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2016.09.06

(短評)G20杭州サミット

 9月4~5日、中国の杭州市でG20首脳会議が開催された。参加国の数は多い。また、この会議の前後に、あるいは並行して2国間の会議が開かれるので全体の状況はかなり複雑だが、一つ印象に残ったことを記しておく。

 中国は国家の威信にかけ盛大なイベントに仕立て上げた。立派な会議場を新築したのもその表れだが、とくに開会式は素晴らしいものとした。杭州は昔から有名な景勝の地であり、開会式の舞台としてうってつけであるが、きれいなところばかりでない。大気汚染は深刻だし、周辺にはみすぼらしい民家もある。そこで、中国政府は付近の工場の操業を一時的に停止させ、大気をきれいにした。北京で国際会議が開催される場合に行われている対処方法だ。また、みすぼらしい住宅は強制的に撤去した。西湖を舞台にした開会式を演出したのは、北京オリンピックの演出で有名な映画監督、張芸謀であり、中国は世界の賓客にその力を見せつけるのに成功したようだ。

 もともと、G20は1999年、財務大臣・中央銀行総裁会議から始まった。1997年にアジアの金融危機が起こり、各国が共同して対処する必要があったためだ。2008年にはリーマンショックがきっかけとなり、G20の首脳会議が開催されるようになり、以後毎年開かれている。1年に2回開催されたこともある。今回の杭州サミットは第11回目だった。

 日本はサミットも財務大臣・中央銀行総裁会議もホストしたことがない。なぜそうなったか。詳しい事情をすべて承知しているわけではないが、日本はG7などの一員であることが影響しているかもしれない。
 実は、2008年、日本はG7(当時はG8)の議長国であり、それと関連付けてG20サミットを開催しようと試みたが、これは成立せず、結局米国が第1回のサミットを開催した。
 当時、もう一つの注目すべき状況があった。G20サミットは実務的に開催するのがよい、大々的な歓迎式典は必要でないと思われていたのだ。麻生首相(当時)は成田空港で開催すればよいという考えであったと後に国会で答弁している。
 この時の雰囲気と比べると、中国の杭州サミットは実に派手な演出となり、国家の威信にかけて開催するという性格が強くなった。G20サミットは今後どうなるか。杭州サミット式に盛大な演出をするのか、それとももっと実務的なものに戻すのか。ホスト国の考え次第だが、中国以上に派手なサミットはどの国もできないのではないかと思う。

 日本がこれまでサミットも、財務大臣・中央銀行総裁会議もホストしたことがないのは経緯のあることで、問題だと考える必要はないが、G7のメンバー国でG20サミットを開催したことがない国は、日本のほかドイツとイタリアしかいない。しかし、ドイツは2017年のG20サミットをホストすることとなった(その次はアルゼンチン)ので、残るはイタリアと日本だけとなる。
 会議でどのような議論が行われるか、各国は世界的な問題についてどのような貢献をするか、などは会議のホストとは関係ないことだが、今後日本として検討すべきことの一つだろう。

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