オピニオン
2018.03.30
しかし、「北朝鮮の非核化」か、それとも「朝鮮半島の非核化」か、必ずしも明確にされないままに論じられている。
金委員長の発言も、前者のようにも取れる場合と、後者の場合と両方ある。先般訪朝した韓国の鄭特使に対して、「軍事的脅威が解消され、体制の安全が保証されれば、核を保有する理由がない」と述べたのは前者のように聞こえるが、「軍事的脅威が解消されれば」という条件は韓国と米国の態度にかかわること、つまり「朝鮮半島」の問題なので、前者だと言い切れない面がある。
習近平主席に対しては、「金日成主席と金正日総書記の遺訓に従い半島の非核化に努めることは、我々の一貫した立場である」と明確に後者の表現を使っていた。
「朝鮮半島の非核化」の場合、「北朝鮮の非核化」のみならず、「韓国及び在韓米軍の非核化」も含まれる。
韓国は核兵器を保有していない。在韓米軍はかつて韓国内に核兵器を保有していたが、冷戦終結後の1991年に撤去されたので、韓国内には核兵器は存在しない。しかし、「朝鮮半島の非核化」が「韓国の非核化」を含んでも、結局「北朝鮮の非核化」と同じことになると考えるのは短絡的に過ぎる。
検証の問題があるからであり、「朝鮮半島の非核化」であれば、北朝鮮のみならず韓国(在韓米軍を含め)も査察の対象となる。「北朝鮮の非核化」であれば、北朝鮮だけが査察の対象となる。
この問題は、1992年に、南北朝鮮が「朝鮮半島の非核化宣言」を行った際実際に問題となった。北朝鮮側は、査察を受けるのは認めるとしても、在韓米軍にも査察が必要だと主張した。「半島の非核化」であるから、理屈から言えば、それはもっともな主張であった。
しかし、韓国側は、それは無理だと答えた。韓国政府が米軍に対し査察を受け入れるよう求められるはずはないので当然の回答だったのだろう。しかし、そのため、せっかくの宣言であったが、事実上宙に浮いてしまった。「朝鮮半島の非核化」はそれ以来の懸案である。
トランプ大統領は金委員長との間で、「朝鮮半島の非核化」でなく、「北朝鮮の非核化」について合意することを目標にすべきである。
金委員長はそれに応じるだろうか。米朝首脳会談の合意が発表されてから日が浅いが、すでに「非核化」について様々な観測、意見が飛び交っている。なかには根拠のない裏話も含まれており、混乱気味の状態になっているが、北朝鮮が必要としているのは「体制の維持」である。「米国による北朝鮮の承認」、「北朝鮮の安全の確保」、「米国が北朝鮮を敵視しないこと」、「平和条約の締結」、「不可侵条約の締結」などともいわれるが、すべて同じ問題である。要するに、金委員長は、「体制の維持」が確保されることを求めているのであり、これも「半島」でなく「北朝鮮」の問題である。
金委員長が述べている「軍事的脅威が解消されれば」については、前述したような半島全体の問題につながることであるが、だからと言って、米朝両首脳は「朝鮮半島の非核化」を議題とすべきでない。そうすると「北朝鮮の非核化」より変数が多くなり、それだけ交渉が困難になるからだ。この点は米朝会談を成功させるために決定的に重要なことである。
金氏は「朝鮮半島の非核化」にしようとするかもしれない。また、米国内にも「朝鮮半島」と「北朝鮮」を区別することの重要性を理解しない意見は少なくないようだ。ごく最近、米国家安全保障会議(NSC)が、北朝鮮に対抗するため在韓米軍に核を再配備することをトランプ氏に提案したと報道されている。これらはトランプ大統領にとってかく乱要因となる。トランプ氏にはあくまで「北朝鮮の非核化」を目指してもらいたい。
「軍事的脅威が解消されれば」は、その後の「体制の安全が保証されれば」と別にせず、一体として扱えばよい。
金委員長はどこまで現在の姿勢を維持するか、不安はあるが、北朝鮮の置かれている国際環境と金委員長の発言にかんがみると「北朝鮮の非核化」と「米国による北朝鮮の承認」とは米国と北朝鮮がそれぞれ目指すべき現実的な目標であり、それが実現する可能性は、まだ、わずかかもしれないが、出てきたと思われる。
「北朝鮮」の非核化か、「朝鮮半島」の非核化か
