2月, 2015 - 平和外交研究所 - Page 2
2015.02.23
経済面では、中国が天安門事件を経て改革開放路線に復帰してから、すなわち1990年代の初頭から協力関係が目立って進展した。大型のプロジェクトが次々に実現し、現在建設中のGandhara新空港の建設に中国企業はパキスタン企業とともに参加している(設計はフランス、シンガポールなどの企業)。中国はまた、カラコルム・ハイウェイの延長・拡張、パキスタンのChashma原子力発電所の建設に協力し、原子炉も供給している。2006年には両国共同でHaier・Ruba経済特区を開設した。これは中国として初の海外における経済特区である。現在は中パ両国で貿易経済発展5カ年計画を進めている。
イランとの国境に近いグワダル(Gwadar)での深海港建設工事は中国の中東への進出の関連でとくに注目されている。計画は1993年から進められ、第1期工事は中国企業により2007年に完成し、現在第2期の工事中である。この間、2013年に中国は同港の運営権をシンガポールのPSA社から獲得した。新港の運用は2015年の4月に開始される予定である。
グワダルは1958年、元の所有者であったオマーンからパキスタンが購入した時は漁村であったが、ペルシャ湾とホルムズ海峡への海路を扼する絶好の地点にあるので港が建設され、さらに深海港に改良されているのである。
機能的には、中国の海上シルクロード建設にとって重要な拠点となっている他、同港から新疆自治区へ延びるパイプラインも建設中であり、これが完成すれば中東から中国への石油輸送のルートが海上と陸上の2本になる。ただし、陸上のルートはタリバンの影響が強い地域を経由しているので建設は順調に進展していないと言われている。
中国とパキスタンの関係に、近年アフガニスタンが絡むようになっている。アフガニスタンではタリバン政権が打倒された2001年以降も多くの地域で紛争が続き、米軍はじめ各国の部隊が安定化に努めてきたが、すでに撤退傾向になっており、米軍は2016年末までに完全撤退すると発表されている。
この間、中国は多国籍軍にはいっさい参加しなかったが、アフガニスタンと中国との関係は進展し、カルザイ前大統領は5回訪中した。2014年9月に就任したガニ新大統領はその翌月中国を訪問した。北京でアフガニスタン地域協力に関するイスタンブール・プロセス外相会議第4回会合が開かれるのに出席するのが目的であったが、アフガニスタンの新大統領として初の外国訪問が中国となった。ガニ大統領と習近平主席の会談後に発表された共同声明では、中国は、今後4年間で計20億元(約360億円)の無償援助の提供、アフガニスタンにおける鉱山や油田の開発支援、アフガニスタン技術者3千人の育成支援などが発表された。
このような状況は中国内でも驚きをもって見られるほど急激で、予想を超えるものであり、中国外交としては成果を上げた形になっているが、アフガニスタンの安定化に協力してきた諸国から見れば複雑な気持ちであろう。2001年以降、各国は重い負担を強いられ、米国は5千人近い兵士を犠牲にしながら、経済的な支援を行なってきた。今後もこれらの諸国の経済面での協力は前述のイスタンブール・プロセスのような多国間協力を中心に進められる。アフガニスタンとしては西側の協力は決定的に重要であり、弱体化しないようあらゆる努力を続ける必要がある。したがって、中国の影響力の増大にはおのずと限界があると思われる。
ガニ大統領が3月に米国を訪問するのは当然である。また、米国は就任早々のカーター国防長官をアフガニスタンへ派遣し、オバマ政権が、来年末までとしている駐留米軍の撤退期限の延長を検討していることをガニ大統領に伝えた。米国の方針変更は、アフガニスタンの状況が不安定なまま推移していることが最大の理由であろうが、中国とアフガニスタンとの関係強化も当然意識しているものと思われる。
