1月, 2018 - 平和外交研究所 - Page 2
2018.01.18
まず、今回の会議はなぜカナダで開かれたのか。カナダはこれまで、北朝鮮の核・ミサイル問題では前面に立っておらず、現在中断されたままになっている6カ国協議にも入っていなかった。そのような状態は、どの国にとっても、おそらくカナダにとっても、ある時点までは自然であった。
しかし、北朝鮮の核搭載ミサイルの性能が向上し、米国に向かっているミサイルがカナダに落ちるかもしれないという恐怖心が生まれてくると、見守るだけでは政府として責任が果たせなくなったのだろう。
カナダは米国と北米航空宇宙防衛司令部(North American Aerospace Defense Command 略してNORAD)を構成している。冷戦時代、カナダの上空を超えて飛んでくるソ連のミサイルをいち早くキャッチするために作られた防衛メカニズムであり、早期警戒システムが機能しないと米国はもちろん、カナダも壊滅の危機にさらされる。
ソ連がロシアになってもNORADは維持されており、中国のミサイルにも対応するようになっているのだが、さらに北朝鮮も対象になってきたのである。数年前に北朝鮮が「人工衛星」と称するロケットを打ち上げたときはそのモニターをしていた。北朝鮮の核・ミサイルは米国だけでなくカナダにとってもそれほど脅威となってきたのである。
しかし、カナダの外交は、強面の米国と違ってソフトムードであり、リベラルだ。政権によっても外交姿勢は多少違うが、どの政権でもカナダが軍事力をちらつかせて目的を達成しようとすることはあり得ない。究極の安全保障については米国と運命共同体であるのはやむを得ないが、カナダとしての独自性はしっかりと主張する必要があるのだ。国連の平和維持活動をカナダの外相が提唱したのはそのような外交姿勢を象徴していた。米国は世界の安全保障に直接かかわっていくが、カナダは国連の機能強化を重視するのである。
カナダは、北朝鮮の非核化問題に関する米国の対応に強い懸念を抱いている。もし米国が北朝鮮に対する軍事行動を開始するならば、カナダとしても米朝間の戦争に巻き込まれないでいることは困難だ。しかし、カナダとしてはそんなことは何としてでも避けたい。そんな気持ちが募ってフリーランド外相はティラーソン国務長官と語り合って今回の会議をホストし、平和的解決を重視する国際世論を盛り上げようとしたのだろう。
しかし、フリーランド外相とティラーソン米国務長官が当初の目的を達成できたか疑わしい。
まず、朝鮮戦争で国連軍として戦った国を会議の参加国としたことが問題であった。フリーランドとティラーソン両氏としては、かつて北朝鮮と戦った諸国が今は平和的な解決を重視している姿勢を見せるのは「対話」重視に効果的だと思ったのだろうが、外交的センスにかける判断だった。
問題の一は、中国やロシアに、今次会議は冷戦時代に後戻りする手法だと攻撃させる口実を与えてしまったことである。
両国に対する今次会議への招待は円滑に行われなかった。会議開催の直前になってフリーランド外相は、両国が参加すると信じていると述べたが、両国は「招待されなかった」と明言していた。このような発言のずれが生じたのは、最初の時点では、両国への招待がフリーランド氏とティラーソン氏の頭になく、後で招待することにしたからではないか。大国扱いをしてもらいたい中ロ両国がそのような扱いを激しく嫌うことがすぐにわからないようでは困る。
両国とも北朝鮮との「対話」を重視している。いわば、「対話」派の大物である。「対話」の国際的雰囲気を高めるのが目的ならば、最も重視してしかるべき国々であるのに怒らせてしまったのだ。
米国内からも、フリーランド・ティラーソン両氏のイニシャチブに待ったがかかった。マティス国防長官の飛び入りであり、圧力の重要性をリマインドした。ティラーソン氏は会議で、「北朝鮮が我々の決意や結束にくさびを打ち込むことは許さない」などと発言しているが、どうもポイントがはっきりしない発言である。今次会議をめぐりティラーソン氏は手腕を問われることになった。
日本は中ロより重視され、早い段階から参加を求められた。しかし、日本政府としては、「対話」派の国々を結集することなどしたくない。むしろそれを警戒していたとも言われている。しかも、朝鮮戦争で戦った国々のことなど、日本は米国以外興味がない。
