平和外交研究所

4月, 2014 - 平和外交研究所 - Page 7

2014.04.07

イランの核交渉が順調に進んでいる?

イランと米英独仏中ロの6カ国による核問題に関する交渉が順調に進展している。昨年11月には「第1段階の合意」が成立しており、その履行も問題なく行なわれており、IAEA(国際原子力機関)はこの2月に、イランによる20%の高濃縮ウランの貯蔵量が昨年11月の196キロから161キロに減ったことを発表していた。
米国政府も今後のイランとの交渉について、予定通り7月20日の期限までに最終合意を達成できる見通しであると報道されている。
すべてはロハニ大統領が2013年8月に就任して、イランが国際社会と協力する姿勢を取るようになってから起こったことであり、前任のアフマドネジャド大統領との違いはそれほど大きかったとあらためて思わされるが、強硬策はアフマドネジャド大統領に限らなかったので、ロハニ大統領は稀に見る国際派ということなのであろう。
イランの核に関する交渉がかくも順調に進んでいることは誠に喜ばしいが、かつてはあまりにもトラブル続きで、米国や欧州諸国が繰り返し苦渋を飲まされてきた記憶があるだけに、正直に言って、これからも交渉が順調に進むのか、半信半疑のような気分を払拭できない。
しかも、最近のウクライナ問題に関してロシアが米欧諸国と鋭く対立し、G8ではロシアを除外することさえ話題になっただけに、ロシアを交えた交渉が順調であることには一種不思議な感じもあるが、そのような経緯や国際情勢にも関わらずイランの核交渉が進展しているのであり、その意義は大きい。
一方、米国はイスラエルとパレスチナの和平交渉が進まないことには非常に不満で、双方にあててではあるが、「米国が費やせる時間と努力には限界がある」とケリー国務長官が警告している。
パレスチナ問題にしてもイランの核問題にしても過去には複雑極まる経緯があっただけに、単純に割り切った見方をするべきでなく、時間をかけて今後の推移を見守る必要があるのは当然であるが、イランとの核交渉はそもそも事実上核武装をしているイスラエルのために困難になっていた面があり、イスラエルが変化していないのにイランの核交渉が進みだしたことの意味合いは大きい。また、イランとの核交渉はロシアとの協力の場でもある。
イランは米国にとってよい国になり、昔から米国が支えてきたイスラエルが問題国になっていると言うには早すぎるが、これまでの常識だけではとらえにくい面が生じてきているのかもしれない。

2014.04.05

周永康追及にブレーキか

前政治局常務委員の周永康に対する追及に関し、4月3日付の多維新聞(米国に本部がある中国語の新聞。中国の内政によく通じている)は3月13日付の香港紙South China Morning Postの記事を流している。この記事の要点は次のとおりである。
○全人代・政治協商会議の閉幕に際して李克強首相が行なった記者会見で、周永康に関する質問は行われなかった。
○記者会見に先立って、参加する外国記者はその質問をしないよう警告されていた。もしその警告を無視すれば、ブラックリストに載せられ、以後質問できなくなると聞かされていたのである。また、当局によれば、経済に関する問題や改革について質問すれば、指名される機会が大きくなるということであった。
実際には15の質問が取り上げられたが、ほとんどすべてが対外関係と経済改革に関するものであった。
○周永康に関して李克強首相が記者会見で説明するというのは異例である。しかしながら、2年前には全く同じ状況の記者会見で、温家宝首相が薄熙来に関して異例の率直な攻撃を行なった。その翌日、薄熙来は政治局から追放され、その後裁判で終身刑を受けた。

多維新聞が約3週間もたってからSouth China Morning Postの記事を報道したのはなぜか。一つの可能性は、多維新聞として独自の情報源に確かめ、さらに一歩進んだ記事を書こうとしたが、それはうまくいかなかったということである。この多維新聞記事は、記者が事前に警告されていたことについて実質的には肯定に近いことを述べつつ、確認できないと一言追加している。