中国にとってはアフガニスタンとの外交関係もさることながら、タリバンおよびイスラム勢力との関係も重要な問題である。タリバン政権下でアフガニスタンは新疆自治区の反政府分子の逃避先になっており、現在も過激派ウイグル人はタリバンと関係を保っている。もしアフガニスタンの情勢が悪化しタリバンの力が強くなると中国にとっての危険が増すので、中国としては新疆自治区の反政府分子をコントロールするためにもアフガニスタン政府に期待するところ大である。
今年に入ってからアフガニスタン当局は15人のウイグル人を拘束し、中国当局に引き渡した。その際、パキスタン政府がタリバン、あるいは直接でなくてもタリバンに近いパキスタンの武装グループを通じて、アフガニスタン政府と交渉に応じるよう説得するよう中国に要請したと報道されている(ロイター電2月20日)。本来はアフガニスタン政府がタリバンと交渉すればよいのであるが、それが実現しないのでアフガニスタン政府はタリバンに影響力があるパキスタン政府、さらには中国政府にも頼み込むという複雑な関係になっているわけである。
中国の「海上シルクロード」続き3
中国とパキスタンは長らく友好関係にあり、とくに、政治・軍事面では1960年代から緊密であった。両国ともインドと対立していることが背景になっている。1998年、パキスタンがインドに続いて核実験を行えたのは中国からの協力があったからである。経済面では、中国が天安門事件を経て改革開放路線に復帰してから、すなわち1990年代の初頭から協力関係が目立って進展した。大型のプロジェクトが次々に実現し、現在建設中のGandhara新空港の建設に中国企業はパキスタン企業とともに参加している(設計はフランス、シンガポールなどの企業)。中国はまた、カラコルム・ハイウェイの延長・拡張、パキスタンのChashma原子力発電所の建設に協力し、原子炉も供給している。2006年には両国共同でHaier・Ruba経済特区を開設した。これは中国として初の海外における経済特区である。現在は中パ両国で貿易経済発展5カ年計画を進めている。
イランとの国境に近いグワダル(Gwadar)での深海港建設工事は中国の中東への進出の関連でとくに注目されている。計画は1993年から進められ、第1期工事は中国企業により2007年に完成し、現在第2期の工事中である。この間、2013年に中国は同港の運営権をシンガポールのPSA社から獲得した。新港の運用は2015年の4月に開始される予定である。
グワダルは1958年、元の所有者であったオマーンからパキスタンが購入した時は漁村であったが、ペルシャ湾とホルムズ海峡への海路を扼する絶好の地点にあるので港が建設され、さらに深海港に改良されているのである。
機能的には、中国の海上シルクロード建設にとって重要な拠点となっている他、同港から新疆自治区へ延びるパイプラインも建設中であり、これが完成すれば中東から中国への石油輸送のルートが海上と陸上の2本になる。ただし、陸上のルートはタリバンの影響が強い地域を経由しているので建設は順調に進展していないと言われている。
中国とパキスタンの関係に、近年アフガニスタンが絡むようになっている。アフガニスタンではタリバン政権が打倒された2001年以降も多くの地域で紛争が続き、米軍はじめ各国の部隊が安定化に努めてきたが、すでに撤退傾向になっており、米軍は2016年末までに完全撤退すると発表されている。
この間、中国は多国籍軍にはいっさい参加しなかったが、アフガニスタンと中国との関係は進展し、カルザイ前大統領は5回訪中した。2014年9月に就任したガニ新大統領はその翌月中国を訪問した。北京でアフガニスタン地域協力に関するイスタンブール・プロセス外相会議第4回会合が開かれるのに出席するのが目的であったが、アフガニスタンの新大統領として初の外国訪問が中国となった。ガニ大統領と習近平主席の会談後に発表された共同声明では、中国は、今後4年間で計20億元(約360億円)の無償援助の提供、アフガニスタンにおける鉱山や油田の開発支援、アフガニスタン技術者3千人の育成支援などが発表された。