それでも会議に出席はしたが、河野外相は会議の内外で、「圧力」に集中することが必要だと説いて回ったと思う。
その努力もあって、今次会議の報道では、特に日本の報道だが、会議は「圧力」強化、あるいは重視が結論となったという趣旨が強く出た。また、河野外相は、「(会合では)対話ムード、融和ムードは一切なかった」と言い切った。
「対話」重視で盛り上がろうとした今次会議は、当初の目的に照らすと、成功と言えない結果に終わったのは明らかだ。会合後にティラーソン氏と並んで会見したフリーランド外相は「外交的解決が可能であり、不可欠だと信じている。それが今日の会合の結果だ」と頑張ったが、半分はやせ我慢でなかったか。
中国は、会議終了後、今回の会議の成果は「国際社会を分断させてしまったことだ」と皮肉たっぷりにコメントしている(新華社1月17日)。
しかし、今次会議の結果をもって、「対話」は今後重視されないとは言えない。
北朝鮮の核・ミサイル問題を解決するのに「対話」しないでよい、すべきでないと断言できるのは何カ国あるか。カナダ政府の今次会議の公報は、「我々は交渉と外交による解決が本質的で、また、可能な方法であると信じている」と述べている。これはフリーランド氏個人の考えでなく、カナダ政府の立場である。
各国とも、日本が「北朝鮮と今、対話すべきでない」と言うと正面切って反論しないだろうが、納得しているのではない。下手をすると、日本だけが「反対話」派の先頭に立つ恐れがある。
米国も「反対話」派だと日本政府は強調しているように聞こえる。が、トランプ大統領の本心はわからない。トランプ氏は、ティラーソン氏らが「対話」を重視する発言をすることは嫌うが、自分と金正恩委員長との対話の可能性については昨年の春からかぞえて、5回、平気で言及している。10日、文在寅大統領と電話会談した際には、「適切な時期と環境の下で北朝鮮と対話することにはオープンだ」と述べていた。
米国は複雑だ。トランプ氏は相手が違うと別のことも発言する。自分の立場を重視する政治的発言もする。米政権内にはさまざまな考えがあるが、基本は「圧力と対話」であり、「圧力」一本やりの日本とは異なっている。
北朝鮮問題に関するバンクーバー閣僚級会議
1月16日、カナダのバンクーバーで開かれた北朝鮮の核・ミサイルに関する閣僚会合は不思議な会議であった。まず、今回の会議はなぜカナダで開かれたのか。カナダはこれまで、北朝鮮の核・ミサイル問題では前面に立っておらず、現在中断されたままになっている6カ国協議にも入っていなかった。そのような状態は、どの国にとっても、おそらくカナダにとっても、ある時点までは自然であった。
しかし、北朝鮮の核搭載ミサイルの性能が向上し、米国に向かっているミサイルがカナダに落ちるかもしれないという恐怖心が生まれてくると、見守るだけでは政府として責任が果たせなくなったのだろう。
カナダは米国と北米航空宇宙防衛司令部(North American Aerospace Defense Command 略してNORAD)を構成している。冷戦時代、カナダの上空を超えて飛んでくるソ連のミサイルをいち早くキャッチするために作られた防衛メカニズムであり、早期警戒システムが機能しないと米国はもちろん、カナダも壊滅の危機にさらされる。
ソ連がロシアになってもNORADは維持されており、中国のミサイルにも対応するようになっているのだが、さらに北朝鮮も対象になってきたのである。数年前に北朝鮮が「人工衛星」と称するロケットを打ち上げたときはそのモニターをしていた。北朝鮮の核・ミサイルは米国だけでなくカナダにとってもそれほど脅威となってきたのである。
しかし、カナダの外交は、強面の米国と違ってソフトムードであり、リベラルだ。政権によっても外交姿勢は多少違うが、どの政権でもカナダが軍事力をちらつかせて目的を達成しようとすることはあり得ない。究極の安全保障については米国と運命共同体であるのはやむを得ないが、カナダとしての独自性はしっかりと主張する必要があるのだ。国連の平和維持活動をカナダの外相が提唱したのはそのような外交姿勢を象徴していた。米国は世界の安全保障に直接かかわっていくが、カナダは国連の機能強化を重視するのである。
