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朝鮮半島

2016.12.20

(短評)朴槿恵大統領の答弁書

 韓国国会での朴槿恵大統領の弾劾決定を審理している憲法裁判所に大統領側から提出された答弁書が12月18日、公表された。チェ・スンシル被告などとの関連で責任を追及されている諸点に関し、訴追には根拠がなく、一連の疑惑はすべて事実でないと主張する内容だそうだ。

 大きく言って、一つの前置き、二つの感想がある。
 前置きしたいのは、答弁書が提出されたからと言ってその内容が正しいと思っているわけではないことである。誤りだと決めつけるのでもない。内容の正誤を判断するのはもちろん韓国の憲法裁判所だ。
 
 第一の感想は、これまで韓国で起こった反大統領デモや国会での弾劾などにおいては、推測や噂かもしれないことを理由に大統領の退陣が要求され、弾劾の決定まで行われた印象が強かったところ、答弁書はまさにそのことを問題とし、反論していることである。前置きで述べたように弾劾が正当か、答弁書が正しいか、今の時点でどちらかに軍配を上げるのではないが、両方の意見が正式に提示されたことに一種の満足感がある。これまでは沈黙を続ける大統領に対する一方的な攻撃の連続であった。

 第二に、日本の立場から見た感想だ。前任の李明博大統領、さらにその前の盧武鉉大統領は朴槿恵大統領の現在の状況と同じころ、つまり任期の終了を間近に控えて日本に対して非友好的な行動を取った。
 李明博氏は2012年の8月、韓国の大統領として初めて竹島へ上陸した。
 盧武鉉大統領はやはり2005年の5月、ドイツを訪問して日本の国連常任理事国入りに反対を表明し、さらに日本をナチスドイツと同様に批判しようと共同宣言を持ちかけ、逆にドイツ政府から猛批判・猛反発を受けた。
 これに比べ、朴槿恵大統領の対日姿勢は、就任当初は日本に厳しかったが、今は日本との協力を重視するようになっている。
 国家指導者の行動には複雑な理由があるので、結果だけを単純に比較すべきでないのはもちろんであり、朴槿恵大統領も欧州訪問に際して日本に対して厳しい発言をしたが、日本の利益の観点からすれば朴槿恵大統領は高く評価できる面がある。だから不名誉な辞任に追い込まれることなく任期を全うすることを望みたい。

 ここには言及しない重要な問題、たとえば朝鮮を植民地としたことについては日本として責任がある。またそのことには複雑な事情が絡んでいる。そういうことはわきに置いたうえでの感想だ。

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