このような状況は中国内でも驚きをもって見られるほど急激で、予想を超えるものであり、中国外交としては成果を上げた形になっているが、アフガニスタンの安定化に協力してきた諸国から見れば複雑な気持ちであろう。2001年以降、各国は重い負担を強いられ、米国は5千人近い兵士を犠牲にしながら、経済的な支援を行なってきた。今後もこれらの諸国の経済面での協力は前述のイスタンブール・プロセスのような多国間協力を中心に進められる。アフガニスタンとしては西側の協力は決定的に重要であり、弱体化しないようあらゆる努力を続ける必要がある。したがって、中国の影響力の増大にはおのずと限界があると思われる。
ガニ大統領が3月に米国を訪問するのは当然である。また、米国は就任早々のカーター国防長官をアフガニスタンへ派遣し、オバマ政権が、来年末までとしている駐留米軍の撤退期限の延長を検討していることをガニ大統領に伝えた。米国の方針変更は、アフガニスタンの状況が不安定なまま推移していることが最大の理由であろうが、中国とアフガニスタンとの関係強化も当然意識しているものと思われる。
中国にとってはアフガニスタンとの外交関係もさることながら、タリバンおよびイスラム勢力との関係も重要な問題である。タリバン政権下でアフガニスタンは新疆自治区の反政府分子の逃避先になっており、現在も過激派ウイグル人はタリバンと関係を保っている。もしアフガニスタンの情勢が悪化しタリバンの力が強くなると中国にとっての危険が増すので、中国としては新疆自治区の反政府分子をコントロールするためにもアフガニスタン政府に期待するところ大である。
今年に入ってからアフガニスタン当局は15人のウイグル人を拘束し、中国当局に引き渡した。その際、パキスタン政府がタリバン、あるいは直接でなくてもタリバンに近いパキスタンの武装グループを通じて、アフガニスタン政府と交渉に応じるよう説得するよう中国に要請したと報道されている(ロイター電2月20日)。本来はアフガニスタン政府がタリバンと交渉すればよいのであるが、それが実現しないのでアフガニスタン政府はタリバンに影響力があるパキスタン政府、さらには中国政府にも頼み込むという複雑な関係になっているわけである。
2015.02.20
総理の諮問機関という位置づけであり、その役割については、「談話を書くことを目的にしたものではない。政府が談話の具体的内容を検討するに当たり、意見を伺いたい」と菅官房長官により説明された。最終的に談話を作るのは、あくまでも政府だ、政府が作る談話は懇談会の意見と異なるものになりうるということである。懇談会のそうそうたるメンバーに対して失礼ではないかという気もするが、以前よくあった、官僚が作文したものを有識者の意見であると称してそのまま結論とするよりはるかによい。メンバーは自由に意見を述べることができ、それをどのように活用するかは総理しだいというのは総理の諮問機関の本来の姿なのであろう。昨年7月に閣議決定された安全保障法制に関する新方針も、それに先立って発表された懇談会の報告のうち一部を採用しなかった。
談話の内容については、菅官房長官は記者会見で、「先の大戦への反省、戦後平和国家としての歩み、今後日本はアジア太平洋地域や世界にどう貢献していくか。世界に発信できるようなものを英知を結集して考え、新たな談話に書き込んでいきたい」と述べた。これも立派な姿勢であるが、「先の大戦への反省」をどのように表明するかについては考えなければならないことがある。とくに、戦後50年の際の「村山談話」と60年の「小泉談話」で表明したことをどのように扱うかである。
安倍総理は、この二つの談話を「全体として引き継ぐ」と語っている。この言葉には方向性は示されているが、不明確な面もあり、すでに内外でさまざまな議論が出ているが、私は次のように考える。
重要なポイントは、分かりやすくするため多少書き換えたが、①戦争をしたのは誤りであった、②日本は植民地支配と侵略によって多くの国に多大の損害と苦痛を与えた、③反省しお詫びする、の3点であり、これをどう扱うかが問題であるが、結論を先に言うと、新談話ではこの3点を言い換える必要はないし、言い換えるべきでないと思う。その理由はつぎのとおりである。
