平和外交研究所

7月, 2015 - 平和外交研究所 - Page 5

2015.07.02

(短文)中国の重要課題‐北戴河で指導者は何を考えるか


 北戴河は北京の東280キロにある海岸で避暑地として知られているが、ここで夏を過ごす中国の指導者は懸案について協議し、事実上の決定を下すこともある。正式でないのはもちろんであるが、非常に重要な話し合いも行われる。だから、中国に駐在の各国大使館、報道機関などは北戴河でどのような動きがあるか、懸命に情報収集を試みる。
 しかし、噂の類は別として、正確な情報を得るのは困難であり、数年たって初めて実情が分かってくることもある。たとえば、1987年早々に失脚した胡耀邦総書記の場合、突然問題が起こったのでなく、そこへ至るまでにさまざまな経緯があり、なかでも前年、北戴河で話し合われたことは大きな節目であった。しかし、当時、そのような事情はよく分からなかった。
 今年はどうなるか。中国の指導者が北戴河で何を話し合うかなど外から推測できるわけはないが、話題になりそうなテーマとしては次のようなことが考えられる。

○周永康前政治局常務委員の処分は6月に発表済みであり、今年でなく昨年、北戴河で話が出た可能性が高い。今年は、反腐敗運動は山を越したと見るか、さらに別の大物に対する追及を続けるかが問題となりうる。前者については本HP6月24日の「反腐敗運動は竜頭蛇尾となったか‐何清漣の批判」を参照願いたい。
○政治体制改革は主要な課題として位置付けられているが、進捗した形跡はなさそうだし、今後進捗するとも思えない。要するに、民主化が問題であり、習近平は強く警戒し、種々の手を打っている。報道を強い規制下に置いているのもその一環である。
○内政では、むしろ経済不振、外国からの投資減少が最大の関心事であろう。もっともこれは話題になるとしても、数名で方針が決められるような問題ではなく、北戴河で特に新しい動きが出てくるとは思えない。
○AIIB(アジア・インフラ投資銀行)については6月29日に設立協定の署名式が行なわれたばかりであり、手続き的には成功しているが、うまく機能するか、すべてこれからである。この問題については本HPの5月25日「アジアインフラ投資銀行(AIIB)の正体」などを参照願いたい。
○「一帯一路」については、陸上のシルクロード周辺の開発(一帯)はおおむね順調とみられている。一方、海上のシルクロード(一路)については、スリランカやギリシャの政治状況の変化などのため障害が生じているという認識である。本HP5月13日の「中国の「一帯一路」構想、狙いや背景」を参照願いたい。
○習近平主席は今年の9月、おそらく国連総会への出席の前後に米国を訪問する。南シナ海での埋め立て問題が影響を与えないよう中国は注意しており、6月の23~24日の米中戦略経済対話を成功裏に終えたので一安心しているであろう。
○日本との関係では、経済面での協力を増進させたい考えである一方、日本の安全保障関連法案の審議と南シナ海での日比軍事協力を警戒している。歴史問題については、とくに安倍首相の70周年談話を注目している。
○9月3日の対日戦争勝利記念行事は今年から大々的に行なう予定であり、目下内外で準備を進めている。

アーカイブ

検索

このページのトップへ

Copyright©平和外交研究所 All Rights Reserved.