金正恩委員長が習近平主席と会談した。さらに文在寅大統領やトランプ大統領とも会談する予定になっている。北朝鮮をめぐる情勢が大きく展開する中で、「非核化」が最重要問題であることについてはほぼコンセンサスがある。しかし、「北朝鮮の非核化」か、それとも「朝鮮半島の非核化」か、必ずしも明確にされないままに論じられている。
金委員長の発言も、前者のようにも取れる場合と、後者の場合と両方ある。先般訪朝した韓国の鄭特使に対して、「軍事的脅威が解消され、体制の安全が保証されれば、核を保有する理由がない」と述べたのは前者のように聞こえるが、「軍事的脅威が解消されれば」という条件は韓国と米国の態度にかかわること、つまり「朝鮮半島」の問題なので、前者だと言い切れない面がある。
習近平主席に対しては、「金日成主席と金正日総書記の遺訓に従い半島の非核化に努めることは、我々の一貫した立場である」と明確に後者の表現を使っていた。
「朝鮮半島の非核化」の場合、「北朝鮮の非核化」のみならず、「韓国及び在韓米軍の非核化」も含まれる。
韓国は核兵器を保有していない。在韓米軍はかつて韓国内に核兵器を保有していたが、冷戦終結後の1991年に撤去されたので、韓国内には核兵器は存在しない。しかし、「朝鮮半島の非核化」が「韓国の非核化」を含んでも、結局「北朝鮮の非核化」と同じことになると考えるのは短絡的に過ぎる。
検証の問題があるからであり、「朝鮮半島の非核化」であれば、北朝鮮のみならず韓国(在韓米軍を含め)も査察の対象となる。「北朝鮮の非核化」であれば、北朝鮮だけが査察の対象となる。
この問題は、1992年に、南北朝鮮が「朝鮮半島の非核化宣言」を行った際実際に問題となった。北朝鮮側は、査察を受けるのは認めるとしても、在韓米軍にも査察が必要だと主張した。「半島の非核化」であるから、理屈から言えば、それはもっともな主張であった。
しかし、韓国側は、それは無理だと答えた。韓国政府が米軍に対し査察を受け入れるよう求められるはずはないので当然の回答だったのだろう。しかし、そのため、せっかくの宣言であったが、事実上宙に浮いてしまった。「朝鮮半島の非核化」はそれ以来の懸案である。
トランプ大統領は金委員長との間で、「朝鮮半島の非核化」でなく、「北朝鮮の非核化」について合意することを目標にすべきである。
金委員長はそれに応じるだろうか。米朝首脳会談の合意が発表されてから日が浅いが、すでに「非核化」について様々な観測、意見が飛び交っている。なかには根拠のない裏話も含まれており、混乱気味の状態になっているが、北朝鮮が必要としているのは「体制の維持」である。「米国による北朝鮮の承認」、「北朝鮮の安全の確保」、「米国が北朝鮮を敵視しないこと」、「平和条約の締結」、「不可侵条約の締結」などともいわれるが、すべて同じ問題である。要するに、金委員長は、「体制の維持」が確保されることを求めているのであり、これも「半島」でなく「北朝鮮」の問題である。
金委員長が述べている「軍事的脅威が解消されれば」については、前述したような半島全体の問題につながることであるが、だからと言って、米朝両首脳は「朝鮮半島の非核化」を議題とすべきでない。そうすると「北朝鮮の非核化」より変数が多くなり、それだけ交渉が困難になるからだ。この点は米朝会談を成功させるために決定的に重要なことである。
金氏は「朝鮮半島の非核化」にしようとするかもしれない。また、米国内にも「朝鮮半島」と「北朝鮮」を区別することの重要性を理解しない意見は少なくないようだ。ごく最近、米国家安全保障会議(NSC)が、北朝鮮に対抗するため在韓米軍に核を再配備することをトランプ氏に提案したと報道されている。これらはトランプ大統領にとってかく乱要因となる。トランプ氏にはあくまで「北朝鮮の非核化」を目指してもらいたい。
「軍事的脅威が解消されれば」は、その後の「体制の安全が保証されれば」と別にせず、一体として扱えばよい。
金委員長はどこまで現在の姿勢を維持するか、不安はあるが、北朝鮮の置かれている国際環境と金委員長の発言にかんがみると「北朝鮮の非核化」と「米国による北朝鮮の承認」とは米国と北朝鮮がそれぞれ目指すべき現実的な目標であり、それが実現する可能性は、まだ、わずかかもしれないが、出てきたと思われる。
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