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2021.11.12

中国共産党における新たな歴史決議の採択

 中国共産党の6中全会(中央委員会第6回全体会議、5年に1回の党大会に次ぐ重要会議)において、11月11日、40年ぶりに新たな歴史決議、「党の100年奮闘の重大な成果と歴史的経験に関する決議」が採択された。全文が発表されるにはあと数日(?)かかるとみられるので、現段階では新華社などの報道に依拠するほかないが、とりあえずの感触は次の通りである。

 習近平総書記の権威を非常に高めたことは事前の予想通りであった。具体的には毛沢東、鄧小平に次ぐ位置づけをし、習氏を「新時代」の指導者と呼び、「マルクスはあらゆる時代に大人物が必要だと指摘した。習総書記は長年の課題を解決し、大事を成した」、「歴史の流れに乗る核心の人物であることは間違いない」と礼賛し、「経験豊富な船長」と持ち上げた。来年に開催される党大会において習氏の総書記としての地位が改めて確認されることがほぼ確実になった。

 習近平氏は2012年に共産党の総書記となって以来、反腐敗運動によって政敵ないし問題人物を排除し、メディアや民主化勢力に対し管理統制を強化し、また党内の後継者候補たち(政治局員)に対しては、18年から「報告制度」を始め、水も漏らさぬ管理指導を実施してきた。また習氏はことあるごとに「党の権威を高めよう」と呼び掛けてきた。実績は十分である。

 しかし、今回の歴史決議は、習近平氏の独裁体制確立の観点からのみ見るべきでない。これまで歴史決議は2回とも、過去の総括を行い、かつそうすることによりその後の大方針を示してきた。第1回は、日本軍および国民党との戦争で勝利したことを背景に党内事情を総括し、中華人民共和国の建設にまい進するという方向が示された。また第2回の歴史決議においては、文化大革命の混乱を終結させることによりその後の「改革開放」の方針が示された。いずれの決議においても、過去を総括することにより未来の方向が明確に示された。

 今回の歴史決議は過去をいかに総括し、未来につなげていくかが前2回ほど明確でない。次のような事情があるからだ。

 最大の問題は、今後、経済成長が鈍化せざるを得なくなり、安定した成長、共同富裕化、人口減少への対処などが必要となるなど、明るい未来像を打ち出しにくい状況にあることだ。その他、台湾の統一についても明るい中国として望ましい展望を示せない。宇宙開発などは好調であるが、全体の雰囲気を変えるほどの問題ではない。

 にもかかわらず今回あえて歴史決議を行ったのは、中国共産党の一党独裁体制をそのような展望の中であらためて揺るぎのないものにしておくことが必要と判断したためではないか。中国共産党は過去100年の間に、特に文化革命以後、共産主義の理想から離れて巨大な権力を持つ官僚機構と化しているのが現状であり、低成長下で、下手をすれば、その問題が表面化し、共産党独裁は動揺するかもしれないという危機感があるからだ。

要するに、今回の決議は、変質した共産党であるが、今後も長きにわたってその独裁体制で行くしかないことと、習近平氏はその困難なかじ取りに最適の人物だという認識を同時に打ち出したのではないかと考える。

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