中国
2015.02.23
経済面では、中国が天安門事件を経て改革開放路線に復帰してから、すなわち1990年代の初頭から協力関係が目立って進展した。大型のプロジェクトが次々に実現し、現在建設中のGandhara新空港の建設に中国企業はパキスタン企業とともに参加している(設計はフランス、シンガポールなどの企業)。中国はまた、カラコルム・ハイウェイの延長・拡張、パキスタンのChashma原子力発電所の建設に協力し、原子炉も供給している。2006年には両国共同でHaier・Ruba経済特区を開設した。これは中国として初の海外における経済特区である。現在は中パ両国で貿易経済発展5カ年計画を進めている。
イランとの国境に近いグワダル(Gwadar)での深海港建設工事は中国の中東への進出の関連でとくに注目されている。計画は1993年から進められ、第1期工事は中国企業により2007年に完成し、現在第2期の工事中である。この間、2013年に中国は同港の運営権をシンガポールのPSA社から獲得した。新港の運用は2015年の4月に開始される予定である。
グワダルは1958年、元の所有者であったオマーンからパキスタンが購入した時は漁村であったが、ペルシャ湾とホルムズ海峡への海路を扼する絶好の地点にあるので港が建設され、さらに深海港に改良されているのである。
機能的には、中国の海上シルクロード建設にとって重要な拠点となっている他、同港から新疆自治区へ延びるパイプラインも建設中であり、これが完成すれば中東から中国への石油輸送のルートが海上と陸上の2本になる。ただし、陸上のルートはタリバンの影響が強い地域を経由しているので建設は順調に進展していないと言われている。
中国とパキスタンの関係に、近年アフガニスタンが絡むようになっている。アフガニスタンではタリバン政権が打倒された2001年以降も多くの地域で紛争が続き、米軍はじめ各国の部隊が安定化に努めてきたが、すでに撤退傾向になっており、米軍は2016年末までに完全撤退すると発表されている。
この間、中国は多国籍軍にはいっさい参加しなかったが、アフガニスタンと中国との関係は進展し、カルザイ前大統領は5回訪中した。2014年9月に就任したガニ新大統領はその翌月中国を訪問した。北京でアフガニスタン地域協力に関するイスタンブール・プロセス外相会議第4回会合が開かれるのに出席するのが目的であったが、アフガニスタンの新大統領として初の外国訪問が中国となった。ガニ大統領と習近平主席の会談後に発表された共同声明では、中国は、今後4年間で計20億元(約360億円)の無償援助の提供、アフガニスタンにおける鉱山や油田の開発支援、アフガニスタン技術者3千人の育成支援などが発表された。
このような状況は中国内でも驚きをもって見られるほど急激で、予想を超えるものであり、中国外交としては成果を上げた形になっているが、アフガニスタンの安定化に協力してきた諸国から見れば複雑な気持ちであろう。2001年以降、各国は重い負担を強いられ、米国は5千人近い兵士を犠牲にしながら、経済的な支援を行なってきた。今後もこれらの諸国の経済面での協力は前述のイスタンブール・プロセスのような多国間協力を中心に進められる。アフガニスタンとしては西側の協力は決定的に重要であり、弱体化しないようあらゆる努力を続ける必要がある。したがって、中国の影響力の増大にはおのずと限界があると思われる。
ガニ大統領が3月に米国を訪問するのは当然である。また、米国は就任早々のカーター国防長官をアフガニスタンへ派遣し、オバマ政権が、来年末までとしている駐留米軍の撤退期限の延長を検討していることをガニ大統領に伝えた。米国の方針変更は、アフガニスタンの状況が不安定なまま推移していることが最大の理由であろうが、中国とアフガニスタンとの関係強化も当然意識しているものと思われる。
中国にとってはアフガニスタンとの外交関係もさることながら、タリバンおよびイスラム勢力との関係も重要な問題である。タリバン政権下でアフガニスタンは新疆自治区の反政府分子の逃避先になっており、現在も過激派ウイグル人はタリバンと関係を保っている。もしアフガニスタンの情勢が悪化しタリバンの力が強くなると中国にとっての危険が増すので、中国としては新疆自治区の反政府分子をコントロールするためにもアフガニスタン政府に期待するところ大である。
今年に入ってからアフガニスタン当局は15人のウイグル人を拘束し、中国当局に引き渡した。その際、パキスタン政府がタリバン、あるいは直接でなくてもタリバンに近いパキスタンの武装グループを通じて、アフガニスタン政府と交渉に応じるよう説得するよう中国に要請したと報道されている(ロイター電2月20日)。本来はアフガニスタン政府がタリバンと交渉すればよいのであるが、それが実現しないのでアフガニスタン政府はタリバンに影響力があるパキスタン政府、さらには中国政府にも頼み込むという複雑な関係になっているわけである。
中国の「海上シルクロード」続き3
