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2014.07.20

マレーシア機撃墜事件

6月17日、ウクライナ上空でマレーシア航空機が撃墜されたことについていくつか懸念されることがある。

第1に、事実関係の究明である。マレーシア機を撃墜したのはロシア製のミサイル「ブク」(S11)、その操作は高度な技術が必要、ミサイルはウクライナ領内から発射された、「ブク」がウクライナからロシア領へ運び出された、ロシアはそれを否定した、など基本的なことについて事実確認が必要であるが、これがスムーズに運ぶか。

墜落現場での調査が妨害なく行われるか。すでに、OSCE(欧州安全保障協力機構)の調査団が現地入りしたが、親ロシア派の兵士に止められ、退去せざるをえなかった。兵士は遺体の収容・移動を始めている。ウクライナ政府はハリコフに遺体の安置のためセンターを設置し、列車で300キロ移送する計画である。このセンターは受け入れも行なう。これらのことを含め現地での緊急措置と調査のために必要な現状の保存をどうするか。ウクライナ政府、OSCE、EUなどは目下対応を協議しているだろうが、どうなるか。

ロシアは国際的に批判的な目で見られている。今回の撃墜事件以前からロシアは親ロシア派に有形・無形の支援をしており、それをやめるべきだという圧力を受けていた。米欧とロシアの間には政治的な要素、白黒で判定できない要素もあろうが、ロシアが対応を迫られることが多いのは否定できない。ロシアは10項目の質問状をウクライナに出したそうだが、それは物事を進めるうえで有効か分からない。プーチン大統領は事件後対話の再開を呼びかけたそうだが、対話はウクライナ政府が呼びかけ、親ロシア派から対応がないままになっているのではないか。このような経緯はともかく、ロシアの言うように対話を再開するのも一案かもしれないが、その後の展開はどうなるか分からない。

ロシアが親ロシア派の扱いに手を焼いている可能性もあるが、「ロシアは公正な立場、親ロシア派は血縁関係を頼りにわがままを言い放題」という可能性は低い。ロシアはやはり力に頼って紛争を有利に導こうとする傾向が強いのではないか。ウクライナの国境付近にロシア軍を展開させていたことに関しても、国家の内部でどこに軍を置こうと主権の問題であり、外国からとやかく言われる筋合いのことではないという考えがロシアの内部にあった。エネルギーの代価を支払わないのはウクライナが悪いのは間違いないが、だからと言ってそれを止めてしまうのは人道上の観点からも問題である。

ロシアに対する風当たりは確実に強くなっている。米欧は制裁を強化する方針だし、11月にオーストラリアで開催予定のG20にも予定を変えて招待すべきでないという声が上がっている。このような国際社会の流れをロシアはどのように読み、どのように対応しようとしているのか。まさか冷戦時代と同じように、西側と対抗するのに力に頼るのが上策と考えているとは思いたくないが、ロシアから出てくる反応は、根拠を示せないままウクライナや西側を非難することが多いのではないか。

中国はウクライナ問題ではロシアと立場を異にしているが、それでもロシアをできる限り応援しようとしている。中国もまた力に頼る傾向があるが、政治的にはロシアよりはるかに巧妙である。経済的にも、ロシアのように資源依存傾向の強い経済でなく、多彩である。BRICsは最近開発銀行を設立することに合意した。その際も中国の積極的な振る舞いに比べ、ロシアの影は薄かったのではないか。


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