カナダは、北朝鮮の非核化問題に関する米国の対応に強い懸念を抱いている。もし米国が北朝鮮に対する軍事行動を開始するならば、カナダとしても米朝間の戦争に巻き込まれないでいることは困難だ。しかし、カナダとしてはそんなことは何としてでも避けたい。そんな気持ちが募ってフリーランド外相はティラーソン国務長官と語り合って今回の会議をホストし、平和的解決を重視する国際世論を盛り上げようとしたのだろう。
しかし、フリーランド外相とティラーソン米国務長官が当初の目的を達成できたか疑わしい。
まず、朝鮮戦争で国連軍として戦った国を会議の参加国としたことが問題であった。フリーランドとティラーソン両氏としては、かつて北朝鮮と戦った諸国が今は平和的な解決を重視している姿勢を見せるのは「対話」重視に効果的だと思ったのだろうが、外交的センスにかける判断だった。
問題の一は、中国やロシアに、今次会議は冷戦時代に後戻りする手法だと攻撃させる口実を与えてしまったことである。
両国に対する今次会議への招待は円滑に行われなかった。会議開催の直前になってフリーランド外相は、両国が参加すると信じていると述べたが、両国は「招待されなかった」と明言していた。このような発言のずれが生じたのは、最初の時点では、両国への招待がフリーランド氏とティラーソン氏の頭になく、後で招待することにしたからではないか。大国扱いをしてもらいたい中ロ両国がそのような扱いを激しく嫌うことがすぐにわからないようでは困る。
両国とも北朝鮮との「対話」を重視している。いわば、「対話」派の大物である。「対話」の国際的雰囲気を高めるのが目的ならば、最も重視してしかるべき国々であるのに怒らせてしまったのだ。
米国内からも、フリーランド・ティラーソン両氏のイニシャチブに待ったがかかった。マティス国防長官の飛び入りであり、圧力の重要性をリマインドした。ティラーソン氏は会議で、「北朝鮮が我々の決意や結束にくさびを打ち込むことは許さない」などと発言しているが、どうもポイントがはっきりしない発言である。今次会議をめぐりティラーソン氏は手腕を問われることになった。
日本は中ロより重視され、早い段階から参加を求められた。しかし、日本政府としては、「対話」派の国々を結集することなどしたくない。むしろそれを警戒していたとも言われている。しかも、朝鮮戦争で戦った国々のことなど、日本は米国以外興味がない。
それでも会議に出席はしたが、河野外相は会議の内外で、「圧力」に集中することが必要だと説いて回ったと思う。
その努力もあって、今次会議の報道では、特に日本の報道だが、会議は「圧力」強化、あるいは重視が結論となったという趣旨が強く出た。また、河野外相は、「(会合では)対話ムード、融和ムードは一切なかった」と言い切った。
「対話」重視で盛り上がろうとした今次会議は、当初の目的に照らすと、成功と言えない結果に終わったのは明らかだ。会合後にティラーソン氏と並んで会見したフリーランド外相は「外交的解決が可能であり、不可欠だと信じている。それが今日の会合の結果だ」と頑張ったが、半分はやせ我慢でなかったか。
中国は、会議終了後、今回の会議の成果は「国際社会を分断させてしまったことだ」と皮肉たっぷりにコメントしている(新華社1月17日)。
しかし、今次会議の結果をもって、「対話」は今後重視されないとは言えない。
北朝鮮の核・ミサイル問題を解決するのに「対話」しないでよい、すべきでないと断言できるのは何カ国あるか。カナダ政府の今次会議の公報は、「我々は交渉と外交による解決が本質的で、また、可能な方法であると信じている」と述べている。これはフリーランド氏個人の考えでなく、カナダ政府の立場である。
各国とも、日本が「北朝鮮と今、対話すべきでない」と言うと正面切って反論しないだろうが、納得しているのではない。下手をすると、日本だけが「反対話」派の先頭に立つ恐れがある。
米国も「反対話」派だと日本政府は強調しているように聞こえる。が、トランプ大統領の本心はわからない。トランプ氏は、ティラーソン氏らが「対話」を重視する発言をすることは嫌うが、自分と金正恩委員長との対話の可能性については昨年の春からかぞえて、5回、平気で言及している。10日、文在寅大統領と電話会談した際には、「適切な時期と環境の下で北朝鮮と対話することにはオープンだ」と述べていた。
