2014 - 平和外交研究所 - Page 37
2014.07.22
中国の海軍は今年初めて環太平洋合同演習(RimPac)に参加して注目されたが、今回の3国演習はそれに次ぐもので、中国軍が米豪などの軍と関係を緊密化する積極的な姿勢が目立っている。
なお、米国は2017年に、ダーウィンに駐留する海兵隊を1100人から2500人に増加することにした経緯がある。これは明らかに中国軍の南シナ海での勢力拡大に対抗する措置であった。
今秋に予定されている3国合同演習の規模は小さく、軍事的な意義はあまりないと関係者は述べているようであるが、中国軍はただ強気一点張りで米軍と対抗することを一部考え直し、むしろ米軍に積極的に関わっていこうとしているのではないか。軍事的にはともかく、政治的な意味合い、特に日本との関係について中国軍がどのように考えているか注目される。
中国軍の米豪軍との合同演習
中国軍は米国とともにオーストラリア軍の演習に参加することになったとオーストラリアの新聞が報道し、米国国防省が確認した。演習の時期は2014年10月で、場所はオーストラリア北部の荒野で、蛇なども食する過酷なものだそうだ。これまで中国の海軍は米国と何回か合同演習を行ったことがあるが、陸軍が他国の軍と合同演習をするのは初めてである。この計画は中国の范長龍中央軍事委員会副主席がオーストラリアを訪問した際(7月17日)に提案したものである。中国の海軍は今年初めて環太平洋合同演習(RimPac)に参加して注目されたが、今回の3国演習はそれに次ぐもので、中国軍が米豪などの軍と関係を緊密化する積極的な姿勢が目立っている。
なお、米国は2017年に、ダーウィンに駐留する海兵隊を1100人から2500人に増加することにした経緯がある。これは明らかに中国軍の南シナ海での勢力拡大に対抗する措置であった。
今秋に予定されている3国合同演習の規模は小さく、軍事的な意義はあまりないと関係者は述べているようであるが、中国軍はただ強気一点張りで米軍と対抗することを一部考え直し、むしろ米軍に積極的に関わっていこうとしているのではないか。軍事的にはともかく、政治的な意味合い、特に日本との関係について中国軍がどのように考えているか注目される。
2014.07.21
中国は非アラブ諸国の中で最初にパレスチナを承認し、北京の代表事務所に外交使節としての待遇を認めた。かつていわゆる第三世界に属していた時のことであり、今となっては昔話である。
中国はパレスチナとイスラエルの関係が緩和したことを背景に、1992年、イスラエルと外交関係を結び、それ以降、中国はイスラエルとパレスチナに対する姿勢を徐々に修正してきた。
中国とイスラエルの関係は着実に進展し、経済面では中国はイスラエルにとって主要な貿易相手国となっている。とくに、兵器の面では双方向の取引が増大している。中国は、米国や欧州諸国から入手できないハイテク武器をイスラエルから購入しているという疑惑がもたれている。かつて中国が早期警戒システムのファルコンをイスラエルから購入しようとして米国が待ったをかけたことがあった。
中国・イスラエル関係で最も顕著なのは軍事面での交流であり、閉鎖的な中国としてはめずらしくよく付き合っており、そのレベルと頻度はロシアとの関係を除けば随一ではないかと思われる。イスラエルは、以前台湾との関係が緊密であったが、最近は手控えている。
ただし、パレスチナ問題については、中国はイスラエルを非難する決議に賛成を続けており、ヨルダン川西岸へのイスラエルの入植を非難する決議にも賛成している。国連がパレスチナにオブザーバーの資格を認めた際には賛成した。
中国は、2014年の6月、パレスチナの統一国家を承認した。中国が特使を派遣したのはこの関係であろう。
米国にとってイスラエルとの関係は他の国には見られない特殊性があるが、パレスチナ問題については米国こそが和解に貢献できるというという自負は最近の状況にかんがみるとしぼみがちかもしれない。それでもほかの国が米国に代わって中東和平で双方の仲を取り持つようなことは考えられない。しかし、今のような状況を続くと中国がある日パレスチナ和平の仲介者として出てくるかもしれない。
中国のイスラエル・パレスチナ政策
