オピニオン
2017.08.01
ホワイトハウスの中枢が問題だ。肝心かなめの首席補佐官は、ラインス・プリーバス氏からジョン・ケリー氏に交替した。広報部長に任命されたばかりのアンソニー・スカラムッチ氏はわずか10日で辞任した。報道官はショーン・スパイサー氏からサラ・ハッカビー・サンダース氏に交替した。
人事の混乱は今に始まったことでなく、政権が発足して以来続いていた。国家安全保障担当の補佐官であったマイケル・フリン氏は1カ月しかもたなかったし、トランプ大統領の厚い信頼を得ていたスティーブン・バノン氏は国家安全保障会議のメンバーから外された。
今後は、セッションズ司法長官の辞任の可能性が取りざたされており、さらには、ティラーソン国務長官も年末まで持つか疑問だとうわさされている。
もっとも、トランプ大統領は議会や地方ではまだかなりの支持を得て持ちこたえているが、日本を含め普通の国の感覚では政権全体が液状化しつつあるように見える。
対外面の状況も非常に厳しくなっている。北朝鮮は米国の足元を見透かしてICBMの発射実験を行ったのではないかと前回のHPでは記したが、ロシアも最近、米国に挑戦的な姿勢を見せるようになっている。
ロシアは、北朝鮮による初めてのICBM実験(7月4日)後、安保理で米国作成の決議案に反対したのに引き続き、28日の第2回発射実験については、実験自体は批判しつつ、米国は北朝鮮の核・ミサイル開発の責任を「ロシアと中国に押しつけようとしている」と反発した。さらに、ロシアは日米韓に矛先を向け、これら3国は「軍事的な活動を強めている」と非難し、また、韓国へのTHAADの配備についても反対を繰り返した(31日)。
時間的には前後するが、ロシアのプーチン大統領は30日、米国の外交官ら755人を追放する方針を明らかにした。米議会で可決されたロシアへの制裁強化法案にトランプ大統領が署名すると発表したことへの報復だと言われているが、オバマ政権以来の経緯も見ておく必要がある。
オバマ前大統領が米大統領選への介入を理由に制裁としてロシア外交官35人を国外退去処分とし、米国内2カ所のロシア関連施設の使用禁止を決めたのは昨年12月であった。
トランプ大統領はロシアとの関係を改善する強い意欲を見せていたが、実際にはなかなか前進できなかった。7月初めのG20の際、プーチン氏はトランプ米大統領と2回にわたる異例の長時間会談を行った。この時、プーチン氏はこれらの措置の撤回を求めたが受け入れられなかったという。
そして、米国がロシアに対する制裁を強化したことが引き金となって、ロシアは強く反撃することを決めたのであるが、その背景には、トランプ政権が非常に不安定な状況に陥っていることへの考慮も働いていたのではないか。
北朝鮮によるICBMの発射実験は米中関係にも暗い影を落とした。トランプ大統領は29日、得意のツイッターで「中国に非常に失望」「中国は北朝鮮について口だけで、我々のために何もしていない」などと発信した。これまでトランプ大統領は北朝鮮問題に関する中国の姿勢を積極的に評価しつつ、さらなる圧力の強化を求めてきた。しかし、第2回目のICBM実験により、それまでの建設的な姿勢はぷっつりと切れ、正面から中国批判を始めたのだ。
中国はこれに対し31日、「中国が原因となって北朝鮮の核問題が生じているのではない。関係各国はこの点に関し正しく理解する必要がある。国際社会は解決に向けた中国の取り組みを広く認識している」などと反論した(ロイター7月31日)。米国の強い批判にくらべ穏健な反応である。推測にすぎないが、中国としてもトランプ政権の足元を見つつ、売り言葉に買い言葉でなく冷静に対応する方が中国に有利に働くと判断しているのではないかと思われる。
混迷を深めるトランプ政権