第1に、この3点に関する村山談話と小泉談話における言及については、国民の間にさまざまな意見があり、一致していない。安倍総理が自分の考えを新談話に盛り込みたいのは分かるが、10年ごとという節目であれ、その時の総理が前任者とは少し異なる自己の信念を書き込むのは果たして賢明か。さらに言えば、村山談話と小泉談話は一致していない部分があり、今回さらに一致しない談話を発表するのは賢明でないのではないか。もし、先の大戦に関して日本に違った意見があることを示すのが目的ならば、2つの談話で足りている。
第2に、新談話が村山談話と小泉談話の過ち、あるいは適切でない点を正そうとするならば、それは無理なことである。新談話は将来安倍総理の談話として記憶されるが、村山談話と小泉談話を書き換えることはできないからである。書き換えるならば、政府が正面からこの3点を取り上げ、国民的議論を行ない、それを集約して政府見解とする必要がある。政府見解は一つの例であり、法律ということも考えられる。いずれにしてもそれは不可能に近いのではないか。
第3に、「全体として引き継ぐ」と説明しつつ、重要なポイントの一部であれ引き継がないのは誠実な姿勢とは言えない。これは総理の考えでないだろうが、念のため指摘しておく。
第4に、安倍総理が国会で指摘したことに通じるが、具体的な文言をあれこれ議論するのは果たして得策か疑問である。
第5に、近隣諸国のみならず米国なども新談話の内容に強い関心を見せている。その状況の中で、村山談話および小泉談話と異なる内容の新談話を発表することが安倍政権として得策か疑問である。下手をすれば、米国などの警戒心をむしろあおる結果になる恐れがある。
以上のような考慮から、新談話では具体的なポイントには深入りせず、ただ「村山談話と小泉談話の立場を継承する」とのみ表明し、その上で「戦後平和国家としての歩み、今後日本はアジア太平洋地域や世界にどう貢献していくか」を大いに論じるのがよいと考える。
戦後70周年新談話
戦後70周年に発出される総理談話に関し、有識者の意見を聞くための懇談会、「20世紀を振り返り21世紀の世界秩序と日本の役割を構想するための有識者懇談会」(略称・21世紀構想懇談会)の設置が発表された。総理の諮問機関という位置づけであり、その役割については、「談話を書くことを目的にしたものではない。政府が談話の具体的内容を検討するに当たり、意見を伺いたい」と菅官房長官により説明された。最終的に談話を作るのは、あくまでも政府だ、政府が作る談話は懇談会の意見と異なるものになりうるということである。懇談会のそうそうたるメンバーに対して失礼ではないかという気もするが、以前よくあった、官僚が作文したものを有識者の意見であると称してそのまま結論とするよりはるかによい。メンバーは自由に意見を述べることができ、それをどのように活用するかは総理しだいというのは総理の諮問機関の本来の姿なのであろう。昨年7月に閣議決定された安全保障法制に関する新方針も、それに先立って発表された懇談会の報告のうち一部を採用しなかった。
談話の内容については、菅官房長官は記者会見で、「先の大戦への反省、戦後平和国家としての歩み、今後日本はアジア太平洋地域や世界にどう貢献していくか。世界に発信できるようなものを英知を結集して考え、新たな談話に書き込んでいきたい」と述べた。これも立派な姿勢であるが、「先の大戦への反省」をどのように表明するかについては考えなければならないことがある。とくに、戦後50年の際の「村山談話」と60年の「小泉談話」で表明したことをどのように扱うかである。
安倍総理は、この二つの談話を「全体として引き継ぐ」と語っている。この言葉には方向性は示されているが、不明確な面もあり、すでに内外でさまざまな議論が出ているが、私は次のように考える。
重要なポイントは、分かりやすくするため多少書き換えたが、①戦争をしたのは誤りであった、②日本は植民地支配と侵略によって多くの国に多大の損害と苦痛を与えた、③反省しお詫びする、の3点であり、これをどう扱うかが問題であるが、結論を先に言うと、新談話ではこの3点を言い換える必要はないし、言い換えるべきでないと思う。その理由はつぎのとおりである。