中国政府は特使をイスラエルとパレスチナに派遣した。「最近」だそうだ。双方の緊張緩和を探り、イスラエルがパレスチナ問題についてさらに積極的な役割を果たすよう働きかけることが目的だと台湾の新聞『旺報』7月19日付が論評している。中国は非アラブ諸国の中で最初にパレスチナを承認し、北京の代表事務所に外交使節としての待遇を認めた。かつていわゆる第三世界に属していた時のことであり、今となっては昔話である。
中国はパレスチナとイスラエルの関係が緩和したことを背景に、1992年、イスラエルと外交関係を結び、それ以降、中国はイスラエルとパレスチナに対する姿勢を徐々に修正してきた。
中国とイスラエルの関係は着実に進展し、経済面では中国はイスラエルにとって主要な貿易相手国となっている。とくに、兵器の面では双方向の取引が増大している。中国は、米国や欧州諸国から入手できないハイテク武器をイスラエルから購入しているという疑惑がもたれている。かつて中国が早期警戒システムのファルコンをイスラエルから購入しようとして米国が待ったをかけたことがあった。
中国・イスラエル関係で最も顕著なのは軍事面での交流であり、閉鎖的な中国としてはめずらしくよく付き合っており、そのレベルと頻度はロシアとの関係を除けば随一ではないかと思われる。イスラエルは、以前台湾との関係が緊密であったが、最近は手控えている。
ただし、パレスチナ問題については、中国はイスラエルを非難する決議に賛成を続けており、ヨルダン川西岸へのイスラエルの入植を非難する決議にも賛成している。国連がパレスチナにオブザーバーの資格を認めた際には賛成した。
中国は、2014年の6月、パレスチナの統一国家を承認した。中国が特使を派遣したのはこの関係であろう。
米国にとってイスラエルとの関係は他の国には見られない特殊性があるが、パレスチナ問題については米国こそが和解に貢献できるというという自負は最近の状況にかんがみるとしぼみがちかもしれない。それでもほかの国が米国に代わって中東和平で双方の仲を取り持つようなことは考えられない。しかし、今のような状況を続くと中国がある日パレスチナ和平の仲介者として出てくるかもしれない。
2014.07.20
第1に、事実関係の究明である。マレーシア機を撃墜したのはロシア製のミサイル「ブク」(S11)、その操作は高度な技術が必要、ミサイルはウクライナ領内から発射された、「ブク」がウクライナからロシア領へ運び出された、ロシアはそれを否定した、など基本的なことについて事実確認が必要であるが、これがスムーズに運ぶか。
墜落現場での調査が妨害なく行われるか。すでに、OSCE(欧州安全保障協力機構)の調査団が現地入りしたが、親ロシア派の兵士に止められ、退去せざるをえなかった。兵士は遺体の収容・移動を始めている。ウクライナ政府はハリコフに遺体の安置のためセンターを設置し、列車で300キロ移送する計画である。このセンターは受け入れも行なう。これらのことを含め現地での緊急措置と調査のために必要な現状の保存をどうするか。ウクライナ政府、OSCE、EUなどは目下対応を協議しているだろうが、どうなるか。
ロシアは国際的に批判的な目で見られている。今回の撃墜事件以前からロシアは親ロシア派に有形・無形の支援をしており、それをやめるべきだという圧力を受けていた。米欧とロシアの間には政治的な要素、白黒で判定できない要素もあろうが、ロシアが対応を迫られることが多いのは否定できない。ロシアは10項目の質問状をウクライナに出したそうだが、それは物事を進めるうえで有効か分からない。プーチン大統領は事件後対話の再開を呼びかけたそうだが、対話はウクライナ政府が呼びかけ、親ロシア派から対応がないままになっているのではないか。このような経緯はともかく、ロシアの言うように対話を再開するのも一案かもしれないが、その後の展開はどうなるか分からない。
ロシアが親ロシア派の扱いに手を焼いている可能性もあるが、「ロシアは公正な立場、親ロシア派は血縁関係を頼りにわがままを言い放題」という可能性は低い。ロシアはやはり力に頼って紛争を有利に導こうとする傾向が強いのではないか。ウクライナの国境付近にロシア軍を展開させていたことに関しても、国家の内部でどこに軍を置こうと主権の問題であり、外国からとやかく言われる筋合いのことではないという考えがロシアの内部にあった。エネルギーの代価を支払わないのはウクライナが悪いのは間違いないが、だからと言ってそれを止めてしまうのは人道上の観点からも問題である。
