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2014.11.13

中国の大国化を米国は認めるか

安倍首相が近寄って握手し、話しかけても習近平主席は仏頂面で一言も発せず、しかも安倍首相の発言の通訳を一切聞かずにカメラのほうを向いてしまった。別の機会には、他の国の場合は国旗を背景にして握手しているところを写真撮影したのに、安倍首相の時だけは国旗なしであった。習近平主席の気持ちは凍り付いているのだろうか。それとも、国内の対日強硬派に向けてのジェスチャーだろうか。両方であるかもしれない。
これとは対照的に、APEC首脳会議後中国を訪問したオバマ大統領に対しては、中国の政治権力機構の中枢である中南海にも招き入れるなど異例の熱烈な待遇であった。中国が米国との関係を重視しているのは言うまでもないが、さらに中国は米国と並ぶ大国になり、かつ米国にそれを認めさせることが国家的目標であり、今回のオバマ大統領の訪中はその目標に近づくのに格好の機会だったのであろう。
11月12日の首脳会談後の共同記者会見で、習近平主席は「米中間で新型大国関係の構築に向け引き続き努力していくことで合意した」と述べた。この「合意」には中国としての願望が混じっており、正確には合意でない。
米国は、中国が大国であることを認めたことはなく、今次首脳会談でも認めた事実はないようである。しかし、中国が「世界で責任ある役割を果たす」ことを期待していることは明言している。記者会見でのオバマ大統領の発言もその線に沿ったものであった。これに対し習近平主席は、「中国は自らの国際的地位に見合った責任を果たす」と述べている。中国が「大国」であることを米中が合意するところまでは至っていないが、「国際社会における地位にふさわしい責任を果たす」という点では米中両国の意見は一致していると見てよいであろう。また、このことは日本としても歓迎すべきことである。
習近平主席は「新型大国関係」として、お互いの主権、領土、政治制度、核心的利益などを尊重することを挙げている。これに米国が同意することはありえない。お互いに主権を尊重しあうとは当然のことを述べているようにも聞こえるが、その言葉の背後には「中国に対する内政干渉は認めない」、さらには「他国に対する内政干渉も認められない」という考えがある。とくに後者の点は、ロシアとともに国際社会での保守派として米国に楯突く立場そのものである。
核心的利益には台湾、尖閣諸島、南シナ海の島嶼に対する主権主張が含まれる。この尊重を米国に認めさせることは中国の願望であるのは分かるが、米国が認めることはありえない。中国の大国化願望が実現するのは道遠い。
11月14日の人民日報海外版は、11日の中南海瀛台でのオバマ・習近平の会話の全文を伝えた。その最後の部分で、「習近平主席は「中米間の新型大国関係の戦略的目標は明確である。我々はその概念上でとどまることはできない、また、早期に結果を収めることに満足することはできない。前を向いて歩み続ける必要がある。我々は戦略的高度から、また、遠大な角度から出発し、水を湖とし、土を山として絶え間なく新型の大国関係の建設にまい進していかなければならない」と述べた。これに対し、オバマ大統領は大いに賛同し、米国としてもこの目的のために中国と共同で努力していきたいとした(表示)。」
この記事によれば、オバマ大統領は「大国関係」に同意した印象があるが、それは中国側のプロパガンダであろう。


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