カレント
2015.10.05
○シリア内戦はいつ、なぜ始まったか。
2011年、チュニジアのジャスミン革命の影響を受けシリアで騒乱が起こったのが始まりであった。
○シリアの反政府勢力とは何か。
自由シリア軍とアル・カーイダ系反政府勢力(アル・ヌスラ戦線)がある。
自由シリア軍は、2011年、騒乱のなかで政府軍の一部が離反し結成した。米欧やトルコの支持を受けている。しかし、シリア国内では自由シリア軍への支持は広がらない。理由の一つは、シリア国民の多くがイスラエルを後押ししている米国から支援を受けるのを嫌っているためだ。イスラエルはレバノンへの武器輸送を防ぐためシリア国内を攻撃している。
アル・ヌスラ戦線はアル・カーイダ系の反政府組織。自由シリア軍とは敵対しており、シリア政府軍と三つ巴の関係にある。反政府勢力の実態は複雑だ。米国の武器が流れている可能性がある。もともと反米。自称ISの下部組織。
宗教的には、自由シリア軍もアル・ヌスラ戦線もスンニ派が主。アサドはシーア派の一派であるアラウィ教。シーア派のイランはアサドを支援している。ISもスンニ派。
○ISの発足。
2014年6月末、過激派組織「イスラム国」がイラク北西部からシリア東部にかけての一帯でイスラム国家の樹立を宣言。2015年5月にはシリア中部の要衝であるパルミラを制圧。
○米国はどのように関わっているか。
オバマ政権は自由シリア軍を支援し、武器供与もしている。反政府勢力には反米のアル・カーイダ系も含まれているので慎重な姿勢も維持していた。しかし、米国内の強硬派(共和党が多い)は、オバマ政権の姿勢を弱腰と批判し、地上軍を投入すべきだと主張。医療改革(オバマケア)とならぶオバマ批判となった。オバマ政権の弱点とみなされてきたが、最近のロシアによる空爆開始で強硬派の矛先はロシアに向かう可能性がある。
2014年9月22日、シリア内ISに対し、サウジアラビアなど中東5カ国とともに空爆を開始。国連決議はなかったが、多数の国が支持を表明した。
2015年7月、トルコはISを攻撃するため米軍の戦闘機などがトルコ領内の基地を使用することを認めた。
○ロシアのIS空爆
ロシアは2014年8月末から戦闘機をシリア内のラタキア空軍基地に配備。9月30日、ロシアはISへの空爆を開始。当初の発表では攻撃対象はISだけだったが、1日には、イドリブ県内のアル・カーイダ派の拠点を空爆(シリアの治安当局者の談。AFP)。ラブロフ外相もそれを認める発言をNYで行なった。この場所はISの支配地域に含まれておらず、ロシアの真の目標はISでなく、反アサド勢力だとの見方が強まった。
イランがロシアの行動を直ちに支持(1日、アフハム外務省報道官)したのは、従来からのアサド支持からして当然か。
米国はロシアがIS以外の過激派拠点を攻撃していると非難している。現状ではシリア領内で米ロの戦闘機がぶつかる危険もある。
米政府は、シリア政府と反政府勢力が米ロの代理戦争に陥らないよう、ロシアと話し合う姿勢も見せている(国連安保理の内外で)。
ロシアの行動の背景には、ウクライナ問題で西側諸国がロシアに対して制裁措置を取ったことがある。ロシアはウクライナの親ロシア派への軍事支援(を黙認すること)を継続せざるをえないが、それを公開の場で米国などと論争するほど立場は強くなく、米欧から批判され続けている。ウクライナ問題の関係ではロシアとして取りうる選択肢は少ないが、仕返しをする機会をうかがっていた?
