朝鮮半島
2021.04.15
カレントな問題としては、北朝鮮による新型戦術誘導ミサイルの実験とSLBM搭載の潜水艦の建造がある。朝鮮中央通信が3月26日に報道した、前日の新型戦術誘導ミサイルの発射実験である。発射されたのは2発で、日本海上に設定した600キロ先の目標を「正確に打撃した」という。ただし、金正恩総書記は発射実験に立ち会わなかった。
また、北朝鮮は弾道ミサイルを搭載できる新型潜水艦の建造を終えたと報道された。SLBM3発を搭載できる3千トン超の大きさだという。
4月15日の金日成主席の誕生日を祝賀するとともに、日米首脳会談に水をかける狙いも込められているようだ。
しかし、日米首脳会談ではミサイル発射と潜水艦問題は言及されても主要な問題にならない。バイデン大統領にとっても、菅首相にとってももっと根本的な問題がある。
米国としては、2018年4月、北朝鮮が行った核と大陸間弾道弾(ICBM)などの実験停止表明と同年6月12日のトランプ大統領と金正恩総書記との合意(共同声明)内容は、朝鮮半島の非核化問題を含め、今後も維持する必要があるはずである。しかし、バイデン大統領は、トランプ大統領が行ったような金正恩総書記との直接会談には批判的だと伝えられるなど、現状を動かそうとする政治的意図は見えてこない。
一方北朝鮮は、外務次官レベルだが、米国からの非公式の打診について「米国の時間稼ぎに応じる必要はなく、無視する」とそっけなく、かつ、シンガポール会談のような方式に否定的な態度を示している。
つまり、米朝いずれからも朝鮮半島の非核化交渉をいかに再開していくかが見えないのである。バイデン氏には、トランプ氏のような個人的な方法で金正恩総書記に働きかける意図がないのは分かるが、何らかの方法で政治的な意志を示さないと何事も動かない。非核化交渉を再開しようという事務的な働きかけだけでは、北朝鮮は乗ってこないだろう。
韓国の文在寅大統領は、平昌オリンピックの例に倣って東京オリンピックでも南北合同チームを結成し北朝鮮との関係改善のきっかけを作りたい考えである。菅首相に特使を派遣してその可能性を探ってきたこともあった。文大統領は今でもそのような願望を維持していると推測されるが、今の状況は2018年と大きく違っている。第1に、前述した、バイデン大統領には個人的に北朝鮮との関係を動かそうという意思がないこと、第2に、文大統領の国内での支持が著しく落ちており、新しい政策を打ち出す余裕がなくなっていることである。3年前にように、文大統領が米国と北朝鮮との間を取り持つ状況ではなくなっているのである。
文大統領は北朝鮮からすげなくされているどころか、あからさまな敵意を見せつけられている。韓国が米朝間で役割を果たす可能性はほとんどなくなっている。
日本は、本来、米朝関係の進展についても、また朝鮮半島の非核化についても果たすべき役割があるが、安倍政権においては北朝鮮の脅威をとなえ、かつ、拉致問題を解決しない北朝鮮を非難し、そうすることによってトランプ大統領との協力関係を作り上げてきた。しかし、客観状況が変化し、日本としても自ら行動することが必要になると、急きょ態度を修正し、「無条件で金総書記と会う用意がある」と表明した。
菅首相はこのような安倍元首相の路線を踏襲するのだろうか。バイデン大統領と安全保障上の見解を共有し、米国との親密な関係を再確認することは可能であるし、それほど難しくない。しかし、それだけでは日本の本当の役割を果たすことにならない。金総書記を本気にさせることもできない。
菅首相は、バイデン大統領に対し、拉致問題解決のため協力を求める考えである。しかし、物事は別の側面からも見る必要がある。金総書記は2014年に拉致問題を含め日本との関係を打開しようとしたが、その結果は金氏の期待通りにならなかったのではないか。この時に起こったことを無視しては拉致問題の解決もおぼつかない。
日米首脳会談2021