第1に、この3点に関する村山談話と小泉談話における言及については、国民の間にさまざまな意見があり、一致していない。安倍総理が自分の考えを新談話に盛り込みたいのは分かるが、10年ごとという節目であれ、その時の総理が前任者とは少し異なる自己の信念を書き込むのは果たして賢明か。さらに言えば、村山談話と小泉談話は一致していない部分があり、今回さらに一致しない談話を発表するのは賢明でないのではないか。もし、先の大戦に関して日本に違った意見があることを示すのが目的ならば、2つの談話で足りている。
第2に、新談話が村山談話と小泉談話の過ち、あるいは適切でない点を正そうとするならば、それは無理なことである。新談話は将来安倍総理の談話として記憶されるが、村山談話と小泉談話を書き換えることはできないからである。書き換えるならば、政府が正面からこの3点を取り上げ、国民的議論を行ない、それを集約して政府見解とする必要がある。政府見解は一つの例であり、法律ということも考えられる。いずれにしてもそれは不可能に近いのではないか。
第3に、「全体として引き継ぐ」と説明しつつ、重要なポイントの一部であれ引き継がないのは誠実な姿勢とは言えない。これは総理の考えでないだろうが、念のため指摘しておく。
第4に、安倍総理が国会で指摘したことに通じるが、具体的な文言をあれこれ議論するのは果たして得策か疑問である。
第5に、近隣諸国のみならず米国なども新談話の内容に強い関心を見せている。その状況の中で、村山談話および小泉談話と異なる内容の新談話を発表することが安倍政権として得策か疑問である。下手をすれば、米国などの警戒心をむしろあおる結果になる恐れがある。
以上のような考慮から、新談話では具体的なポイントには深入りせず、ただ「村山談話と小泉談話の立場を継承する」とのみ表明し、その上で「戦後平和国家としての歩み、今後日本はアジア太平洋地域や世界にどう貢献していくか」を大いに論じるのがよいと考える。
2015.02.19
スリランカが1957年に中国を承認して以来両国は緊密な関係にあった。
中国は、インドとは歴史的、地理的に複雑な関係があり、また、ともに大国としてライバル関係にある。一方、スリランカは巨大な隣国であるインドの影響を強く受けやすいので、中国との関係強化は自主路線を貫くうえで重要である。このような事情から中国とスリランカはインドの存在を強く意識しながら友好関係を増進させてきた。
中国とスリランカの協力は経済および軍事の両面に及んでおり、経済面ではすでに高速道路、高層ビル、劇場兼国際会議場などの建設が行われている。
スリランカ南部のマタラでは、バンダラナイケ空港に次ぐスリランカ第2の国際空港マタラ・ラジャパクサ国際空港が2013年完成した。ラジャパクサは中国との協力関係に熱心であった前大統領の名前である。
コロンボ国際コンテナ・ターミナル(Colombo International Container Terminal CTCT)は必要資金5億ドルの大部分を中国が賄い、これも2013年に運用を開始した。
コロンボ港を埋立して建設するコロンボポートシティは、過去最大のプロジェクトであり、中国主導で進めることに合意している。2014年9月に習近平主席がスリランカを訪問した際定礎式に出席した。
スリランカ最南端に近いハンバントタ(Hambantota)開発区は国際コンテナ港、倉庫、製油所および国際空港を含める一大プロジェクトであり、将来国際貨物輸送のハブになることが期待されている。その総経費の85%以上を中国が出資する。3年計画の建設第1フェーズはすでに着工しており、全体は10年で完成の予定である。
軍事面での協力も進展している。中国はスリランカに対し、対戦車ミサイル、ロケット発射台、携行ミサイル、戦闘機、軍用船舶、レーダー、通信機器など各種の武器を提供し、スリランカ軍の近代化に貢献している。兵員の訓練にも協力している。航空機のメンテナンス・センターを建設する計画もあると言われている。
