平和外交研究所

1月, 2022 - 平和外交研究所 - Page 2

2022.01.17

北朝鮮によるミサイル発射実験

 朝鮮中央通信は1月15日、「北朝鮮の北西部・平安北道の鉄道機動ミサイル連隊が14日に射撃訓練を行い、2発の戦術誘導弾が朝鮮東海(日本海)上に設けられた目標に命中した」と報じた。
また、「全国的な鉄道機動ミサイルの運用システムを樹立させるため、鉄道機動ミサイル戦法をさらに完成させる問題を議論している」と、今後もミサイルの発射実験を継続することを示唆した。

 北朝鮮は、今月に入って5日と11日に「極超音速ミサイル」の発射実験を行っており、今回は「2発の戦術誘導弾」の射撃訓練であったと報道しているが、通算すれば3回目のミサイル発射であり、昨年9月以降では6回目であった。

 北朝鮮のミサイル能力が向上すれば、韓国や日本に対する脅威が増大する。米国にとっても東アジアの安全保障を維持する観点から深刻な問題である。

 新しいミサイルとなれば、技術面からの分析が必要であり、日米韓の関係機関は情報入手が困難な中であるが、評価に努めている。どの方角に向け発射されたか。速度はどのくらいか。日本の排他的経済水域内に落下したか、あるいは外であったか、など基本的な事実関係を確認するだけでも大変な手間がかかるだろう。

 国連安保理では米国や日本は素早く対応しようと動いた。日本と米英仏などは、10日の緊急会合前に共同声明を発表し、「5日の弾道ミサイル発射は、複数の安保理決議に対する明確な違反だ」と非難した上で、北朝鮮に対し、大量破壊兵器や弾道ミサイル計画を放棄し、意味ある対話に参加するよう求めた。

 この共同声明は、中国やロシアは北朝鮮に対して強い措置を取ることに反対することを見越しての行動だったのであろう。実際、安保理としては結論をだせなかった。

 米国は12日、大量破壊兵器と弾道ミサイル開発に要する物資を調達した北朝鮮国籍の個人6人とロシア国籍の個人1人の計7人に制裁を科した。できる範囲で対応していこうという姿勢である。

 しかし、誠に残念かつ腹立たしいことながら、北朝鮮はミサイルなどの発射実験を止めないだろう。金正恩総書記は、昨年12月31日、労働党中央委員会総会を締めくくる演説で、「生死をかけた偉大な闘い」に直面しているとし、過去1年の主要成果として「超近代的な兵器システム」を次々と開発したと述べていた。そのような考えが昨年秋以来の度重なるミサイル発射実験となっているのである。

 一方で、金総書記は、2022年の主要目標として経済発展の飛躍的開始と人民の生活向上を掲げた。演説の中での比重は国内問題のほうが重く、対外関係への言及はそれに比べればわずかであった。2018年の新年演説で平昌オリンピックに参加することを表明した際とは大違いであった。

 バイデン政権の高官は米国から交渉の開始を呼びかけているが、北朝鮮側は反応してこないという。金正恩氏は、米国は本気でないと判断し、米国に対して、このままでは何事も解決しないことを訴え、北朝鮮に対する中途半端な姿勢を改めるべきだと促しているのだと思う。

 バイデン政権が中国との関係に力を入れる一方、北朝鮮に対しては、制裁はじめ従来からとってきた考え方を維持していくのは常識的である。しかし、それでは北朝鮮との関係は進まない。北朝鮮との関係を本当に動かすのであれば、トランプ元大統領が見せたような常識外れの行動が必要なのではないか。

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