米国は複雑だ。トランプ氏は相手が違うと別のことも発言する。自分の立場を重視する政治的発言もする。米政権内にはさまざまな考えがあるが、基本は「圧力と対話」であり、「圧力」一本やりの日本とは異なっている。
2018.01.17
「■対北朝鮮「融和」と「対立」の歴史
北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長が新年の辞で、北朝鮮は平昌五輪に参加する用意があると発言したことから南北間の協議が始まり、9日には北朝鮮の五輪参加が合意されました。この結果、朝鮮半島では3月まで平穏な日々が続くことになったと思われます。
そもそも南北間には「統一国家の実現」という究極の目標がありますが、現実の対話では、離散家族の再会、人道支援、スポーツ面での協力、南北の境界付近で発生した紛争の処理などが話し合われてきました。実際には対話と対立の繰り返しだったと言えるでしょう。たとえば、金大中(キム・デジュン)大統領は相手を温かく包む「太陽政策」で南北交流を進め、開城(ケソン)工業団地の設置、北朝鮮へのコメ支援などを行い、また、現代グループは北朝鮮と共同で金剛山の観光事業を開始しました。さらに、金大中氏は韓国の大統領として初めて平壌(ピョンヤン)を訪問し、金正日委員長との共同宣言では南北統一原則の確認をはじめ、離散家族、親戚の訪問なども合意しました。
廬武鉉(ノ・ムヒョン)大統領も北朝鮮との関係改善には熱心で平壌を訪問しました、しかし、李明博(イ・ミョンバク)と朴槿恵(パク・クネ)両大統領の時代はむしろ対立が目立ち、金剛山観光事業は中断され、また、開城工業団地も閉鎖されるなどしました。
文在寅氏は廬武鉉大統領時代の側近であり、北朝鮮に対する政策面でも廬武鉉大統領に近いと言われています。
■北朝鮮の安全問題は解決できない中ロ
9日の南北協議は北朝鮮のオリンピック参加問題が主たる議題でしたが、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は10日の記者会見で、「私の任期中に北朝鮮の核問題を解決することが目標だ。朝鮮半島の非核化は、決して譲れない韓国の基本的な立場だ」などと非核化問題にかなり踏み込んだ発言をしました。これに北朝鮮は強く反発し、平昌オリンピックに参加しないこともありうることを示唆しました。
北朝鮮は、韓国とは非核化の問題について話し合いをしようとしません。1950~53年の朝鮮戦争以来の経緯から、韓国でなく米国が主要な相手だと見ているからです。今回の文氏の発言については、やはり韓国を相手にしないことを、牽制の気持ちを込めて確認しようとしたのだと思います。
北朝鮮は、北朝鮮の国家の存亡や安全保障を脅かしている米国に対抗するために核兵器やミサイルが必要という考えです。実際に米国が脅威か否かは議論があるでしょうが、米国は日本とともに北朝鮮を承認していないので、北朝鮮がそのような立場であるのは理由のないことではありません。また、北朝鮮は、米国がイラク戦争のように攻撃してくることを恐れていると言われています。つまり、北朝鮮の核問題はその安全をどう確保するかにかかっており、その問題についてカギを握っているのは米国だけなのです。
北朝鮮の非核化を実現できるのは中国だという考えもありますが、中国はロシアとともに北朝鮮を国家として承認しており、北朝鮮にとって脅威でありません。中国やロシアは北朝鮮に対して非核化の説得をしたり、原油禁輸など経済制裁の強化により圧力をかけたりすることはできるでしょうが、北朝鮮の安全問題は解決できません。それは北朝鮮と米国との間の問題だからです。
■1992年に南北で朝鮮半島の非核化宣言
韓国の場合は、中国やロシアと少し違っている点があります。1992年に、韓国は北朝鮮と共同で、朝鮮半島を非核化するという宣言をしました。この時、北朝鮮はまだ核を保有していませんでしたが、将来に向かって核を持たないと宣言したのです。しかし、その後、米国との関係は悪化し、北朝鮮は核開発を本格化させました。このように状況が変化したこともあり、北朝鮮は非核化問題について韓国と話さなくなったと思われます。
