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2015.02.05
富山大学極東地域研究センターの堀江典生教授は、「ロシア極東地域は中国からの経済圧力と人口圧力を脅威とする中国脅威論が盛んに議論されてきた地域である。ロシア極東地域の農地活用において中国との協力に期待を寄せつつも、いざ中国からの投資を呼び込もうとするとある種のブレーキがかかる文脈がこの地域にはある」と指摘している。どのようなブレーキかについては、「ロシア極東地域側の受け止め方は複雑である。中国企業のアムール州進出では化学肥料・農薬の大量投入により農地が傷んだり、アムール州の農業企業で雇われる中国人労働者が不法移民であったりすることが、頻繁にロシアで報道されている。」そして、「アムール州では、農業労働力を外国人労働力、特に中国人労働力に依存していると言われているなか、2013年に中国人農業労働者への外国人労働許可割当をゼロとする思い切った方針を打ち出した。アムール州は、太平洋への出口として良好な港をもつ沿海地方やハバロフスク地方とは異なり、中国にしか国際的な出口がない。それゆえ、中国国境地域と本来強い補完性を労働力においても貿易においてももつアムール州のこうした動きは、進展するロシア極東地域開発において、新たな中国脅威論の火種となる可能性をもつ。ただし、こうした中国人農業労働者の動向を伝える報道は、しっかりとした根拠に基づいたものばかりとは限らず、農業部門に限った中国人農業労働者の就労実態について学術的な分析はまだまだ限られている。」と述べている。
(堀江教授の論文「アムール州にみるロシア極東農業と外国人労働者問題」から抜粋)
香港の鳳凰台(フェーニックスTV)や米国に本拠を置く多維新聞(それぞれ1月27日、28日)は土地の無償提供のニュースに敏感に反応して、要旨次のように報道した。
○極東地域の土地を無償で提供するという提案は、極東連邦区のトゥルトゥネフ代表によって行われた。この地域の労働力は激しい減少傾向にあるからである。対象となるのはロシア人である。使途に制限はなく、農業、林業、狩猟場あるいはリゾートなど何でもよい。提供される土地の広さは1人につき1ヘクタールである。
○中国人でも極東地域に10年以上居住している者は土地を得る資格がある。10年に満たなければ、土地をロシア人から賃借することができるであろうから、この提案は中国人労働者にとって大きな意味がある。
○極東地域に居住する中国人の数は20万人を超える。さらに多数の中国人労働者がロシア領内に来る可能性がある。2013年、国境を越えてロシアに入境した中国人の数は68・9万人であった。そのうち居住許可を得たのはわずかに1240人であり、この他、8・2万人が労働許可を得た。したがって、入境した中国人の88%は違法移民であったことも問題である。
○中国の国家開発銀行はこの地でのインフラ建設などのために50億米ドルを投資する予定である。
○このような状況からロシアでは警戒心が強まり、現在大議論になっている。土地を得たロシア人が将来中国人に売却する可能性もあり、将来中国人によって主権を奪われる結果になると心配する者もいる。
○しかし、極東地域は中国人労働力に依存せざるをえない。日本や韓国の企業も参入しているが、それだけでは足りない。2012年5月にも、ロシアの経済発展部門は極東沿海地域の数百万ヘクタールの土地を中国人に長期賃貸し、農業の市場化に役立てる方針を発表した経緯がある。
中国に膨大な労働力があることは、かつては必ずしも利点でなかったが、今や中国の力の源泉になっている。そのことが顕著に表れるのがロシアの極東地域である。ロシアの力が弱まっていると即断することはできないが、石油価格の下落やウクライナ問題に加えこのような極東地域の状況を見ていると、「勢いのある中国」と「受け身のロシア」というコントラストになっていると思われてならない。
ロシアにおける中国人労働者
最近、ロシア極東地域で住民に土地を無償で与えるという提案が行われた。プーチン大統領は原則賛成らしい。かなり特殊な提案であるが、ロシアと中国の両方にまたがる問題が背景にある。富山大学極東地域研究センターの堀江典生教授は、「ロシア極東地域は中国からの経済圧力と人口圧力を脅威とする中国脅威論が盛んに議論されてきた地域である。ロシア極東地域の農地活用において中国との協力に期待を寄せつつも、いざ中国からの投資を呼び込もうとするとある種のブレーキがかかる文脈がこの地域にはある」と指摘している。どのようなブレーキかについては、「ロシア極東地域側の受け止め方は複雑である。中国企業のアムール州進出では化学肥料・農薬の大量投入により農地が傷んだり、アムール州の農業企業で雇われる中国人労働者が不法移民であったりすることが、頻繁にロシアで報道されている。」そして、「アムール州では、農業労働力を外国人労働力、特に中国人労働力に依存していると言われているなか、2013年に中国人農業労働者への外国人労働許可割当をゼロとする思い切った方針を打ち出した。アムール州は、太平洋への出口として良好な港をもつ沿海地方やハバロフスク地方とは異なり、中国にしか国際的な出口がない。それゆえ、中国国境地域と本来強い補完性を労働力においても貿易においてももつアムール州のこうした動きは、進展するロシア極東地域開発において、新たな中国脅威論の火種となる可能性をもつ。ただし、こうした中国人農業労働者の動向を伝える報道は、しっかりとした根拠に基づいたものばかりとは限らず、農業部門に限った中国人農業労働者の就労実態について学術的な分析はまだまだ限られている。」と述べている。
(堀江教授の論文「アムール州にみるロシア極東農業と外国人労働者問題」から抜粋)
香港の鳳凰台(フェーニックスTV)や米国に本拠を置く多維新聞(それぞれ1月27日、28日)は土地の無償提供のニュースに敏感に反応して、要旨次のように報道した。
○極東地域の土地を無償で提供するという提案は、極東連邦区のトゥルトゥネフ代表によって行われた。この地域の労働力は激しい減少傾向にあるからである。対象となるのはロシア人である。使途に制限はなく、農業、林業、狩猟場あるいはリゾートなど何でもよい。提供される土地の広さは1人につき1ヘクタールである。
○中国人でも極東地域に10年以上居住している者は土地を得る資格がある。10年に満たなければ、土地をロシア人から賃借することができるであろうから、この提案は中国人労働者にとって大きな意味がある。
○極東地域に居住する中国人の数は20万人を超える。さらに多数の中国人労働者がロシア領内に来る可能性がある。2013年、国境を越えてロシアに入境した中国人の数は68・9万人であった。そのうち居住許可を得たのはわずかに1240人であり、この他、8・2万人が労働許可を得た。したがって、入境した中国人の88%は違法移民であったことも問題である。
○中国の国家開発銀行はこの地でのインフラ建設などのために50億米ドルを投資する予定である。
○このような状況からロシアでは警戒心が強まり、現在大議論になっている。土地を得たロシア人が将来中国人に売却する可能性もあり、将来中国人によって主権を奪われる結果になると心配する者もいる。
○しかし、極東地域は中国人労働力に依存せざるをえない。日本や韓国の企業も参入しているが、それだけでは足りない。2012年5月にも、ロシアの経済発展部門は極東沿海地域の数百万ヘクタールの土地を中国人に長期賃貸し、農業の市場化に役立てる方針を発表した経緯がある。
中国に膨大な労働力があることは、かつては必ずしも利点でなかったが、今や中国の力の源泉になっている。そのことが顕著に表れるのがロシアの極東地域である。ロシアの力が弱まっていると即断することはできないが、石油価格の下落やウクライナ問題に加えこのような極東地域の状況を見ていると、「勢いのある中国」と「受け身のロシア」というコントラストになっていると思われてならない。
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