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2020.01.11

中国はまた国有企業を改革しようとしている

 中国政府は1月5日、「中国共産党基層組織工作条例(試行)」を発表した。この条例(日本語では「規則」あるいは「規定」という意味)は重要文献として2日後から単行本で販売されている。新規則に関する在米の中国語新聞『多維新聞』が行っている論評などから、重要点は次の通りであるとみられる。

 本規則は中国共産党の末端組織の活動を強化することが趣旨であり、習近平政権がこれまで重要課題として実行してきた党の強化をさらに進めること、なかでも国有企業における党と企業の関係を変え、党の指導性を強化することを目的として制定されたものである。今後、中国の国有企業は共産党の指導に従うことを定款に書き入れることになるという。多維新聞は本規則によって「党政分離の原則は廃止された」と断じている。

 一方、「党政分離」原則の廃止については、「歴史を後戻りさせることだ」という反対意見があることを多維新聞は示唆しつつ、「西側の企業でも最近、経理部門が取締役会を骨抜きにする現象が起こっており、企業の基本である所有権、管理権および経営権を分離する方式は現実的でなくなっている」、「党政分離は30年前の固い思想、20年前の低レベルの競争の時代には正しかったが、産業が高度に集中する傾向にある今日、依然として党政分離だの自由な市場経済などと主張するのは硬直した思想である。中国が百年間なかった大変動のさなかにある今日、国有企業の利点を発揮させることが重要な目標である」として今回の新規則を擁護している。

 他方、これまでの国有企業で生じた問題として次のようなことを挙げている。腐敗の蔓延。独立王国の弊害。浪費。独占的経営の消極的姿勢。党による監督を廃止し、労働者委員会による監督方式に改めた結果問題が一層激化した。国有企業は経理部門が支配する独立王国と化しており、機構が巨大化して下部組織の力が強くなりコントロールが効かなくなっている。

 多維新聞は、中国は現在「全国統一市場」を形成を図っていること、民営企業に徐々に資源分野への参入を認めつつあること、「集団式プライマリー科学技術イノベーション」方式を進めようとしていることなども指摘している。また、中国の国有企業改革は、もはや「公有制」や「私有制」というレベルや、古い精神論で解決できることでない。いかにして企業を「正規化、集団化」させることが課題であり、これらは市場経済学者が回答を示せることでないと主張している。

 しかし、多維新聞が指摘している問題の多くは、中国がWTOに加盟する前に存在していたことである。また、そもそも、党の指導性が強くなれば国有企業が本来の力を発揮できるか、素人が企業経営に介入しても大したことにならない、と思われてならない。今回の規則で、中国の国有企業がはたして期待された通りの効果を上げられるか。道はまだ遠いと思われる。

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