オピニオン
2014.04.14
PKOにおいて武器使用が認められるのはいかなる理由によるか。我が国では自衛権の行使だからということを理由にしているが、これについては再検討する余地がある。
国連憲章が認める武力行使禁止の例外は第42条の国連軍の場合か、51条の自衛権行使の場合か、いずれかしかないという考えに立つと、PKOは国連軍に似ている面があるが両者は決定的に違っているので、自衛権の行使が理由であると考えがちである。
しかし、自衛権の行使はいずれかの国が攻撃してきた場合であり、その場合攻撃する側と受ける側との間では「国際紛争」がある可能性が高い。攻撃以前の時点では敵味方ではなく平和な関係であったとしても、攻撃を仕掛けてきた場合はそこから「国際紛争」が始まると考えられる。つまり「国際紛争」は自衛権の行使と同時、あるいはそれ以前から起こっており、自衛権が行使される場合、通常は「国際紛争」があるのである。
一方、PKOの典型的な例は、特定の国家領域内で政府軍と反乱軍が戦闘行為を行なっていたが、両者の間で和平の合意が成立し、その前提に立って、情勢の不安定化を防ぐために国連がPKOを派遣する場合である。つまり、PKOの場合は和平が前提となっており、「国際紛争」の中で自衛権が行使されるのと前提がまったく異なっている。
武力行使について言えば、自衛権の場合は「国際紛争」の中で武力の行使が認められる一方、PKOの場合は和平が成立している中で武力行使が認められるので、その程度はおのずと異なる。自衛権の場合は自衛に必要な限度において認められ、たとえば、ミサイルなどが使用されることも多いが、PKOの場合は平和維持という任務遂行に必要な限度において認められるので、自衛権行使の場合と比較にならないくらい小規模であろう。
PKOの場合、いかなる理由で武力行使が認められるか。あらためて国連憲章を見直してみると、武力の行使を禁止している憲章第2条4項は、禁止される武力行使を3つの場合に分けて規定している。
第一が、「国家の領土保全」をおびやかす武力行使であり、第二が、「国家の政治的独立」を脅かす武力行使であり、第三が、「国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるもの」である。これはこの条項の文言そのものであり、一方、先に述べた、国連憲章が武力行使の禁止の例外として認めているのは国連軍と自衛権の行使だけであるというのは、憲章の解釈に過ぎず、憲章の規定ほど明確でないし、また解釈が変わることもありうる。しかるに、PKOが国連の目的に合致するのは明らかであり、したがって2条4項の三番目に該当する。つまり、PKOは国連軍でも、自衛権の行使でもないが、2条4項に合致しているのである。武力行使が認められる範囲は各PKOについて採択された決議の内容による。
PKOに参加する諸国はどの程度の武力行使の用意があるか。その説明ぶりは確かめなければならないが、結論的には、安保理決議にしたがいPKO業務に必要な程度武力行使を認めており、それ以外に制約があるとは考えていないであろう。
一方、PKOでなく、いわゆる多国籍軍の場合との相違も見ておく必要があろう。すなわち、多国籍軍に対しても安保理の決議はPKOと同様武力行使を認める場合があるが、PKOと違って多国籍軍は和平の合意の存在を前提にしておらず、実体はむしろ、国際紛争を解決するために行動することが多い。アフガニスタンで活動しているISAF、イラクと戦った多国籍軍などがその例である。この点でPKOとの違いは大きく、また実際に使用される武器も多国籍軍の場合ははるかに強力であろう。このような多国籍軍とPKOの違いは国連加盟国にとって重要な意味あいがあり、和平の合意の有無で参加するか否かを決定するのは十分理由のあることである。
PKOと武力行使④
④PKOにおいて武器使用が認められるのはいかなる理由によるか。我が国では自衛権の行使だからということを理由にしているが、これについては再検討する余地がある。
国連憲章が認める武力行使禁止の例外は第42条の国連軍の場合か、51条の自衛権行使の場合か、いずれかしかないという考えに立つと、PKOは国連軍に似ている面があるが両者は決定的に違っているので、自衛権の行使が理由であると考えがちである。
しかし、自衛権の行使はいずれかの国が攻撃してきた場合であり、その場合攻撃する側と受ける側との間では「国際紛争」がある可能性が高い。攻撃以前の時点では敵味方ではなく平和な関係であったとしても、攻撃を仕掛けてきた場合はそこから「国際紛争」が始まると考えられる。つまり「国際紛争」は自衛権の行使と同時、あるいはそれ以前から起こっており、自衛権が行使される場合、通常は「国際紛争」があるのである。
一方、PKOの典型的な例は、特定の国家領域内で政府軍と反乱軍が戦闘行為を行なっていたが、両者の間で和平の合意が成立し、その前提に立って、情勢の不安定化を防ぐために国連がPKOを派遣する場合である。つまり、PKOの場合は和平が前提となっており、「国際紛争」の中で自衛権が行使されるのと前提がまったく異なっている。
武力行使について言えば、自衛権の場合は「国際紛争」の中で武力の行使が認められる一方、PKOの場合は和平が成立している中で武力行使が認められるので、その程度はおのずと異なる。自衛権の場合は自衛に必要な限度において認められ、たとえば、ミサイルなどが使用されることも多いが、PKOの場合は平和維持という任務遂行に必要な限度において認められるので、自衛権行使の場合と比較にならないくらい小規模であろう。
PKOの場合、いかなる理由で武力行使が認められるか。あらためて国連憲章を見直してみると、武力の行使を禁止している憲章第2条4項は、禁止される武力行使を3つの場合に分けて規定している。
第一が、「国家の領土保全」をおびやかす武力行使であり、第二が、「国家の政治的独立」を脅かす武力行使であり、第三が、「国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるもの」である。これはこの条項の文言そのものであり、一方、先に述べた、国連憲章が武力行使の禁止の例外として認めているのは国連軍と自衛権の行使だけであるというのは、憲章の解釈に過ぎず、憲章の規定ほど明確でないし、また解釈が変わることもありうる。しかるに、PKOが国連の目的に合致するのは明らかであり、したがって2条4項の三番目に該当する。つまり、PKOは国連軍でも、自衛権の行使でもないが、2条4項に合致しているのである。武力行使が認められる範囲は各PKOについて採択された決議の内容による。
PKOに参加する諸国はどの程度の武力行使の用意があるか。その説明ぶりは確かめなければならないが、結論的には、安保理決議にしたがいPKO業務に必要な程度武力行使を認めており、それ以外に制約があるとは考えていないであろう。
一方、PKOでなく、いわゆる多国籍軍の場合との相違も見ておく必要があろう。すなわち、多国籍軍に対しても安保理の決議はPKOと同様武力行使を認める場合があるが、PKOと違って多国籍軍は和平の合意の存在を前提にしておらず、実体はむしろ、国際紛争を解決するために行動することが多い。アフガニスタンで活動しているISAF、イラクと戦った多国籍軍などがその例である。この点でPKOとの違いは大きく、また実際に使用される武器も多国籍軍の場合ははるかに強力であろう。このような多国籍軍とPKOの違いは国連加盟国にとって重要な意味あいがあり、和平の合意の有無で参加するか否かを決定するのは十分理由のあることである。
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