「混迷するトランプ政権」と題する一文を本HPにアップしたのは7月29日であったが、それから1週間もたたない間に事態はさらに悪化した。ホワイトハウスの中枢が問題だ。肝心かなめの首席補佐官は、ラインス・プリーバス氏からジョン・ケリー氏に交替した。広報部長に任命されたばかりのアンソニー・スカラムッチ氏はわずか10日で辞任した。報道官はショーン・スパイサー氏からサラ・ハッカビー・サンダース氏に交替した。
人事の混乱は今に始まったことでなく、政権が発足して以来続いていた。国家安全保障担当の補佐官であったマイケル・フリン氏は1カ月しかもたなかったし、トランプ大統領の厚い信頼を得ていたスティーブン・バノン氏は国家安全保障会議のメンバーから外された。
今後は、セッションズ司法長官の辞任の可能性が取りざたされており、さらには、ティラーソン国務長官も年末まで持つか疑問だとうわさされている。
もっとも、トランプ大統領は議会や地方ではまだかなりの支持を得て持ちこたえているが、日本を含め普通の国の感覚では政権全体が液状化しつつあるように見える。
対外面の状況も非常に厳しくなっている。北朝鮮は米国の足元を見透かしてICBMの発射実験を行ったのではないかと前回のHPでは記したが、ロシアも最近、米国に挑戦的な姿勢を見せるようになっている。
ロシアは、北朝鮮による初めてのICBM実験(7月4日)後、安保理で米国作成の決議案に反対したのに引き続き、28日の第2回発射実験については、実験自体は批判しつつ、米国は北朝鮮の核・ミサイル開発の責任を「ロシアと中国に押しつけようとしている」と反発した。さらに、ロシアは日米韓に矛先を向け、これら3国は「軍事的な活動を強めている」と非難し、また、韓国へのTHAADの配備についても反対を繰り返した(31日)。
時間的には前後するが、ロシアのプーチン大統領は30日、米国の外交官ら755人を追放する方針を明らかにした。米議会で可決されたロシアへの制裁強化法案にトランプ大統領が署名すると発表したことへの報復だと言われているが、オバマ政権以来の経緯も見ておく必要がある。
オバマ前大統領が米大統領選への介入を理由に制裁としてロシア外交官35人を国外退去処分とし、米国内2カ所のロシア関連施設の使用禁止を決めたのは昨年12月であった。
トランプ大統領はロシアとの関係を改善する強い意欲を見せていたが、実際にはなかなか前進できなかった。7月初めのG20の際、プーチン氏はトランプ米大統領と2回にわたる異例の長時間会談を行った。この時、プーチン氏はこれらの措置の撤回を求めたが受け入れられなかったという。
そして、米国がロシアに対する制裁を強化したことが引き金となって、ロシアは強く反撃することを決めたのであるが、その背景には、トランプ政権が非常に不安定な状況に陥っていることへの考慮も働いていたのではないか。
北朝鮮によるICBMの発射実験は米中関係にも暗い影を落とした。トランプ大統領は29日、得意のツイッターで「中国に非常に失望」「中国は北朝鮮について口だけで、我々のために何もしていない」などと発信した。これまでトランプ大統領は北朝鮮問題に関する中国の姿勢を積極的に評価しつつ、さらなる圧力の強化を求めてきた。しかし、第2回目のICBM実験により、それまでの建設的な姿勢はぷっつりと切れ、正面から中国批判を始めたのだ。
中国はこれに対し31日、「中国が原因となって北朝鮮の核問題が生じているのではない。関係各国はこの点に関し正しく理解する必要がある。国際社会は解決に向けた中国の取り組みを広く認識している」などと反論した(ロイター7月31日)。米国の強い批判にくらべ穏健な反応である。推測にすぎないが、中国としてもトランプ政権の足元を見つつ、売り言葉に買い言葉でなく冷静に対応する方が中国に有利に働くと判断しているのではないかと思われる。
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