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2014.12.27

南沙諸島・東沙諸島に対する台湾の実効支配

中国の南沙諸島での行動には各国の注意が向く一方、台湾の行動が話題に上ることは少ない。目立った変化はないからであるが、久しぶりに台湾の新聞が台湾政府の動きを報道している。

南沙諸島で最大の島である太平島は、中国と周辺の東南アジア諸国も領有権を主張しているが、実効支配しているのは台湾である。現在、海岸巡防署(日本の海上保安庁に当たる)の施設があるが、島の防衛能力を高めるために、要員の配置、装備などを強化しなければならないという議論が以前から存在しており、台湾政府は現在滑走路と埠頭を拡張する工事を進めている。
台湾政府はさらに、この島に灯台を建設する決定を行なった。1年くらい前から準備が進められ、すでに建設設計業者の入札も終わっている。工事が完成すれば、C130輸送機やP3C対潜哨戒機も発着可能になる。
しかし、南沙諸島でこのような工事をすれば、実効支配を強化しようとしていると関係諸国からクレームがつく恐れがある。台湾政府は、灯台は海難を防止するのに役立つ、付近の海域を航行しているのは台湾船よりフィリピンやベトナムの船が多いので歓迎されるはずだと説明しているが、それは自らに都合のよい議論でしかないかもしれない。

東沙島は若干の岩礁とともに東沙諸島を形成しており、やはり第二次大戦終了以来の経緯で台湾が実効支配している。この島は東沙諸島の中で満潮時にも水没しない唯一の島で、もともと無人島であったが、領有権問題があるので台湾政府は軍関係者を常駐させており、滑走路の他宿泊施設やテニスコートなども建設している。
東沙諸島は南シナ海のなかで中国に最も近く、それだけ中国の圧力は強くなるが、台湾は死守しており、国内的にも関心は強い。2008年2月、台湾の総統選挙の直前であったにもかかわらず陳水扁総統がこの島を視察したのは強い指導者であることを、中国嫌いの台湾人にアピールするためだったのであろう。
これに対し中国は抗議の声を上げる一方、翌3月の総統選挙に乗じ、東沙島から1kmの海域に大量の漁船を派遣し、貨物廃船を使って2万8千平方メートルの広さで30人が常駐可能な簡易漁船基地を構築した。驚いた台湾政府はこれをただちに撤去した。
馬英九新総統は選出から半年後の2008年9月に東沙島を視察している。馬英九は中国との関係で柔軟であり、そのために2014年末の地方選挙で惨敗を喫したのであるが、そのような政治傾向であっても東沙島については台湾内部の世論に配慮する必要があったのである。
東沙島についてもかねてから灯台建設問題があり、2009年、建設計画が作成されたが、しかし緊急性はないと判断され延期となった。灯台は付近を航行する船舶の便宜のためというのが建前であるが、領有権問題の影が及んでいたのである。このような経緯にかんがみ、南沙諸島の太平島で灯台を建設する決定は東沙島にも影響するのではないかと見られている。

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