しかし、米国は今回の南北会談に注目していました。一部では、南北間では非核化の話をしてもらいたくないという声が上がったこともありましたが、トランプ大統領は文在寅大統領から電話で説明を受け、上機嫌だったと報道されました。米国の姿勢はまだはっきりしない面がありますが、国連決議の実施の妨げとならなければ、南北間の関係が進むのはかまわないという考えだと思われます。
今後については、容易に楽観的になることはできませんが、3か月間、緊張状態が緩和されることは最近なかったことであり、非核化に向けてもなんらかの進展につながることが期待されます。個人的には、米韓合同演習はオリンピック・パラリンピックが終了後ただちに再開するのでなく、可能な限り延期し、また、北朝鮮は核・ミサイルの実験を控えるのがよいと思います。
南北高官会談は朝鮮半島「非核化」につながるか
南北両朝鮮の会談は足元がしっかりしないところもあるようだが、北朝鮮のオリンピック参加は実現する方向で進んでいる。THE PAGEに以下の一文を寄稿した。「■対北朝鮮「融和」と「対立」の歴史
北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長が新年の辞で、北朝鮮は平昌五輪に参加する用意があると発言したことから南北間の協議が始まり、9日には北朝鮮の五輪参加が合意されました。この結果、朝鮮半島では3月まで平穏な日々が続くことになったと思われます。
そもそも南北間には「統一国家の実現」という究極の目標がありますが、現実の対話では、離散家族の再会、人道支援、スポーツ面での協力、南北の境界付近で発生した紛争の処理などが話し合われてきました。実際には対話と対立の繰り返しだったと言えるでしょう。たとえば、金大中(キム・デジュン)大統領は相手を温かく包む「太陽政策」で南北交流を進め、開城(ケソン)工業団地の設置、北朝鮮へのコメ支援などを行い、また、現代グループは北朝鮮と共同で金剛山の観光事業を開始しました。さらに、金大中氏は韓国の大統領として初めて平壌(ピョンヤン)を訪問し、金正日委員長との共同宣言では南北統一原則の確認をはじめ、離散家族、親戚の訪問なども合意しました。
廬武鉉(ノ・ムヒョン)大統領も北朝鮮との関係改善には熱心で平壌を訪問しました、しかし、李明博(イ・ミョンバク)と朴槿恵(パク・クネ)両大統領の時代はむしろ対立が目立ち、金剛山観光事業は中断され、また、開城工業団地も閉鎖されるなどしました。
文在寅氏は廬武鉉大統領時代の側近であり、北朝鮮に対する政策面でも廬武鉉大統領に近いと言われています。
■北朝鮮の安全問題は解決できない中ロ
9日の南北協議は北朝鮮のオリンピック参加問題が主たる議題でしたが、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は10日の記者会見で、「私の任期中に北朝鮮の核問題を解決することが目標だ。朝鮮半島の非核化は、決して譲れない韓国の基本的な立場だ」などと非核化問題にかなり踏み込んだ発言をしました。これに北朝鮮は強く反発し、平昌オリンピックに参加しないこともありうることを示唆しました。
北朝鮮は、韓国とは非核化の問題について話し合いをしようとしません。1950~53年の朝鮮戦争以来の経緯から、韓国でなく米国が主要な相手だと見ているからです。今回の文氏の発言については、やはり韓国を相手にしないことを、牽制の気持ちを込めて確認しようとしたのだと思います。
北朝鮮は、北朝鮮の国家の存亡や安全保障を脅かしている米国に対抗するために核兵器やミサイルが必要という考えです。実際に米国が脅威か否かは議論があるでしょうが、米国は日本とともに北朝鮮を承認していないので、北朝鮮がそのような立場であるのは理由のないことではありません。また、北朝鮮は、米国がイラク戦争のように攻撃してくることを恐れていると言われています。つまり、北朝鮮の核問題はその安全をどう確保するかにかかっており、その問題についてカギを握っているのは米国だけなのです。
