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2021.12.27

核問題に関する岸田政権の外交姿勢

 ニューヨークで来年1月4日から開かれる核不拡散条約(NPT)再検討会議に岸田文雄首相が出席して演説する方向で検討されていたが、アメリカで新型コロナのオミクロン株が急速に広がっていることなどから、会議への出席は見送られることとなった。

 被爆地・広島県出身の岸田首相は核軍縮に熱意を抱いている。さる12月9日には、核軍縮を話し合うオンラインでの国際会議において、「NPT再検討会議で『核兵器のない世界』に向けた実質的な前進となる合意文書の採択を目指して、全力で取り組む」と訴えた。

 ニューヨークへ行った際には首都ワシントンにも足を延ばしてバイデン大統領と会談を行う考えであったが、それもできなくなり、あらためて1月17日召集予定の通常国会までに訪米すべく米側と調整中だという。しかしバイデン大統領は内外の難問に追われ多忙であり、岸田氏の訪米が実現するか、状況は相当厳しいと言われている。4年8カ月の外相経験を誇る岸田氏は12月9日の衆院本会議の代表質問で、日米首脳会談を岸田外交のスタートにしたい考えを示したが、まだ動き出せないわけである。

 岸田氏としては訪米の日程を一刻も早く固めたいところであろうが、かりに訪米がさらに先送りになっても焦る必要はない。1年たっても決まらなければ深刻に受け止めなければならないが、そんなことにはならない。ワシントンの桜をバイデン大統領と連れ立って鑑賞するくらいのタイミングとなってもよいのではないか。

 日米の首脳が会談すれば中国、ロシアとの関係など両国にとっての難問について話し合うことになるのは当然だ。台湾を含む太平洋の安全を維持することは日米両国にとって共通の重要課題であるが、同時に、岸田首相としては核問題について明確な考えを示してもらいたい。

 我が国は前政権時代、核の先制不使用宣言などについて米国以上にかたくなな姿勢を取った結果、「日本は核軍縮に熱心でない」とささやかれた。日本がこのようにみられたことは国際的に大きなマイナスであった。

 核軍縮について日本としてどのような姿勢で臨むかは岸田政権のカラーを決めることになる。当面の課題として2022年3月にウィーンで開かれる核兵器禁止条約の第1回締約国会議がある。

 ドイツはこれにオブザーバー参加する方針を明らかにしており、ショルツ新政権の連立合意書にはその方針が盛り込まれている。

 日本としては、核の抑止力を損なうことなくオブザーバー参加することが可能である。日本としても米国の核政策を尊重するのは当然だが、米国以上に核を振り回すべきでないし、核軍縮を求める諸国を敵視したり、非難するべきでない。岸田首相とバイデン大統領が話し合いを深め、共同で核兵器禁止条約についての考えを公表できれば両国にとって利益となるのではないか。

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