ロシアはシリアのタルトスに海軍補給基地を置いており、アサド政権を支持する必要がある。
シリア政府がISと戦っていることはロシアにとって好都合。シリア政府を支援すると国際的に批判されるが、ISに対する空爆であれば各国の支持が得られやすい。だからアサド政権支持を目立たせないようにできるという計算があるのか? そうであれば、ロシアはもともとアサド支援と伝統的に築き上げてきたシリアにおける権益の維持が目的。
シリアIS問題と米ロ
(ブリーフィング用資料)○シリア内戦はいつ、なぜ始まったか。
2011年、チュニジアのジャスミン革命の影響を受けシリアで騒乱が起こったのが始まりであった。
○シリアの反政府勢力とは何か。
自由シリア軍とアル・カーイダ系反政府勢力(アル・ヌスラ戦線)がある。
自由シリア軍は、2011年、騒乱のなかで政府軍の一部が離反し結成した。米欧やトルコの支持を受けている。しかし、シリア国内では自由シリア軍への支持は広がらない。理由の一つは、シリア国民の多くがイスラエルを後押ししている米国から支援を受けるのを嫌っているためだ。イスラエルはレバノンへの武器輸送を防ぐためシリア国内を攻撃している。
アル・ヌスラ戦線はアル・カーイダ系の反政府組織。自由シリア軍とは敵対しており、シリア政府軍と三つ巴の関係にある。反政府勢力の実態は複雑だ。米国の武器が流れている可能性がある。もともと反米。自称ISの下部組織。
宗教的には、自由シリア軍もアル・ヌスラ戦線もスンニ派が主。アサドはシーア派の一派であるアラウィ教。シーア派のイランはアサドを支援している。ISもスンニ派。
○ISの発足。
2014年6月末、過激派組織「イスラム国」がイラク北西部からシリア東部にかけての一帯でイスラム国家の樹立を宣言。2015年5月にはシリア中部の要衝であるパルミラを制圧。
○米国はどのように関わっているか。
オバマ政権は自由シリア軍を支援し、武器供与もしている。反政府勢力には反米のアル・カーイダ系も含まれているので慎重な姿勢も維持していた。しかし、米国内の強硬派(共和党が多い)は、オバマ政権の姿勢を弱腰と批判し、地上軍を投入すべきだと主張。医療改革(オバマケア)とならぶオバマ批判となった。オバマ政権の弱点とみなされてきたが、最近のロシアによる空爆開始で強硬派の矛先はロシアに向かう可能性がある。
2014年9月22日、シリア内ISに対し、サウジアラビアなど中東5カ国とともに空爆を開始。国連決議はなかったが、多数の国が支持を表明した。
2015年7月、トルコはISを攻撃するため米軍の戦闘機などがトルコ領内の基地を使用することを認めた。
○ロシアのIS空爆
ロシアは2014年8月末から戦闘機をシリア内のラタキア空軍基地に配備。9月30日、ロシアはISへの空爆を開始。当初の発表では攻撃対象はISだけだったが、1日には、イドリブ県内のアル・カーイダ派の拠点を空爆(シリアの治安当局者の談。AFP)。ラブロフ外相もそれを認める発言をNYで行なった。この場所はISの支配地域に含まれておらず、ロシアの真の目標はISでなく、反アサド勢力だとの見方が強まった。
イランがロシアの行動を直ちに支持(1日、アフハム外務省報道官)したのは、従来からのアサド支持からして当然か。
米国はロシアがIS以外の過激派拠点を攻撃していると非難している。現状ではシリア領内で米ロの戦闘機がぶつかる危険もある。
米政府は、シリア政府と反政府勢力が米ロの代理戦争に陥らないよう、ロシアと話し合う姿勢も見せている(国連安保理の内外で)。
ロシアの行動の背景には、ウクライナ問題で西側諸国がロシアに対して制裁措置を取ったことがある。ロシアはウクライナの親ロシア派への軍事支援(を黙認すること)を継続せざるをえないが、それを公開の場で米国などと論争するほど立場は強くなく、米欧から批判され続けている。ウクライナ問題の関係ではロシアとして取りうる選択肢は少ないが、仕返しをする機会をうかがっていた?
ロシアはシリアのタルトスに海軍補給基地を置いており、アサド政権を支持する必要がある。
シリア政府がISと戦っていることはロシアにとって好都合。シリア政府を支援すると国際的に批判されるが、ISに対する空爆であれば各国の支持が得られやすい。だからアサド政権支持を目立たせないようにできるという計算があるのか? そうであれば、ロシアはもともとアサド支援と伝統的に築き上げてきたシリアにおける権益の維持が目的。
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