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2016.11.21

(短評)トランプ新政権はアジアインフラ投資銀行に加盟する?

 11月15日、新華社は中国外交部の耿爽(Geng Shuang)スポークスマンが同日、米国がアジアインフラ投資銀行(AIIB)に参加するのはよいことだと述べたと伝えた。
 次期大統領のトランプ氏の安全保障担当の補佐人であるジェームズ・ウールゼイ氏が、米国がAIIBに参加しないのは戦略的な誤りだと発言したことに関してのコメントだった。

 トランプ新政権がはたしてAIIBに参加するか、なお疑問が残る。AIIBにおいては中国の出資額・議決権がダントツに多く、出資比率は中国が約30%であり、2位のインド(8%台)、3位のロシア(6%台)を大きく引き離している。各国の議決権は出資比率に基づいて算出され、中国が約4分の1を確保している。同銀行において重要事項を決定するには75%の賛成が必要なので、中国がノーと言えば他の国がすべて賛成しても成立しない。つまり、中国だけが拒否権を持つということだ。米国が参加してもこれに比べマイナーな加盟国となるほかない。このことは、AIIBの準備過程で話題になり、仮定の問題として考えられたことがあり、それ以来AIIBは変わっていない。米国がそのような地位に甘んじるとは思えない。
 米国は日本とともにアジア開発銀行の主要メンバーであり、さらにAIIBに加わる意義は何か、という点でも疑問だ。
 さらに、AIIBは中国の「一帯一路」構想、すなわち陸上および海上の新シルクロード建設構想の実現を目的としている。この構想は国際的に決定されたものでなく、中国の国家構想だ。これに米国が参加するようでは、トランプ氏が力説した「偉大な米国」の復活など夢物語であろう。

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