中国のこのようなスリランカへの進出にインドは懸念を強めていたところ、2014年9月と11月(10月31日に入港した可能性もある)、中国の潜水艦がコロンボ港に寄港したのでインドは強く刺激された。インドとスリランカの間には現状維持に関する合意があるそうで、スリランカはインドに通報することなく中国の潜水艦の寄港を認めたとして強く抗議した。
その数週間後に大統領選挙が行われ、野党統一候補のシリセナが予想に反して現職のラジャパクサを破ったのである。その背景には、ラジャパクサがあまりにも中国寄りであることに警戒したインドの影響があるとも言われている。その真偽はともかく、ラジャパクサの中国寄り姿勢は明らかであり、前述の新空港建設に関して不正があったとも噂されていた。シリセナは選挙キャンペーン中、中国との協力プロジェクトは債務トラップ(詭計)と批判したこともあった。その具体的な意味は必ずしも明らかでないが、シリセナ候補が中国との関係に一線を画そうとしていたことは疑いない。シリセナ大統領は当選後いち早くインドを訪問し、原子力協力協定を署名している。
しかしながら、スリランカとして中国との関係を軽んじることはできないのも明白である。シリセナ大統領は中国を訪問したいという表明も行なっている。
2月6日の新華社電は、次のように報道した。
「スリランカ新政権の報道官兼保健相は5日、「スリランカ新政権はコロンボ港湾都市の開発プロジェクトを承認した」と発表した。これまでにスリランカと中国の両国間の最大協力プロジェクトとなったコロンボ港湾都市開発プロジェクトは、環境影響の評価で再評価を要求された。
スリランカ保健相によると、スリランカ新政権はこのプロジェクトの環境影響評価報告書に満足で、プロジェクト建設の第2弾で再評価を要求する可能性があるが、これまでに港湾都市の開発は停止しないという。
コロンボ港湾都市の開発プロジェクトは中国交通建設集団とスリランカ港湾局が共同で開発する総合型投資プロジェクトで、商業、居住やレジャーを一体化するコロンボ港湾都市の形成を目指す。
このプロジェクトは第1期の投資が14億ドルで、今までスリランカ最大の外国直接投資プロジェクトとなった。昨年9月、中国の習近平国家主席は当時のスリランカのラジャパクサ大統領と一緒にコロンボ港湾都市開発プロジェクトの定礎式に出席した。」
これは、コロンボポートシティの建設に関する報道であり、南部のハンバントタ港のプロジェクトについて両国間でどのような話し合いが行われているか、今のところ不明である。中国系の新聞が、この問題について支障が生じているという内容の報道を行なったことは「海上シルクロード」に関する最初の報告で紹介したとおりである。
中国の「海上のシルクロード」 続き2
海上シルクロードの建設においてギリシャと並んで注目を集めたのが、スリランカであったが、1月8日にスリランカの大統領選挙が実施され、予想を覆して野党候補が当選したことから雲行きがおかしくなってきた。この2週間後にギリシャの総選挙があり、港湾施設の建設が予定通り進まなくなる恐れが生じたことは前回に報告した。中国にとっては相ついで2つの重要拠点に黄色信号が点いたのである。スリランカが1957年に中国を承認して以来両国は緊密な関係にあった。
中国は、インドとは歴史的、地理的に複雑な関係があり、また、ともに大国としてライバル関係にある。一方、スリランカは巨大な隣国であるインドの影響を強く受けやすいので、中国との関係強化は自主路線を貫くうえで重要である。このような事情から中国とスリランカはインドの存在を強く意識しながら友好関係を増進させてきた。
中国とスリランカの協力は経済および軍事の両面に及んでおり、経済面ではすでに高速道路、高層ビル、劇場兼国際会議場などの建設が行われている。
スリランカ南部のマタラでは、バンダラナイケ空港に次ぐスリランカ第2の国際空港マタラ・ラジャパクサ国際空港が2013年完成した。ラジャパクサは中国との協力関係に熱心であった前大統領の名前である。
