資格を失ったのである。
 
 NLDは、大勝した2020年総選挙の結果が正当だとしている。国軍側が定めた政党登録法は党員数や党事務所の設置数などの政党要件を定めており、多くの党員が国内外に逃れている現状ではNLDがこれを満たすのは難しいので登録しなかったのである。実質的には国軍側によるNLDの政党資格はく奪であった。

 これに先立って、22年12月、国軍統制下の裁判所はスーチー氏に汚職などで計33年の刑期の有罪判決を下していた。国軍はやり直しの選挙を実施するとしているが、その前に国民からの絶大な支持を受けているスーチー氏とNLDを排除したのである。

 国軍が2021年2月1日、クーデタにより非常事態を宣言して軍政を始めると、欧米各国は厳しく国軍を非難し、国軍幹部らの資産を凍結する制裁を課したが、日本政府はそれとは一線を画し、対話路線を継続してきた。

 経済協力については、日本は西側で最大の供与国である。クーデタ後は途上国支援(ODA)の新規案件を見送ることとしたが、国際機関や非政府組織(NGO)を通した人道支援は続けてきた。

 日本政府は「西側諸国で唯一、国軍とのパイプを持つのが強み」、「ミャンマーにも米欧にも、強力なカードとしてアピールできる」、「外交上のレバレッジ(テコ)になる」などと言ってきたが、日本の方針はミャンマーを民主政治に戻す目標とは矛盾が大きくなりつつある。

 ミャンマーは少数民族が多く、しかもイスラム系のロヒンギャは国民と認められず難民として扱われてきたのが現実であり、そのような状況の中で国軍に頼らざるを得ないのもやむを得ない面がある。しかし、クーデタ以来多数の国民が犠牲になっている。国軍は選挙をやり直し、憲法を新たに制定するとの方針を立てているが、軍の権益が損なわれない内容にしようとしている。これまでの民主化努力に悖ることになっても国軍の利益を守ろうとしているのであり、このようなことは断じて認められない。しかも総選挙を公正に実施し、民主的な憲法を制定できるか見通しは立たなくなっている。

 これまでミャンマーの国軍を支持しているのは中国であり、今後もその点は変わらないだろうが、国軍は急速にロシアとの関係を深めている。中国はミャンマーと国境を接しているだけに影響力は強いが、利害関係は複雑であり、中国の利益にならないことも認めざるを得ない。

 一方、ロシアは中国と並んで国軍への二大武器供給国であり、しかも中国のような複雑な事情はない。特にクーデタ後はミャンマーはロシアにとって数少ない顧客になっている。ミンアウンフライン国軍最高司令官に対するロシアの厚遇ぶりは異常であり、国軍は中国もさることながら、いざとなればロシアに頼ろうとしているのではないか。

 長引く国軍の支配と民主化勢力の弾圧は日本にとって新しい、かつ厄介な問題になりつつある。ミャンマーが今後も日本にとって重要な国であることに疑いはない。しかし、だからと言って、ミャンマーの国民を多数殺傷し、ウクライナを侵略しているロシアと結託する国軍に対してこれまでのような対話路線をとり続けるべきでない。日本は旧来からのミャンマー観を改め、真に必要な外交を展開することが必要になっている。

 来る5月19~21日にはG7広島サミットが開催される。日本政府はミャンマーの軍政を一刻も早く終わらせるため、各国とともに最大限の努力を払わなければならない。

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