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2018.11.20

慰安婦問題をめぐる国際状況

 国連の強制的失踪委員会は11月19日、日本に対する審査の最終見解を公表した。旧日本軍の従軍慰安婦問題について、元慰安婦らへの補償は十分とは言えず「最終的かつ不可逆的に解決した」との日本政府の立場に遺憾の意を示した。また、元慰安婦らは国家による強制失踪の犠牲者の可能性があると指摘。条約が定める適切な補償が十分に行われていないとして懸念を示した。最終見解に法的拘束力はない。(共同通信社 11月20日付報道によった)。

 「強制的失踪委員会」とは、「強制的失踪条約」の運用状況を審査する機関であり、日本からも委員が出ている(東京大学の寺谷広司教授)。議長は現在アルバニア人のMs. Suela JANINA。
 
 ジュネーブ国際機関日本政府代表部の担当者は「最終見解は誤解や偏見に基づく一方的なもので極めて遺憾だ」と述べ、国連人権高等弁務官事務所に抗議したことを明らかにしたという。
 
 しかし、日本政府のとった行動がこれだけであれば、人権理事会はじめ、慰安婦問題を取り上げているいくつかの委員会で起こってきたことの繰り返しになりかねない。
 日本政府は事実関係の誤りについては、よく調べ、間違いを指摘し、必要に応じ抗議もしてきた。これだけ聞けば、当たり前のことだと思われるかもしれないが、これら国連機関が執拗に慰安婦問題を取り上げるのは、背景に女性の人権を擁護しようとする国際的運動があるからであり、そのことを軽視すると、強い反発を招く結果になる。

 当然、今回強制的失踪委員会で起こったことについても、この点は問題とされなければならない。しかし、上記に引用した報道を見る限り、日本政府が国際的背景についてどのように取り組み、対処したかまったくみえない。あるいは抗議しただけで終わったのかもしれない。もしそうであれば、国連の委員会をいたずらに刺激するだけで終わることにならないか。「抗議した」というのは日本国内向けのメッセージにしかならないのではないか。

 国際的側面についての日本政府のこれまでの取り組みは非常に不十分であった。日本の政治家が重要委員会の議長を批判して、顰蹙を買ったこともあった。重要な報告を行ったクマラスワミ氏に日本政府の高官が抗議して、その問題は報告書の内容に影響しないと一蹴されたこともあった。
 
 残念ながら、日本はこのようなことを繰り返し、結果慰安婦問題をますますこじらせてきたのではないか。日本政府の戦略的対応が望まれる。

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