平和外交研究所

2014 - 平和外交研究所 - Page 27

2014.08.28

プーチン・ポロシェンコ会談

プーチン・ロシア大統領とポロシェンコ・ウクライナ大統領が8月26日、ベラルーシの首都ミンスクで会って握手し、言葉も交わした。今まで伝わってきているのはEUや他の国の代表もいた場所であったが、2人だけで会う可能性もあるという。ロシアからウクライナ領内の親ロシア派への武器・食料などの補給やロシアの落下傘部隊のウクライナ領内での拘束などを巡って高まっていたロシアとウクライナおよび欧米との緊張がこれで緩和されることが期待される。
プーチン大統領が「ウクライナで平和的な話し合いを進めなければ軍事行動だけでは解決しない」と発言したのは、ポロシェンコ大統領に親ロシア派の主張を聞いてやってくれと言ったように聞こえる。ロシアの大統領として当然であろう。問題はロシア領内からウクライナ領への介入が止められるかであり、そのことはロシアとして公式に認めたことはないし、また、今後も止めると言えないが、現実に今後も同様に続けられるのか、それとも抑制されるのか事態を見極めるしかない。
2つ、気になることがある。第1に、ロシアは立場が弱いのではないかと思われる。落下傘部隊についての「国境警備中に云々」を子供だましであり、これでロシアの立場はさらに悪化した。ロシアは米欧日の追加制裁に対して反発しているのは明らかであるが、具体的な対抗措置は嫌がらせのようなものである。ここから先は推測にすぎないが、プーチン大統領としても、親ロシア派とそれを後押しする軍部を無理やりに押さえつけるわけにもいかず、困っているのではないか。
一方、日本との関係では、ラブロフ外相が25日の記者会見で、この秋に予定されていた「プーチン大統領の訪日をウクライナ問題と関連づけていない」と発言した。これはどのような意図か。ロシアとしては、日本がロシアを支持するのは望みえないとしても、米欧と違った対応をすることを期待している。現実にはそれも日本はしないので不満なのであるが、日本がプーチン大統領の訪日を実現させたいことは利用できると考えている可能性がある。これは米国が警戒することであるのはもちろんである。日本はどう対応するのだろうか。

2014.08.27

イスラム国での中国の評判

約2ヵ月前のブログで、「最近、イスラム教徒の間には中国が敵だという声が強くなっているという指摘もある」と書いたが、この文章は遠慮し過ぎであった。香港の『鳳凰週刊』は8月9日、「ISIS、数年後に新疆ウイグルの占領を計画、中国を『復讐ランキング』首位に」と題した記事を掲載し、それを12日の新華社日本語版が転載している。
ISISは言わずと知れた「イスラム国」であり、イラク政府はもちろん米国にとっても頭の痛い問題となっている。英国出身の戦士が米国人記者を処刑し、その模様をインターネットに流すというおぞましい行為が行なわれているのもイスラム国である。
鳳凰テレビは日本ではフェニックス・テレビとして知られている。香港を拠点としているが、海外で中国の代弁をしっかりやっている。先日中国機が米軍機に異常接近したので米国防省の記者会見で米側が中国機による危険行為を指摘すると、同テレビの記者は逆に、米国は中国に対してスパイ行為をしているではないかと食って掛かったことがあった。前置きが長くなったが、『鳳凰週刊』はつぎのように記している。

「史上初のイスラム国家のテロ組織ではないものの、アフガンにイスラム国を実現させるというタリバンの目標に対し、ISISの目標はもっと壮大で、カリフの伝統を主張している。イスラム世界の歴史において、カリフはムハンマド・イブン=アブドゥッラーフの継承者。全世界のムスリムで首領として崇められている。
ISISは数年後に西アジア、北アフリカ、スペイン、中央アジア、インドから中国・新疆ウイグル自治区までを占領する計画を立てている。「中国、インド、パキスタン、ソマリア、アラビア半島、コーカサス、モロッコ、エジプト、イラク、インドネシア、アフガン、フィリピン、シーア派イラク、パキスタン、チュニジア、リビア、アルジェリア。東洋でも西洋でもムスリムの権利が強制的に剥奪されている。中央アフリカとミャンマーの苦難は氷山の一角。われわれは復讐しなければならない!」と表明、その筆頭に中国を挙げている。
バグダッドでの声明では何度も中国と新疆ウイグル自治区に言及し、中国政府の新疆政策を非難。中国のムスリムに対し、全世界のムスリムのように自分たちに忠誠を尽くすよう呼び掛けている。」

イスラム国は米軍の爆撃に激しく反発しているが、これを見ると、米国だけが突出してイスラム国の敵になっているのではなさそうである。

2014.08.26

習近平主席のモンゴル訪問

習近平主席が8月21~22日、中国の元首として11年ぶりにモンゴルを訪問した。数カ国の歴訪でなく、1カ国だけの訪問は韓国に次いで2番目だそうだ。どれほど意味があるか分からないが、中国の新聞ではそのように報道されている。習近平主席は訪問中エルベグドルジ大統領から公私にわたって歓待を受け、また「両国間で全面的戦略パートナーシップ関係を構築・発展させる共同宣言」に署名するなど中蒙間の友好増進がプレーアップされている。中国側が熱意を示すのは少数民族対策との関連もありそうである。

8月24日付の『多維新聞』(米国に本拠地があり、中国の国内新聞とはちがって政府の管理下にない)は次のようなコメントをしている。
「中国政府は、両国間の関係が全面的戦略パートナーシップに格上げされることになったことを強調しているが、善隣友好協力とか中国のインフラを利用すればよいというのは中国側から持ちかけたことであり、モンゴルは中国側の過剰な熱意に警戒している。」
「ボイス・オブ・ロシアによれば、2002年から2013年に両国間の貿易は3・24億ドルから60億ドル強に増加し、今や中国はモンゴルの対外貿易の51%を占めている。エルベグドルジ大統領は習近平主席の来訪の前に、モンゴルの安全の観点から一つの国がモンゴルの対外貿易に占める割合は3分の1を超えるべきでないと言っていた。北京もそのようなモンゴル側の懸念は知っていただろうが、それが新しい矛盾にはならないと思っていたのかもしれない。」
「モンゴル人の中国に対する警戒心は歴史的に形成されてきた。(中略)中国政府に近い学者のなかには、相対的なモンゴル歴史観を持つ者がいる。300年に近い元の支配の間に中華民族との一体化が進み、モンゴルは大中国の領域の端で繁栄・発展してきたとさえ言う者がいる。中蒙間の認識の違いは両国の指導者間の信頼関係を阻害したが、双方が経済面で協力するのを妨げなかった。時には石炭に関するトラブルのような問題が起きたことはあった。それは、2013年、モンゴルが中国铝业公司(中国アルミニウム)に対して返済を拒否し、それに対抗して中国側は石炭を購入しないとしたことである。」
「モンゴル訪問の前より、習近平主席は経済関係でモンゴルをひきつけることは非現実的であることを認識しており、そのため今後の両国間では政治的安定を図ることが重要と考え、エルベグドルジ大統領に対し、中国としては第1に政治的安定のためモンゴルと協力したく、第2に実務関係を進展させたいと述べたことにそのような姿勢が現れていたとする見方もある。」

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