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2020.11.23

菅首相は韓国との関係を改善することができる

 文在寅大統領は対日関係を改善したい意向である。11月14日、東南アジア諸国連合(ASEAN)と日中韓のテレビ首脳会議で、「各国の首脳のみなさん、特に日本の菅義偉首相、お会いできてうれしいです」と菅氏だけ名前を挙げて呼びかけた。また、朴智元(パクチウォン)国家情報院長を日本に派遣し、菅首相に対し10日、「日韓新共同宣言」を提案したのもその表れであった。13日には韓日議員連盟の金振杓(キムジンピョ)会長が菅氏を表敬し、元徴用工問題を東京五輪が終わるまで凍結する提案をしたことも注目された。

 文大統領が日本との関係改善に積極的な姿勢をみせ始めたのは、大統領としての任期が2年を切った現在、北朝鮮を東京オリンピックの場に引き出し、南北朝鮮及び日米の首脳会談を実現することにより韓国の外交を立て直したいからであり、文大統領として最後の大仕事になると認識しているのであろう。

 菅新政権として文大統領の呼びかけだからと言って応じる必要はないが、これは菅新政権の外交全体に関係する問題となる。菅首相は安倍首相の外交方針を踏襲する考えを早々に表明したが、米国ではトランプ氏と考え方が非常に異なるバイデン氏が新大統領になることが明確になっている。菅首相の相手はバイデン大統領になるのであり、安倍首相とトランプ大統領の間で行ったような外交はできない。

 バイデン氏は、同盟国との関係を重視し、日韓両国に対しても協力関係を回復するよう求めてくるだろう。その原則はすでに表明している。日本が韓国との関係改善に積極的な姿勢をみせなければ、その影響は韓国及び北朝鮮以外の関係にも及んでくる。

 では、菅政権として具体的にどのように対応すべきか。徴用工問題では、どのように考えても日本側が韓国側に指摘している「国際法違反の状態を韓国側が正さなければならない」という原則は変えられない。また、この点では米国の理解も得やすい。

 一方、半導体素材の輸出規制強化については、韓国側は日本側からの指摘に従って輸出管理の改善措置を講じており、日本側の目的はすでに達成されている。また、安倍政権下で日本側が規制強化を行ったのは、韓国に慰安婦問題や徴用工問題で国際法に合致した行動を促す裏外交としての意味があったが、それが効果的でないことは明らかになっている。徴用工問題も輸出規制強化措置問題もゼロ回答では、バイデン新政権から理解を得られないだろう。これらの理由から、日本側は早急に輸出規制強化措置の撤廃を検討し始めるべきである。

安倍政権の下では、文大統領は韓国として対日関係改善に一定程度積極的な姿勢を示しつつも、日韓関係が悪化した原因は安倍首相の姿勢にあったとの考えであった。つまり、文政権も裏表を使い分けていたのであるが、その外交も今後は変わっていく。菅首相も安倍首相の外交方針を踏襲するだけでなく、新しい情勢に応じた外交に努めるべきである。

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