コロンボ国際コンテナ・ターミナル(Colombo International Container Terminal CTCT)は必要資金5億ドルの大部分を中国が賄い、これも2013年に運用を開始した。
コロンボ港を埋立して建設するコロンボポートシティは、過去最大のプロジェクトであり、中国主導で進めることに合意している。2014年9月に習近平主席がスリランカを訪問した際定礎式に出席した。
スリランカ最南端に近いハンバントタ(Hambantota)開発区は国際コンテナ港、倉庫、製油所および国際空港を含める一大プロジェクトであり、将来国際貨物輸送のハブになることが期待されている。その総経費の85%以上を中国が出資する。3年計画の建設第1フェーズはすでに着工しており、全体は10年で完成の予定である。
軍事面での協力も進展している。中国はスリランカに対し、対戦車ミサイル、ロケット発射台、携行ミサイル、戦闘機、軍用船舶、レーダー、通信機器など各種の武器を提供し、スリランカ軍の近代化に貢献している。兵員の訓練にも協力している。航空機のメンテナンス・センターを建設する計画もあると言われている。
中国のこのようなスリランカへの進出にインドは懸念を強めていたところ、2014年9月と11月(10月31日に入港した可能性もある)、中国の潜水艦がコロンボ港に寄港したのでインドは強く刺激された。インドとスリランカの間には現状維持に関する合意があるそうで、スリランカはインドに通報することなく中国の潜水艦の寄港を認めたとして強く抗議した。
その数週間後に大統領選挙が行われ、野党統一候補のシリセナが予想に反して現職のラジャパクサを破ったのである。その背景には、ラジャパクサがあまりにも中国寄りであることに警戒したインドの影響があるとも言われている。その真偽はともかく、ラジャパクサの中国寄り姿勢は明らかであり、前述の新空港建設に関して不正があったとも噂されていた。シリセナは選挙キャンペーン中、中国との協力プロジェクトは債務トラップ(詭計)と批判したこともあった。その具体的な意味は必ずしも明らかでないが、シリセナ候補が中国との関係に一線を画そうとしていたことは疑いない。シリセナ大統領は当選後いち早くインドを訪問し、原子力協力協定を署名している。
しかしながら、スリランカとして中国との関係を軽んじることはできないのも明白である。シリセナ大統領は中国を訪問したいという表明も行なっている。
2月6日の新華社電は、次のように報道した。
「スリランカ新政権の報道官兼保健相は5日、「スリランカ新政権はコロンボ港湾都市の開発プロジェクトを承認した」と発表した。これまでにスリランカと中国の両国間の最大協力プロジェクトとなったコロンボ港湾都市開発プロジェクトは、環境影響の評価で再評価を要求された。
スリランカ保健相によると、スリランカ新政権はこのプロジェクトの環境影響評価報告書に満足で、プロジェクト建設の第2弾で再評価を要求する可能性があるが、これまでに港湾都市の開発は停止しないという。
コロンボ港湾都市の開発プロジェクトは中国交通建設集団とスリランカ港湾局が共同で開発する総合型投資プロジェクトで、商業、居住やレジャーを一体化するコロンボ港湾都市の形成を目指す。
このプロジェクトは第1期の投資が14億ドルで、今までスリランカ最大の外国直接投資プロジェクトとなった。昨年9月、中国の習近平国家主席は当時のスリランカのラジャパクサ大統領と一緒にコロンボ港湾都市開発プロジェクトの定礎式に出席した。」
これは、コロンボポートシティの建設に関する報道であり、南部のハンバントタ港のプロジェクトについて両国間でどのような話し合いが行われているか、今のところ不明である。中国系の新聞が、この問題について支障が生じているという内容の報道を行なったことは「海上シルクロード」に関する最初の報告で紹介したとおりである。
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