北朝鮮の非核化を実現できるのは中国だという考えもありますが、中国はロシアとともに北朝鮮を国家として承認しており、北朝鮮にとって脅威でありません。中国やロシアは北朝鮮に対して非核化の説得をしたり、原油禁輸など経済制裁の強化により圧力をかけたりすることはできるでしょうが、北朝鮮の安全問題は解決できません。それは北朝鮮と米国との間の問題だからです。
■1992年に南北で朝鮮半島の非核化宣言
韓国の場合は、中国やロシアと少し違っている点があります。1992年に、韓国は北朝鮮と共同で、朝鮮半島を非核化するという宣言をしました。この時、北朝鮮はまだ核を保有していませんでしたが、将来に向かって核を持たないと宣言したのです。しかし、その後、米国との関係は悪化し、北朝鮮は核開発を本格化させました。このように状況が変化したこともあり、北朝鮮は非核化問題について韓国と話さなくなったと思われます。
しかし、米国は今回の南北会談に注目していました。一部では、南北間では非核化の話をしてもらいたくないという声が上がったこともありましたが、トランプ大統領は文在寅大統領から電話で説明を受け、上機嫌だったと報道されました。米国の姿勢はまだはっきりしない面がありますが、国連決議の実施の妨げとならなければ、南北間の関係が進むのはかまわないという考えだと思われます。
今後については、容易に楽観的になることはできませんが、3か月間、緊張状態が緩和されることは最近なかったことであり、非核化に向けてもなんらかの進展につながることが期待されます。個人的には、米韓合同演習はオリンピック・パラリンピックが終了後ただちに再開するのでなく、可能な限り延期し、また、北朝鮮は核・ミサイルの実験を控えるのがよいと思います。
2018.01.15
しかも、中国が力を入れている「一帯一路」構想へ日本が積極的に関わる姿勢を示し、中国側も日本の姿勢を評価しているときにである。日本に対する友好的な態度と非友好的な行動がこれほど同時に表れるのはまず記憶にない。
中国海軍はなぜこのような行動に出たのか。この際考えられる原因を、仮説を交えることになるが、考えてみたい。
まず、日本の海上自衛隊の行動に中国海軍は不満を抱いているか。とくに、防衛省が海上自衛隊最大のヘリコプター搭載護衛艦「いずも」を空母に改修し、航空自衛隊がステルス機能を持つ最新鋭戦闘機F35Bを導入して搭載する検討をはじめたことと関係があるか。
中国紙は「いずも改修」を警戒して報道している。中国海軍としても注目しているだろう。しかし、そもそも「いずも」が導入された時は、報道はあったが、中国海軍が今回のようないやがらせの行動に出ることはなかった。
中国海軍は早くから遠洋へ進出するのに力を入れており、空母の配備を始めた。中国が日本の「ヘリコプター空母」を問題にするなら、日本は中国の「正規の空母」を何倍も問題にできただろう。「ヘリ空母」は「正規の空母」に比べれば大人と子供くらい違う。中国はさらに2017年4月、2隻目の「正規の空母」を就航させた。日本よりはるかに先へ行っているのであり、巨大な正規の空母を2隻も持ちながら、空母と言えるかはっきりしない日本の「いずも」に難癖をつけられるわけがないのだ。
海上自衛隊は北朝鮮に対する制裁措置の徹底のため、「黄海」での任務に就くことになった。「黄海」は中国と朝鮮半島の間に位置する公海であり、日本の艦船が活動するのに何ら問題はないが、中国は外国船が「黄海」を通行することを嫌う。それは国際法では認められない身勝手な主張に過ぎず、日本が行動を控える理由はないが、注意は必要である。
もっとも可能性が高いのは、軍による習近平主席への牽制である。
習氏による軍改革はかなり進展した。とくに制度面の改革は確かに進展した。しかし、まだ大きな問題が残っていることは、現役総参謀長房峰輝の失脚(2017年8月)、中央軍事委員会政治工作部主任の張陽の自殺(11月?)が示唆していた。前者は軍人のトップ、後者は中央軍事委員会において共産党の指示を受ける部門のトップである。
習氏は、軍内の急激な改革に反発する勢力をまだ一掃できていないのである。また、退職した元軍人が待遇に不満であること、徴兵に従わない者が社会問題になるほど多くなっていることなどの問題も表面化している。
軍人は表向き習近平に逆らうことはできないが、不満は軍内で広く共有されており、軍は、日本との緊張関係を作り出すことにより、自らの重要性をアピールしようとしているのではないか。
