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2014.11.05

新欧州委員長の就任とEU

11月1日、欧州委員長がバローゾ(ポルトガル)からユンケル(ルクセンブルグ)に交代した。バローゾは10年間(2期)勤め、加盟国および加盟候補国の拡大、ギリシャの金融危機などを経験した。ユンケルは第1期の5年間が経過した後、2期目も務めるか、それは分からないが、すでにEU内部では利害関係の違いにもとづく対立が目立っている。
主要国の間にもEUへの信頼性を問う動きがあり、とくにかねてからEUの主要メンバーでありながら何かと距離を置きたがる英国はEUの官僚的対応に不満を高めている。先月24日には、EUの首脳会議が開催中であったがキャメロン首相は記者会見を開き、「EUがいかに現実から離れ、官僚的かということを、欧州中に知らしめた」とブチまけた。EUの中心勢力である独仏からも不満が漏れている。
EUでしばしば問題となるのは各国の財政負担であり、主要国は負担が重すぎることに不満であり、弱小国は大国の権限が強過ぎると言っている。キャメロン首相の不満も英国の財政負担が引き金であった。
主要国の財政負担がさらに増大するのは避けられないであろう。一方では、将来のEU加盟を目指してセルビアなどの西バルカン諸国が安定化・連合協定を結んでいる。他方では、ギリシャ、スペイン、イタリアなどの財政不安定国の状況が好転せず、ユーロの維持のための負担が大きくなっている。しかしながら、前者の方は政治的に、後者のほうは経済的にそれぞれ必要であり、主要国としても負担増を理由に協力を拒否することはできない。
そのような状況の中でさらにウクライナの問題に火がついた。親ロシア派とロシアとの関係で困難な立場にあるウクライナ政府を支持し、下支えするのにEUは一致して行動してきたし、これからもそうするであろう。対外的な問題に対してはさすがと思われるところがあるが、ウクライナとも安定化・連合協定を結んだ。これはウクライナにとっては非常に大きなステップであるが、親ロシア派はますますウクライナ政府には協力しなくなり、ごく最近も独自の選挙行なっている。ロシア空軍は冷戦後まれにみる規模で演習を行いウクライナの新ロシア派にエールを送っている。EUにとっての経済的・政治的負担はますます重くなるだろう。ユンケル新委員長にとって難題に満ちた出発である。


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