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2020.04.12

経済対策は緊急事態への対処か

4月7日、緊急事態宣言とともに発表された事業規模108・2兆円の緊急経済対策(以下「経済対策」)は、国民の間では緊急事態に対処するために策定されたものだという印象が強かった。状況からしてそのように受け止められたのは当然であった。発表後、エコノミストの間でも緊急事態への対処としてどの程度効果的であるかという観点からのコメントが多かった。

しかし、新型コロナウイルスによる感染問題への対処は経済対策の一側面に過ぎず、それには異なる目的の対策が盛り込まれていた。

感染拡大が収まるまでの対策(第1段階)だけでなく、その後に経済回復をめざすための対策(第2段階)が盛り込まれていたことである。後者は緊急事態への対処が目的でない経費である。

安倍首相が強調した総額6兆円超の現金給付についてもその対象は明確でなかった。安倍首相は「生活や事業を支援する策として、収入が減った低所得世帯などに5月にも現金30万円を給付する」と説明したが、その中には新型コロナウイルス問題により収入が減った世帯とそうでない理由で収入が減った世帯と両方が含まれているのではないか。少なくとも説明からはそう解さざるを得なかった。

給付の対象は「収入が減った低所得世帯」(30万円を1300万世帯に)と「中小・小規模事業者」(減収分として最大200万円、フリーランスを含めた個人事業者に最大100万円)という説明にも同じ問題があった。その中にはコロナ関連経費と非コロナ関連が含まれるからである。

非コロナ関連に何もしなくてよいといっているのではない。今回の宣言に際しては、前者が優先されるべきだといっているのである。

つまり、今回の経済対策は緊急事態に絞られていなかったので性格が不明確で、分かりにくかった。国民に大規模な対策を打ち出すことへの理解を求めるには緊急事態に絞った対策にしたほうがよかったと思う。

政府の緊急事態への認識はやはり甘いと思う。一方、経済困難な人たちを救おうという意識は強かった。極端かもしれないが、今回の経済対策は、一見緊急事態に対応して打ち出されたように見えたが、実はそうでなく、経済的に困難な人たちへの対策だったのである。

第2段階のことについては、今回の経済対策でおしまいということにならない。未曽有の困難が発生したのであり、今後も緊急経済対策が必要になるのは目に見えている。第2段階はその中で検討していくのが望ましい。

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