さらに、台湾問題も絡んでいる可能性がある。台湾の統一は、習近平政権の第1期目に進展しなかったので、2期目に残された最大課題となっている。中国は尖閣諸島を台湾の一部とみなしているので、そこで問題を起こすことは台湾問題の解決のために軍の役割が重要であることを訴えるのに都合がよいのである。つまり、尖閣諸島で問題を起こすことは中国海軍にとって一石二鳥となるのである。
最後の点は仮説に過ぎないが、今後時間をかけて検証していく必要がある。
中国は日本に何をしようとしているのか
1月11日、中国海軍の潜水艦と艦艇が尖閣諸島(沖縄県)周辺の日本の接続水域に入った。小野寺防衛相は「両艦が同時に尖閣の接続水域を航行するのを確認したのは初めて」と述べており、今回の中国海軍の行動はかつて例を見ないほど悪質である。しかも、中国が力を入れている「一帯一路」構想へ日本が積極的に関わる姿勢を示し、中国側も日本の姿勢を評価しているときにである。日本に対する友好的な態度と非友好的な行動がこれほど同時に表れるのはまず記憶にない。
中国海軍はなぜこのような行動に出たのか。この際考えられる原因を、仮説を交えることになるが、考えてみたい。
まず、日本の海上自衛隊の行動に中国海軍は不満を抱いているか。とくに、防衛省が海上自衛隊最大のヘリコプター搭載護衛艦「いずも」を空母に改修し、航空自衛隊がステルス機能を持つ最新鋭戦闘機F35Bを導入して搭載する検討をはじめたことと関係があるか。
中国紙は「いずも改修」を警戒して報道している。中国海軍としても注目しているだろう。しかし、そもそも「いずも」が導入された時は、報道はあったが、中国海軍が今回のようないやがらせの行動に出ることはなかった。
中国海軍は早くから遠洋へ進出するのに力を入れており、空母の配備を始めた。中国が日本の「ヘリコプター空母」を問題にするなら、日本は中国の「正規の空母」を何倍も問題にできただろう。「ヘリ空母」は「正規の空母」に比べれば大人と子供くらい違う。中国はさらに2017年4月、2隻目の「正規の空母」を就航させた。日本よりはるかに先へ行っているのであり、巨大な正規の空母を2隻も持ちながら、空母と言えるかはっきりしない日本の「いずも」に難癖をつけられるわけがないのだ。
海上自衛隊は北朝鮮に対する制裁措置の徹底のため、「黄海」での任務に就くことになった。「黄海」は中国と朝鮮半島の間に位置する公海であり、日本の艦船が活動するのに何ら問題はないが、中国は外国船が「黄海」を通行することを嫌う。それは国際法では認められない身勝手な主張に過ぎず、日本が行動を控える理由はないが、注意は必要である。
もっとも可能性が高いのは、軍による習近平主席への牽制である。
習氏による軍改革はかなり進展した。とくに制度面の改革は確かに進展した。しかし、まだ大きな問題が残っていることは、現役総参謀長房峰輝の失脚(2017年8月)、中央軍事委員会政治工作部主任の張陽の自殺(11月?)が示唆していた。前者は軍人のトップ、後者は中央軍事委員会において共産党の指示を受ける部門のトップである。
習氏は、軍内の急激な改革に反発する勢力をまだ一掃できていないのである。また、退職した元軍人が待遇に不満であること、徴兵に従わない者が社会問題になるほど多くなっていることなどの問題も表面化している。
軍人は表向き習近平に逆らうことはできないが、不満は軍内で広く共有されており、軍は、日本との緊張関係を作り出すことにより、自らの重要性をアピールしようとしているのではないか。
さらに、台湾問題も絡んでいる可能性がある。台湾の統一は、習近平政権の第1期目に進展しなかったので、2期目に残された最大課題となっている。中国は尖閣諸島を台湾の一部とみなしているので、そこで問題を起こすことは台湾問題の解決のために軍の役割が重要であることを訴えるのに都合がよいのである。つまり、尖閣諸島で問題を起こすことは中国海軍にとって一石二鳥となるのである。
最後の点は仮説に過ぎないが、今後時間をかけて検証していく必要がある。
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