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2017.03.14

(短評)自衛隊の南スーダンからの撤退

 3月10日、日本政府は南スーダンのPKOに派遣している自衛隊部隊を撤収すると発表した。その理由については、このPKOへの派遣期間が5年になること、日本の部隊が担当している施設整備が一定の区切りをつけられること、幹線道路の整備に貢献してきたことなどをあげているが、かねてから問題になっている現地の状況、とくにPKOの条件である和平・停戦が崩れているのではないかという問題、国会で議論されている言葉では、「戦闘」が行われているのではないかという問題については何も言及しなかった。

 「戦闘」があると判断すべきか否かについては、現地の部隊では「戦闘」が行われているという認識であり、それを記した日誌があるが、政府はごく最近に至るまでそのことを説明しなかった、つまり、事実と異なる説明をしていた。このいきさつに関し国会では激しい議論が行われているが、どのような形で収拾されるのか、よくわからない。
 ただ、一国民としても考えておくべきことがある。南スーダンの状況を「戦闘」と呼ぶか、呼ぶべきでないかはともかくとして、自衛隊の部隊が危険を覚える状況にあったことは明確になっている。しかし、国連は、だからと言ってPKO活動を止めるとはなかなか言わない、平和維持活動の要件が失われたことをなかなか認めようとしないのが現実である。それには国連としての立場も悩みもあるが、PKO活動を重視する日本として独自の判断があってよいと思う。つまり、国連の基準では停戦が崩れていない場合でも日本としては別の判断を主張してよいと思う。

 自衛隊を撤収するに際しても、勝手に引き上げるのではなく、PKOの最高司令官である国連事務総長の許可を得て引き上げるのだが、それは比較的技術的なことであり、日本が撤収を決めれば司令官たる国連事務総長が拒否することはない。

 問題は、現地の状況が南スーダンのように微妙な情勢にあって判断が分かれる場合だ。PKOは本来和平・停戦が成立している場合に行われる活動であり、だからこそ日本としてこれに参加しても憲法に触れることはない。憲法は国際紛争に日本が巻き込まれることを禁止しているからである。
 しかし、日本政府は、憲法の下で「自衛」の行動を認めることになったいきさつから、自衛隊は外国へ派遣できない(自衛でなくなるから)と考え、PKOについても非常に限定的に認めてきた(外国へ派遣するので)。このような解釈は政府として変更は難しいようだが、しかし、PKOについては憲法は禁止していないことを正面から認めるべきだと思う。

 そのような理論構成をすべきか否かを検討するのに、南スーダンでのPKOへの自衛隊派遣は重要な事例である。今後も日本はPKOへの参加を求められるだろうし、積極的に参加すべきだ。そのためにもこの際問題点を徹底的に洗い出すべきだ。
 そのような観点からみると、今回の政府の発表は物足りない。問題となりうること、国会で批判される恐れのあることはいっさい口をつぐんでいるのではないか。将来の日本の国際貢献のためにも、政府には工夫して論点を国民に分かりやすい形で説明してほしい。

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