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2013.11.10

モンゴルにおける核汚染

モンゴルで深刻な核汚染問題が発生しているが、日本では一般にはまだよく知られていない。この問題を最初に報道したのは2011年5月9日付の毎日新聞だそうで、その後、日本以外も含めいくつかの報道が続いている。研究者や活動家は現地からのルポにより被害状況を伝えている。
モンゴルでのウラン鉱開発はソ連の手で行われていた。その鉱山はすでに閉山されているが、最近フランスのアレバ社が新しい鉱脈の発見に成功している。また、モンゴルは日本の核廃棄物の処理場として候補に挙がっており、日本政府はモンゴル政府と話し合いを行なっているようである。
問題の放射能汚染は、しかし、深刻であり、ソ連が引き上げた後も建物などは放射線で汚染され危険な状態のまま残っており、生活用水が放射能で汚染されているらしい。また、フランス系の企業による試掘からもすでに被害が出ていると言われている。
とくにひどいのは家畜の被害であり、双頭のヒツジや目が見えないラクダが生まれ、内臓にただれや血腫を持つものもあるそうである。
ウラン資源の利用については経済的なメリットがありうることからモンゴル政府は積極的であり、また、日本との間で廃棄物処理場を提供することについても前向きなようだが、放射能汚染の悲惨な状況については正確な情報の提供が求められる。
11月9日の朝日新聞は、ある日本人女性が中古のカメラ付き携帯を集めて、現地の遊牧民に送っていることを報道した。写真を集め、核汚染の広がりや現状を明らかにしたい、という思いからだそうである。その人は大学でモンゴル語を学び、20年前から毎年ゴビ砂漠に通い、遊牧民の暮らしぶりの変化を追ってきた。「急速な市場化が進み、公害が深刻化している。当地は家畜を血の一滴まで食べる文化。人間に影響が出ないわけがない」として、今夏、研究会誌で核問題特集を組み、論文を掲載した。子どもの被曝(ひばく)を防ぐ冊子のモンゴル語訳にも取り組むそうである。非常に貴重な努力である。


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