平和外交研究所

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2014.08.29

イスラエル・ハマスの無期限停戦

イスラエルとハマスが長期の停戦に合意したそうだが、両者が直接会って合意したのではないのでわかりにくい。諸報道を合わせてみると基本的な事実関係は次のようである。

○26日、双方は停戦を受け入れると発表した。それまでエジプトが双方に働きかけていたのに応じたものであった。
○今回の停戦合意には、従来のように期限がついていない。「長期停戦」とも言われるが、「無期限停戦」ということらしい。
○双方は交渉に戻ることとなった。ただし、これは発表には含まれておらず、エジプトの政府官員が米国のメディアに語ったことである。
○双方の発表には基本的な問題点の取り扱い争いは含まれていない、つまりイスラエル・ハマス間の関係には言及していないが、イスラエルはガザの封鎖を緩和し、援助物質の国境通過(ガザへの)制限を緩和し、漁業区域を沿岸から6マイルにまで拡大することに合意した。これもエジプトの官員が言っていることである。
○停戦の条件は1か月前と同じで、その時イスラエルは受け入れ、ハマスは拒否した。ハマスにとっては態度を和らげたことになる。なぜ今回合意したのかについては種々解釈されており、ハマスの指導者がイスラエルによって暗殺されるのを恐れたからだという解釈もある。
○今回の停戦について米国はエジプトの努力をたたえているが、米国自身の仲介者としての力は落ちている。ケリー長官はイスラエルに10回以上行って試みたが、成功しなかった。オバマ大統領は就任直後から中東和平の実現を重要視していたが、期待を裏切る結果になっている。
○エジプトでは2013年夏、親ハマスの政権がクーデタで打倒され、今年の6月に反イスラムのシーシ政権が誕生した。

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2014.08.28

プーチン・ポロシェンコ会談

プーチン・ロシア大統領とポロシェンコ・ウクライナ大統領が8月26日、ベラルーシの首都ミンスクで会って握手し、言葉も交わした。今まで伝わってきているのはEUや他の国の代表もいた場所であったが、2人だけで会う可能性もあるという。ロシアからウクライナ領内の親ロシア派への武器・食料などの補給やロシアの落下傘部隊のウクライナ領内での拘束などを巡って高まっていたロシアとウクライナおよび欧米との緊張がこれで緩和されることが期待される。
プーチン大統領が「ウクライナで平和的な話し合いを進めなければ軍事行動だけでは解決しない」と発言したのは、ポロシェンコ大統領に親ロシア派の主張を聞いてやってくれと言ったように聞こえる。ロシアの大統領として当然であろう。問題はロシア領内からウクライナ領への介入が止められるかであり、そのことはロシアとして公式に認めたことはないし、また、今後も止めると言えないが、現実に今後も同様に続けられるのか、それとも抑制されるのか事態を見極めるしかない。
2つ、気になることがある。第1に、ロシアは立場が弱いのではないかと思われる。落下傘部隊についての「国境警備中に云々」を子供だましであり、これでロシアの立場はさらに悪化した。ロシアは米欧日の追加制裁に対して反発しているのは明らかであるが、具体的な対抗措置は嫌がらせのようなものである。ここから先は推測にすぎないが、プーチン大統領としても、親ロシア派とそれを後押しする軍部を無理やりに押さえつけるわけにもいかず、困っているのではないか。
一方、日本との関係では、ラブロフ外相が25日の記者会見で、この秋に予定されていた「プーチン大統領の訪日をウクライナ問題と関連づけていない」と発言した。これはどのような意図か。ロシアとしては、日本がロシアを支持するのは望みえないとしても、米欧と違った対応をすることを期待している。現実にはそれも日本はしないので不満なのであるが、日本がプーチン大統領の訪日を実現させたいことは利用できると考えている可能性がある。これは米国が警戒することであるのはもちろんである。日本はどう対応するのだろうか。

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2014.08.27

イスラム国での中国の評判

約2ヵ月前のブログで、「最近、イスラム教徒の間には中国が敵だという声が強くなっているという指摘もある」と書いたが、この文章は遠慮し過ぎであった。香港の『鳳凰週刊』は8月9日、「ISIS、数年後に新疆ウイグルの占領を計画、中国を『復讐ランキング』首位に」と題した記事を掲載し、それを12日の新華社日本語版が転載している。
ISISは言わずと知れた「イスラム国」であり、イラク政府はもちろん米国にとっても頭の痛い問題となっている。英国出身の戦士が米国人記者を処刑し、その模様をインターネットに流すというおぞましい行為が行なわれているのもイスラム国である。
鳳凰テレビは日本ではフェニックス・テレビとして知られている。香港を拠点としているが、海外で中国の代弁をしっかりやっている。先日中国機が米軍機に異常接近したので米国防省の記者会見で米側が中国機による危険行為を指摘すると、同テレビの記者は逆に、米国は中国に対してスパイ行為をしているではないかと食って掛かったことがあった。前置きが長くなったが、『鳳凰週刊』はつぎのように記している。

「史上初のイスラム国家のテロ組織ではないものの、アフガンにイスラム国を実現させるというタリバンの目標に対し、ISISの目標はもっと壮大で、カリフの伝統を主張している。イスラム世界の歴史において、カリフはムハンマド・イブン=アブドゥッラーフの継承者。全世界のムスリムで首領として崇められている。
ISISは数年後に西アジア、北アフリカ、スペイン、中央アジア、インドから中国・新疆ウイグル自治区までを占領する計画を立てている。「中国、インド、パキスタン、ソマリア、アラビア半島、コーカサス、モロッコ、エジプト、イラク、インドネシア、アフガン、フィリピン、シーア派イラク、パキスタン、チュニジア、リビア、アルジェリア。東洋でも西洋でもムスリムの権利が強制的に剥奪されている。中央アフリカとミャンマーの苦難は氷山の一角。われわれは復讐しなければならない!」と表明、その筆頭に中国を挙げている。
バグダッドでの声明では何度も中国と新疆ウイグル自治区に言及し、中国政府の新疆政策を非難。中国のムスリムに対し、全世界のムスリムのように自分たちに忠誠を尽くすよう呼び掛けている。」

イスラム国は米軍の爆撃に激しく反発しているが、これを見ると、米国だけが突出してイスラム国の敵になっているのではなさそうである。

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