最近、周永康に対する追及が進んでいることが注目されている一方、あらたに李鵬前総理の身辺にも汚職追及の手が及んでいるという見方があり、多維新聞はそのことにも注目していた。今回の記事においても「油のトラ(周永康のこと)に関する風波がまだ収まらないうちに、電気のトラ(李鵬のこと)について波乱が起こっている」と述べている。

多維新聞は、習近平政権が李鵬に対する追及を始める可能性があることをかねてから示唆する報道を繰り返し行ってきたが、李鵬に問題があることを直接的に述べる一歩手前で止め、その娘などの言動に焦点を当てるだけにしているのは、李鵬があまりにも大物であることと、また、長老が、とくにトップレベルの摘発については、習近平政権にブレーキをかけている可能性があることの反映かもしれない。

2014.04.03

腐敗退治と権力闘争

成立して約1年半の間に、習近平政権は腐敗退治に実績を上げてきたと多維新聞(4月1日付)が総括しつつ、恐ろしげな警告も発している。示唆に富む記事である。

「これまでに、谷俊山(人民解放軍総後勤部前副部長)、劉漢(前四川省政治協商会議常務委員、富豪)、徐才厚(前政治局委員、中央軍事委員会副主席)が摘発され、周永康(前政治局常務委員)の摘発について結論が近くなっている。さらに、三峡ダムの董事長・总総経理が免職となったので、前総理・政治局常務委員の李鵬にまで追及が及ぶ可能性が浮上している。」

「習近平がここまでやれたのは、智勇を兼ね備えた王岐山の助力があったこともさることながら、習近平が権力を集中したことがうまく働いたからであった。」

「谷俊山、劉漢、薄熙来の3人は胡錦濤主席の在任中に逮捕され、習近平政権で実質的な審理が開始された。このことから、胡錦濤と習近平の間にはおおよその連携があったことが推測される。一方、徐才厚と周永康を挙げたのは習近平の手柄である。この2人は腐敗者リストの「大トラ」だが、さらに重要なことは、薄熙来と仲間で、かつてともに習近平の追い落としを謀ったことがある。」

「政治局常務委員を摘発すれば、また別の常務委員の摘発が可能となる。周永康を挙げれば、李鵬を追及することが可能となる。李鵬を摘発することは周永康より大きな政治的意味があり、もし1989年の天安門事件の公正な解決まで進めれば、大いに人心を獲得できるだろう。」

「習近平と王岐山の心中は明白である。この人治の傾向が強い中国で、多くの大衆は汚職官僚を恨み、心が晴れるのを望んでいる。ここで大ナタを振るって腐敗を退治すれば、統治を強化できる。権力の座にある人の統治を強化できる。王岐山の「現在の腐敗退治は標榜が主であり、根本的な問題解決のための時間を稼ぐことである」という言葉は意味深長である。」

「習近平と王岐山にとって危険がないわけではない。たとえば、軍隊内部の腐敗退治は軍内の利益集団に関わり、軍隊による政変が起こる可能性がある。また、ハイレベルにまで追及していくと、長老の不満を買う恐れがある。江沢民はすでにそのような声を上げて習近平の動きを阻止しようとしているとも言われる。」

「江沢民がまだ影響力を保持しているか、習近平の腐敗退治が観察点である。周永康は江沢民の側近であり、徐才厚は、2004年、江沢民が胡錦濤に軍事委員会主席の地位をしぶしぶ明け渡す際に副主席として送り込んだものであり、胡錦濤に対する監視と牽制が役目であった。」

「しかし、習近平にとっては年齢が強みであり、江沢民も李鵬もすでに80歳を越しており、年齢には勝てない。」

「習近平がこれからどうのように行動しようと、二つのことを明言できる。もし、腐敗退治を徹底的にやり抜くことができなければ、習近平の威信は傷つき、後に災いが残るだろう。もし一種の運動のように腐敗退治を行ない、「人治」を維持するならば、つまり、政治体制改革を実行しなければ、習近平の任期が終了した後、必ず報復されるだろう。党内の保守派、強硬派、極左および利益集団からの報復である。」

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