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2019.05.04
再検討会議の開催期間は準備委員会の約2倍の長さである。再検討会議にはオブザーバーとしてNGOも多数参加する。
再検討会議は1970年の条約発効以来、一度も欠かさず5年ごとに開催されてきたが、会議の結論が出せたのはその半分にも満たなかった。大きな会議であればあるほど人も資金もかかるのだが、会議を廃止するのは核兵器の拡散を防止する観点からもっとひどい結果になると考えられている。NPTで激しく対立している核兵器国と非核兵器国もこの点では考えが一致している。
NPTには成立当初からいくつか矛盾があった。最大の矛盾は、一部の国、すなわち米国、ロシア、英国、フランスおよび中国の5か国は核兵器の保有が認められているが、それ以外の国には認められていないことであり、NPTは不平等条約である。
なぜそんな条約を作ったのか。もともと核兵器を世界からなくしてしまおうという交渉が始められたが、どうしてもそれは成立しなかった。かといって、各国の核開発を野放しにするとあまりにも危険なので、次善の策として核兵器の拡散を禁止することとしたのであった。核兵器の完全廃棄を理想とすれば、拡散の防止は「次善の策」どころか「三善の策」くらいかもしれないが、ともかくそれしか現実的な方法はなかったのである。
NPTには拡散防止の効果があったと見られている。北朝鮮以外、NPTの加盟国で核兵器を開発した国はない。
北朝鮮の場合も条約違反とは言い切れない面がある。北朝鮮は、NPTに入っていたが、1993年に最初の脱退宣言、2003年に確定的な宣言をしていたからである。ただし、加盟国の中には北朝鮮の脱退宣言を認めざるをえないとする国とあくまで認めない国があり、我が国は認めない国の一つであるが、米国は認めている。
イスラエル、インド、パキスタンは核兵器を保有しているが、条約違反の問題はない。最初からNPTに参加していないからである。
南アフリカ共和国はかつて一時期核兵器を開発・保有していたが、のちに放棄してからNPTに参加したので、やはり条約上の問題は起きなかった。
肝心の核兵器の廃絶問題については、NPTはあきらめたのではなく、核兵器保有国に廃棄を義務付けた。しかし、期限は記載されておらず、また、条約の実際の文言は違っている(複雑)が、完全な世界政府が成立が条件になっていると解する余地がある。そのため、核兵器国による廃棄の努力は足りないとする国と、現実的には最大限実行してきたという国の意見が激しく対立する結果になっている。
そのうえ、最近の状況はさらに悪化してきた。トランプ政権はオバマ大統領時代と違って核戦力の増強に熱心であり、2018年2月に発表した核戦略見直し(NPR)では、新たに小型核弾頭を開発する方針を表明した。小型核は一種の「使いやすさ」があるだけに危険性が高いと見られてきた問題の兵器である。また、米国は今年2月、米ロの中距離核戦力(INF)全廃条約から離脱を通告した。
一方、ロシアのプーチン大統領はトランプ政権の成立以前から核兵器の必要性、有用性を肯定的に見る立場を何回も表明している。
国連軍縮部門トップの中満泉・事務次長は世界の核軍縮状況の悪化を懸念し、今回の会合で、「残念なことに(NPTの)安定性、信頼性を促す対話は次第になくなってきた。国際的な安全保障環境における昨今の動きは、冷戦後に確立された取り決めを脅かしている」と訴えた。
今回の準備委員会は第3回目であり、過去2回とも対立状況は解けなかった。率直に言って、今回の準備委員会で「勧告」が採択される公算は高くない。次回再検討会議まで1年しかないが、日本政府には現実的でありながら、核軍縮を前進させる方策を何とかしてひねり出してもらいたい。
核不拡散条約(NPT)再検討会議の準備委員会
2020年、NPTの再検討会議が開催される。そのための準備委員会が4月29日、米ニューヨークの国連本部で始まった。準備委員会といっても191の国と地域が参加し、5月10日まで2週間かけて開催される大会議である。再検討会議の開催期間は準備委員会の約2倍の長さである。再検討会議にはオブザーバーとしてNGOも多数参加する。
再検討会議は1970年の条約発効以来、一度も欠かさず5年ごとに開催されてきたが、会議の結論が出せたのはその半分にも満たなかった。大きな会議であればあるほど人も資金もかかるのだが、会議を廃止するのは核兵器の拡散を防止する観点からもっとひどい結果になると考えられている。NPTで激しく対立している核兵器国と非核兵器国もこの点では考えが一致している。
NPTには成立当初からいくつか矛盾があった。最大の矛盾は、一部の国、すなわち米国、ロシア、英国、フランスおよび中国の5か国は核兵器の保有が認められているが、それ以外の国には認められていないことであり、NPTは不平等条約である。
なぜそんな条約を作ったのか。もともと核兵器を世界からなくしてしまおうという交渉が始められたが、どうしてもそれは成立しなかった。かといって、各国の核開発を野放しにするとあまりにも危険なので、次善の策として核兵器の拡散を禁止することとしたのであった。核兵器の完全廃棄を理想とすれば、拡散の防止は「次善の策」どころか「三善の策」くらいかもしれないが、ともかくそれしか現実的な方法はなかったのである。
NPTには拡散防止の効果があったと見られている。北朝鮮以外、NPTの加盟国で核兵器を開発した国はない。
北朝鮮の場合も条約違反とは言い切れない面がある。北朝鮮は、NPTに入っていたが、1993年に最初の脱退宣言、2003年に確定的な宣言をしていたからである。ただし、加盟国の中には北朝鮮の脱退宣言を認めざるをえないとする国とあくまで認めない国があり、我が国は認めない国の一つであるが、米国は認めている。
イスラエル、インド、パキスタンは核兵器を保有しているが、条約違反の問題はない。最初からNPTに参加していないからである。
南アフリカ共和国はかつて一時期核兵器を開発・保有していたが、のちに放棄してからNPTに参加したので、やはり条約上の問題は起きなかった。
肝心の核兵器の廃絶問題については、NPTはあきらめたのではなく、核兵器保有国に廃棄を義務付けた。しかし、期限は記載されておらず、また、条約の実際の文言は違っている(複雑)が、完全な世界政府が成立が条件になっていると解する余地がある。そのため、核兵器国による廃棄の努力は足りないとする国と、現実的には最大限実行してきたという国の意見が激しく対立する結果になっている。
そのうえ、最近の状況はさらに悪化してきた。トランプ政権はオバマ大統領時代と違って核戦力の増強に熱心であり、2018年2月に発表した核戦略見直し(NPR)では、新たに小型核弾頭を開発する方針を表明した。小型核は一種の「使いやすさ」があるだけに危険性が高いと見られてきた問題の兵器である。また、米国は今年2月、米ロの中距離核戦力(INF)全廃条約から離脱を通告した。
一方、ロシアのプーチン大統領はトランプ政権の成立以前から核兵器の必要性、有用性を肯定的に見る立場を何回も表明している。
国連軍縮部門トップの中満泉・事務次長は世界の核軍縮状況の悪化を懸念し、今回の会合で、「残念なことに(NPTの)安定性、信頼性を促す対話は次第になくなってきた。国際的な安全保障環境における昨今の動きは、冷戦後に確立された取り決めを脅かしている」と訴えた。
今回の準備委員会は第3回目であり、過去2回とも対立状況は解けなかった。率直に言って、今回の準備委員会で「勧告」が採択される公算は高くない。次回再検討会議まで1年しかないが、日本政府には現実的でありながら、核軍縮を前進させる方策を何とかしてひねり出してもらいたい。
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