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2016.08.17

ロシア大統領府長官の交代-新任は日本通

 猪口孝新潟県立大学学長の書かれた次の一文は参考になるので、同学長の許可を得て掲載します。

「首相や大統領に一番近い人が日本語を話せる国はどこか。米国ではない。中国でもない。韓国も多分そうではない。ロシアがそうである。8月12日(金曜日)大統領府のトップの任命があった。アントン・ヴァイノである。

ソ連邦時代にエストニアで生まれ、モスクワ国際関係大学を卒業。エストニアはフィンランドと隣接し、言葉はフィンランド語ないしそれに近い。父親がエストニア共産党第一書記だったが、1989年の政変後ロシア連邦に移る。1989年以前、父親の勤め先のひとつがロシア大使館(狸穴)だった。アントン少年は幼少時過ごした六本木はなじみの土地であり、六本木の中学校を卒業している。当然、日本語はちゃんとできる。フィンランド語はそもそもウラル・アルタイ語系で日本語とも親近性がある。しかもバルト系の人には普通のことだが、英語、ドイツ語などいくつかが使える。

なぜこの時期にこのような人事が行われたか。わからない。前任者は大統領に最も信頼されていたとされるセルゲイ・イヴァノフである。交代儀式の折りにも大統領からの説明はない。ありうる説明としては大統領の訪日に関連したものがある。この秋である。

すでに鳩山一郎の秘書の子息であった故若宮啓文氏の手になる『北方領土問題の内幕』2016年に舞台裏がよく書かれている。河野一郎農水大臣はブルガーニン首相と日本語側の通訳なしで会談している。河野一郎が外務省嫌いだったことが関係しているのかもしれない。それに日本人はロシア語がなかなか上手になれる方が人口比でみて少ないような気がする。私も20歳前後数年かなり頑張ったのだが、その後全然使用しなかったためか、ロシア語の論文20ページ読もうとすると、決意を固めて集中して始めても予定時間の2時間で読めるどころか、2年間になるのではないかと恐怖が襲う。大体分かるのだが、日本語とロシア語は相性が悪いのではないか。アントン・ヴァイノは日本語が上手なはずである。けれども通訳は別にいるだろう。日本側が誰になるか。上手な方になってもらったらと思う。

アントン・ヴァイノの少し前に、国防大臣にセルゲイ・ショイグーが任命されている。ショイグーはトゥヴァの出身、シベリアのど真ん中で、モンゴルの西隣の自治共和国出身である。言語はいろいろできるようで日本語やトルコ語も入っている。趣味には刀収集、とりわけ日本刀の収集とある。国防大臣までもが、日本語ができる国がほかにあるでしょうか。米国はそうでない。中国もそうでない。韓国も多分そうでない。トゥヴァは最近ロシアの世論調査で驚かした。ロシア連邦はとても広いし、経済が最近不景気なせいか、しあわせと応える割合がすくないはずである。トゥヴァではなんと87%がとてもしあわせ、ないし、しあわせと答えているのだ。

最近人事二件だけをみてどうということもない。しかし、なにかがある気がする。秋の深まる頃、プーティンの訪日の際、この二人に注目したい。」

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