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中国

2020.09.04

中国における「法治」の実態

 中国の司法に問題が多々あることは周知のことであるが、以下に紹介する中国紙『澎湃新闻』9月3日付の記事は、なかでも極端なケースを伝えている。この報道によれば、中国ではひどい腐敗が今でも横行し、「法治」とは言えない状況が続いている。また、共産党員になる審査の中には極めてずさんに行われているものがある。共産党員は現在も増え続け、9千万人を超えているが、かなり水増しされていることがうかがわれる。

 「事件は1992年5月、内蒙古自治区フルンベア市で発生した。18歳のバトムンフが19歳の白永春を刺殺したのだ。翌年9月、裁判の判決が下り、バトムンフは15年の懲役刑と2年間の政治権利はく奪を受け、控訴しなかったので判決は確定した。
 バトムンフは拘置所から監獄へ移送されるはずだったが、同人は全身のむくみと血尿のため、病院へ送られ、同人の母親と伯父が病院治療を続けることの許可を得た。ところが、その病院治療許可の条件はまったく無視されたまま普通の生活に戻った。つまり、一回も監獄の門をくぐらないまま、事実上自由の身となったのであった。
 15年後の2007年5月、バトムンフと母親が元の拘置所を訪れ、「刑期満了釈放証明書」の交付を求めた。その時提出したのは元の判決書だけであったが、拘置所は証明書を捺印してあたえた。かくして、バトムンフは1日も服役しないまま、書面上は完全に服役したことになった。
 その以来、バトムンフは一転して活動的になり、まず出身村の村長になった。2009年には共産党に入党した。入党申請書は不完全であったが問題にされなかった。さらにバトムンフは地元の全人代代表にも選ばれた。
 しかし、殺害された白永春の母親の粘り強い訴えに当局も黙視していることはできなくなり、バトムンフに対する調査が開始された。すると、村長時代に「草原生態補助金」を着服していたことなどが発覚し、2018年、殺人罪、汚職、など数件の犯罪があらためて認定され、15年の懲役刑、罰金20万元、政治権利はく奪2年を言い渡された。また、この間党籍をはく奪された。
 なぜ病院治療だけで終わらせたのか、刑期満了釈放証明書を発行したのはだれの責任か、などはまだ解明されていない。74歳の白永春の母親は調査が進み、消えてしまった証拠書類が発見される日を待ち望んでいる。」

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