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2016.07.12

核不拡散をめぐるインド、中国および米国の関係

 核不拡散体制の一環として「原子力供給国グループ」(NSG、48カ国が参加)がある。インドが1974年に核爆発を行ったことが契機となり、核分裂性物質および原子力関係の資機材が核兵器の開発・製造に利用されることを防ぐためその輸出に関する条件について調整することを目的に1978年設置されたものだ。
 インドはこの核爆発、さらに1998年の核実験を経て核兵器を保有することになり、「核保有国」の資格で核不拡散条約(NPT)への参加を希望してきたがそれは実現しないまま今日に至っている。NPTは「核保有国」を米国、ロシア、英国、フランスおよび中国の5カ国に限定しているので新しい核保有国を受け入れることは条約に反して核拡散を認めることになる。つまり、NPT自身の自己否定となるからだ。
 一方、NSGの参加国はすべてNPTのメンバーであるが、最近、インドの核管理体制の改善が評価され、NPTに迎え入れるのは無理としてもNSGには参加を認めてよいのではないかという考えが強くなってきた。特に米国がその代表格であり、日本など慎重な国にも認めるよう働きかけてきた経緯がある。
 そして今年のNSGソウル総会でインドは参加を希望し、米国はもとより、日本を含む大多数の国は認めてもよいという態度であったが、少数の国が反対したためインドの参加は実現しないまま6月24日閉会となった。実質的には中国だけの反対だったと言われている。
 
 NSGで起こったことは、インド、中国および米国の三者関係でも興味深い。
 インドと中国は最近関係を強化しており、モディ・インド首相と習近平中国主席の相互訪問、アジアインフラ投資銀行(AIIB)やBRICs銀行などでの協力関係の強化は世界的に注目を集めている。
 一方、インドと中国はライバル関係にもあり、中国のインド洋への進出をインドは強く警戒している。中国に協力的なスリランカに原潜の寄港を認めたと抗議しているくらいだ。
 また、モディ首相は日本や米国との関係強化にも力を入れており、それは中国が警戒することである。
 NSGでの出来事の背景にはそのような複雑な印中関係があることを考慮に入れておく必要がある。今次総会でインドの参加が中国の反対で認められなかったことについて、インド側では当然失望の声が上がっているが、中国がインドに敵対したのではないことは分かっている。中国の反対は、米国が主導的にNPT体制のアウトサイダーであるインドをNSGに参加させようとしていることに原因があること、要するに、中国は米国の好きなようにはさせないとしていることについては理解があるようだ。
 なお、中国にとっては、年来の友好国であるパキスタンをインドと同様に扱ってほしいという気持ちもある。しかし、パキスタンのNSG参加については消極的な国が多い。
 
 今回のソウル総会でインドのNSG参加が否定されたのではなく、先送りであった。次回の総会以前に臨時特別総会を開く可能性もあるそうだ。

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