ロシアに対する風当たりは確実に強くなっている。米欧は制裁を強化する方針だし、11月にオーストラリアで開催予定のG20にも予定を変えて招待すべきでないという声が上がっている。このような国際社会の流れをロシアはどのように読み、どのように対応しようとしているのか。まさか冷戦時代と同じように、西側と対抗するのに力に頼るのが上策と考えているとは思いたくないが、ロシアから出てくる反応は、根拠を示せないままウクライナや西側を非難することが多いのではないか。
中国はウクライナ問題ではロシアと立場を異にしているが、それでもロシアをできる限り応援しようとしている。中国もまた力に頼る傾向があるが、政治的にはロシアよりはるかに巧妙である。経済的にも、ロシアのように資源依存傾向の強い経済でなく、多彩である。BRICsは最近開発銀行を設立することに合意した。その際も中国の積極的な振る舞いに比べ、ロシアの影は薄かったのではないか。
マレーシア機撃墜事件
6月17日、ウクライナ上空でマレーシア航空機が撃墜されたことについていくつか懸念されることがある。第1に、事実関係の究明である。マレーシア機を撃墜したのはロシア製のミサイル「ブク」(S11)、その操作は高度な技術が必要、ミサイルはウクライナ領内から発射された、「ブク」がウクライナからロシア領へ運び出された、ロシアはそれを否定した、など基本的なことについて事実確認が必要であるが、これがスムーズに運ぶか。
墜落現場での調査が妨害なく行われるか。すでに、OSCE(欧州安全保障協力機構)の調査団が現地入りしたが、親ロシア派の兵士に止められ、退去せざるをえなかった。兵士は遺体の収容・移動を始めている。ウクライナ政府はハリコフに遺体の安置のためセンターを設置し、列車で300キロ移送する計画である。このセンターは受け入れも行なう。これらのことを含め現地での緊急措置と調査のために必要な現状の保存をどうするか。ウクライナ政府、OSCE、EUなどは目下対応を協議しているだろうが、どうなるか。
ロシアは国際的に批判的な目で見られている。今回の撃墜事件以前からロシアは親ロシア派に有形・無形の支援をしており、それをやめるべきだという圧力を受けていた。米欧とロシアの間には政治的な要素、白黒で判定できない要素もあろうが、ロシアが対応を迫られることが多いのは否定できない。ロシアは10項目の質問状をウクライナに出したそうだが、それは物事を進めるうえで有効か分からない。プーチン大統領は事件後対話の再開を呼びかけたそうだが、対話はウクライナ政府が呼びかけ、親ロシア派から対応がないままになっているのではないか。このような経緯はともかく、ロシアの言うように対話を再開するのも一案かもしれないが、その後の展開はどうなるか分からない。
ロシアが親ロシア派の扱いに手を焼いている可能性もあるが、「ロシアは公正な立場、親ロシア派は血縁関係を頼りにわがままを言い放題」という可能性は低い。ロシアはやはり力に頼って紛争を有利に導こうとする傾向が強いのではないか。ウクライナの国境付近にロシア軍を展開させていたことに関しても、国家の内部でどこに軍を置こうと主権の問題であり、外国からとやかく言われる筋合いのことではないという考えがロシアの内部にあった。エネルギーの代価を支払わないのはウクライナが悪いのは間違いないが、だからと言ってそれを止めてしまうのは人道上の観点からも問題である。
ロシアに対する風当たりは確実に強くなっている。米欧は制裁を強化する方針だし、11月にオーストラリアで開催予定のG20にも予定を変えて招待すべきでないという声が上がっている。このような国際社会の流れをロシアはどのように読み、どのように対応しようとしているのか。まさか冷戦時代と同じように、西側と対抗するのに力に頼るのが上策と考えているとは思いたくないが、ロシアから出てくる反応は、根拠を示せないままウクライナや西側を非難することが多いのではないか。
中国はウクライナ問題ではロシアと立場を異にしているが、それでもロシアをできる限り応援しようとしている。中国もまた力に頼る傾向があるが、政治的にはロシアよりはるかに巧妙である。経済的にも、ロシアのように資源依存傾向の強い経済でなく、多彩である。BRICsは最近開発銀行を設立することに合意した。その際も中国の積極的な振る舞いに比べ、ロシアの影は薄かったのではないか。
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