中国とパキスタンは長らく友好関係にあり、とくに、政治・軍事面では1960年代から緊密であった。両国ともインドと対立していることが背景になっている。1998年、パキスタンがインドに続いて核実験を行えたのは中国からの協力があったからである。経済面では、中国が天安門事件を経て改革開放路線に復帰してから、すなわち1990年代の初頭から協力関係が目立って進展した。大型のプロジェクトが次々に実現し、現在建設中のGandhara新空港の建設に中国企業はパキスタン企業とともに参加している(設計はフランス、シンガポールなどの企業)。中国はまた、カラコルム・ハイウェイの延長・拡張、パキスタンのChashma原子力発電所の建設に協力し、原子炉も供給している。2006年には両国共同でHaier・Ruba経済特区を開設した。これは中国として初の海外における経済特区である。現在は中パ両国で貿易経済発展5カ年計画を進めている。
イランとの国境に近いグワダル(Gwadar)での深海港建設工事は中国の中東への進出の関連でとくに注目されている。計画は1993年から進められ、第1期工事は中国企業により2007年に完成し、現在第2期の工事中である。この間、2013年に中国は同港の運営権をシンガポールのPSA社から獲得した。新港の運用は2015年の4月に開始される予定である。
グワダルは1958年、元の所有者であったオマーンからパキスタンが購入した時は漁村であったが、ペルシャ湾とホルムズ海峡への海路を扼する絶好の地点にあるので港が建設され、さらに深海港に改良されているのである。
機能的には、中国の海上シルクロード建設にとって重要な拠点となっている他、同港から新疆自治区へ延びるパイプラインも建設中であり、これが完成すれば中東から中国への石油輸送のルートが海上と陸上の2本になる。ただし、陸上のルートはタリバンの影響が強い地域を経由しているので建設は順調に進展していないと言われている。
中国とパキスタンの関係に、近年アフガニスタンが絡むようになっている。アフガニスタンではタリバン政権が打倒された2001年以降も多くの地域で紛争が続き、米軍はじめ各国の部隊が安定化に努めてきたが、すでに撤退傾向になっており、米軍は2016年末までに完全撤退すると発表されている。
この間、中国は多国籍軍にはいっさい参加しなかったが、アフガニスタンと中国との関係は進展し、カルザイ前大統領は5回訪中した。2014年9月に就任したガニ新大統領はその翌月中国を訪問した。北京でアフガニスタン地域協力に関するイスタンブール・プロセス外相会議第4回会合が開かれるのに出席するのが目的であったが、アフガニスタンの新大統領として初の外国訪問が中国となった。ガニ大統領と習近平主席の会談後に発表された共同声明では、中国は、今後4年間で計20億元(約360億円)の無償援助の提供、アフガニスタンにおける鉱山や油田の開発支援、アフガニスタン技術者3千人の育成支援などが発表された。
このような状況は中国内でも驚きをもって見られるほど急激で、予想を超えるものであり、中国外交としては成果を上げた形になっているが、アフガニスタンの安定化に協力してきた諸国から見れば複雑な気持ちであろう。2001年以降、各国は重い負担を強いられ、米国は5千人近い兵士を犠牲にしながら、経済的な支援を行なってきた。今後もこれらの諸国の経済面での協力は前述のイスタンブール・プロセスのような多国間協力を中心に進められる。アフガニスタンとしては西側の協力は決定的に重要であり、弱体化しないようあらゆる努力を続ける必要がある。したがって、中国の影響力の増大にはおのずと限界があると思われる。
ガニ大統領が3月に米国を訪問するのは当然である。また、米国は就任早々のカーター国防長官をアフガニスタンへ派遣し、オバマ政権が、来年末までとしている駐留米軍の撤退期限の延長を検討していることをガニ大統領に伝えた。米国の方針変更は、アフガニスタンの状況が不安定なまま推移していることが最大の理由であろうが、中国とアフガニスタンとの関係強化も当然意識しているものと思われる。
中国にとってはアフガニスタンとの外交関係もさることながら、タリバンおよびイスラム勢力との関係も重要な問題である。タリバン政権下でアフガニスタンは新疆自治区の反政府分子の逃避先になっており、現在も過激派ウイグル人はタリバンと関係を保っている。もしアフガニスタンの情勢が悪化しタリバンの力が強くなると中国にとっての危険が増すので、中国としては新疆自治区の反政府分子をコントロールするためにもアフガニスタン政府に期待するところ大である。
今年に入ってからアフガニスタン当局は15人のウイグル人を拘束し、中国当局に引き渡した。その際、パキスタン政府がタリバン、あるいは直接でなくてもタリバンに近いパキスタンの武装グループを通じて、アフガニスタン政府と交渉に応じるよう説得するよう中国に要請したと報道されている(ロイター電2月20日)。本来はアフガニスタン政府がタリバンと交渉すればよいのであるが、それが実現しないのでアフガニスタン政府はタリバンに影響力があるパキスタン政府、さらには中国政府にも頼み込むという複雑な関係になっているわけである。
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