4月16日にワシントンDCで行われる日米首脳会談では、バイデン政権が現在検討中の北朝鮮政策の検討状況について説明が行われるであろう。この会談に関して、当研究所は4月9日付で米朝間の最大の課題である信頼関係の構築について論じたが、北朝鮮に関する主要なイッシューを補足的に見ておきたい。カレントな問題としては、北朝鮮による新型戦術誘導ミサイルの実験とSLBM搭載の潜水艦の建造がある。朝鮮中央通信が3月26日に報道した、前日の新型戦術誘導ミサイルの発射実験である。発射されたのは2発で、日本海上に設定した600キロ先の目標を「正確に打撃した」という。ただし、金正恩総書記は発射実験に立ち会わなかった。
また、北朝鮮は弾道ミサイルを搭載できる新型潜水艦の建造を終えたと報道された。SLBM3発を搭載できる3千トン超の大きさだという。
4月15日の金日成主席の誕生日を祝賀するとともに、日米首脳会談に水をかける狙いも込められているようだ。
しかし、日米首脳会談ではミサイル発射と潜水艦問題は言及されても主要な問題にならない。バイデン大統領にとっても、菅首相にとってももっと根本的な問題がある。
米国としては、2018年4月、北朝鮮が行った核と大陸間弾道弾(ICBM)などの実験停止表明と同年6月12日のトランプ大統領と金正恩総書記との合意(共同声明)内容は、朝鮮半島の非核化問題を含め、今後も維持する必要があるはずである。しかし、バイデン大統領は、トランプ大統領が行ったような金正恩総書記との直接会談には批判的だと伝えられるなど、現状を動かそうとする政治的意図は見えてこない。
一方北朝鮮は、外務次官レベルだが、米国からの非公式の打診について「米国の時間稼ぎに応じる必要はなく、無視する」とそっけなく、かつ、シンガポール会談のような方式に否定的な態度を示している。
つまり、米朝いずれからも朝鮮半島の非核化交渉をいかに再開していくかが見えないのである。バイデン氏には、トランプ氏のような個人的な方法で金正恩総書記に働きかける意図がないのは分かるが、何らかの方法で政治的な意志を示さないと何事も動かない。非核化交渉を再開しようという事務的な働きかけだけでは、北朝鮮は乗ってこないだろう。
韓国の文在寅大統領は、平昌オリンピックの例に倣って東京オリンピックでも南北合同チームを結成し北朝鮮との関係改善のきっかけを作りたい考えである。菅首相に特使を派遣してその可能性を探ってきたこともあった。文大統領は今でもそのような願望を維持していると推測されるが、今の状況は2018年と大きく違っている。第1に、前述した、バイデン大統領には個人的に北朝鮮との関係を動かそうという意思がないこと、第2に、文大統領の国内での支持が著しく落ちており、新しい政策を打ち出す余裕がなくなっていることである。3年前にように、文大統領が米国と北朝鮮との間を取り持つ状況ではなくなっているのである。
文大統領は北朝鮮からすげなくされているどころか、あからさまな敵意を見せつけられている。韓国が米朝間で役割を果たす可能性はほとんどなくなっている。
日本は、本来、米朝関係の進展についても、また朝鮮半島の非核化についても果たすべき役割があるが、安倍政権においては北朝鮮の脅威をとなえ、かつ、拉致問題を解決しない北朝鮮を非難し、そうすることによってトランプ大統領との協力関係を作り上げてきた。しかし、客観状況が変化し、日本としても自ら行動することが必要になると、急きょ態度を修正し、「無条件で金総書記と会う用意がある」と表明した。
菅首相はこのような安倍元首相の路線を踏襲するのだろうか。バイデン大統領と安全保障上の見解を共有し、米国との親密な関係を再確認することは可能であるし、それほど難しくない。しかし、それだけでは日本の本当の役割を果たすことにならない。金総書記を本気にさせることもできない。
菅首相は、バイデン大統領に対し、拉致問題解決のため協力を求める考えである。しかし、物事は別の側面からも見る必要がある。金総書記は2014年に拉致問題を含め日本との関係を打開しようとしたが、その結果は金氏の期待通りにならなかったのではないか。この時に起こったことを無視しては拉致問題の解決もおぼつかない。
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