中国
2017.09.27
程永華大使は2010年2月、駐日大使として着任した。それからわずか半年後に中国漁船が尖閣諸島海域に侵入し、海上保安庁の巡視船に突っ込むという事件がおこり、日本政府は東京と北京で中国政府に抗議した。東京で矢面に立ったのが程永華大使であった。それ以来、尖閣諸島に関して問題が生じるたびに程永華大使は呼び出され、抗議された。そういうことが何回も繰り返された。
程永華氏は、日中国交正常化の翌年、中国政府派遣の第1期留学生として来日。日本の大学に通って日本語を習得した。その日本語は「習得した」という表現では尽くせないくらい見事である。私がはじめて程永華氏に会ったのは、同氏が通訳をしていたときであったが、最初は「中国語がこれほど上手な日本人がいたか」と思ったことを記憶している。中国外務省には現外相の王毅氏をはじめ日本語が達者な人は多数いるが、程永華氏はぴか一である。
程永華氏の私生活は知らないが、人柄はよく、誰からも好かれるタイプのように見える。中国人にもさまざまなタイプがあるが、人格的にも程永華氏は極めて優れた人物だと思う。そのような程永華氏が着任以来相次ぐトラブルに見舞われたのは気の毒なことであった。日本政府の抗議を受けた回数は、先輩のどの大使よりはるかに多かっただろう。主たる原因は尖閣諸島の関係である。大使ご自身もそのような状況にあったことをさりげなくぼやいていたのを思い出す。冒頭で述べた程永華氏の「多くの混乱云々」の発言には重い実感がある。
しかし、こと尖閣諸島の問題になると程永華大使も「昔から中国の領土だ」としか言わない。中国は南シナ海においても同様であり、この一言しか言わない。それに対し、国際仲裁裁判所が中国の主張に根拠なしとの判決を下したのは周知である。尖閣諸島について訴訟は提起されていないが、もし同裁判所へ持ち込まれると同じ結論になると思う。
国際仲裁裁判所はさておいても、尖閣諸島の地位に関する古文献は中国にも残っており、明や清の公式文書は尖閣諸島が中国領でなかったことを明記している。
それでも中国政府は「昔から中国の領土だ」とだけ主張するのを方針としており、程永華大使もそれに従わざるを得ないのだろう。これは単なる推測でなく、確信である。
日本と中国が協力できる分野、しなければならない分野は少なくない。安全保障についても両国の関係が友好的であることは極めて重要だが、中国が中国共産党によって統治されている限り日本との間で埋めがたい溝があるのも事実である。その前提で、最適の解を求めていくしかない。
来月、中国共産党は第19回目の大会を開催する。習近平主席の独裁的地位はあらためて確認される。同党による一党独裁体制はますます強固になるが、中国の民衆はどうなるのか。一般の中国人の満足度は高まるか、あるいは不満が高じるか、5年後の第20回党大会のころには今より見通しが効くようになっているかもしれない。
日中国交正常化と程永華大使
日中国交正常化45周年を迎えて、程永華中国大使が記者会見で感想を述べている。「ここ数年、中日関係は多くの混乱にぶつかり、領土問題、歴史問題、海洋問題などが相次いで生じた」と。程永華大使は2010年2月、駐日大使として着任した。それからわずか半年後に中国漁船が尖閣諸島海域に侵入し、海上保安庁の巡視船に突っ込むという事件がおこり、日本政府は東京と北京で中国政府に抗議した。東京で矢面に立ったのが程永華大使であった。それ以来、尖閣諸島に関して問題が生じるたびに程永華大使は呼び出され、抗議された。そういうことが何回も繰り返された。
程永華氏は、日中国交正常化の翌年、中国政府派遣の第1期留学生として来日。日本の大学に通って日本語を習得した。その日本語は「習得した」という表現では尽くせないくらい見事である。私がはじめて程永華氏に会ったのは、同氏が通訳をしていたときであったが、最初は「中国語がこれほど上手な日本人がいたか」と思ったことを記憶している。中国外務省には現外相の王毅氏をはじめ日本語が達者な人は多数いるが、程永華氏はぴか一である。
程永華氏の私生活は知らないが、人柄はよく、誰からも好かれるタイプのように見える。中国人にもさまざまなタイプがあるが、人格的にも程永華氏は極めて優れた人物だと思う。そのような程永華氏が着任以来相次ぐトラブルに見舞われたのは気の毒なことであった。日本政府の抗議を受けた回数は、先輩のどの大使よりはるかに多かっただろう。主たる原因は尖閣諸島の関係である。大使ご自身もそのような状況にあったことをさりげなくぼやいていたのを思い出す。冒頭で述べた程永華氏の「多くの混乱云々」の発言には重い実感がある。
しかし、こと尖閣諸島の問題になると程永華大使も「昔から中国の領土だ」としか言わない。中国は南シナ海においても同様であり、この一言しか言わない。それに対し、国際仲裁裁判所が中国の主張に根拠なしとの判決を下したのは周知である。尖閣諸島について訴訟は提起されていないが、もし同裁判所へ持ち込まれると同じ結論になると思う。
国際仲裁裁判所はさておいても、尖閣諸島の地位に関する古文献は中国にも残っており、明や清の公式文書は尖閣諸島が中国領でなかったことを明記している。
それでも中国政府は「昔から中国の領土だ」とだけ主張するのを方針としており、程永華大使もそれに従わざるを得ないのだろう。これは単なる推測でなく、確信である。
日本と中国が協力できる分野、しなければならない分野は少なくない。安全保障についても両国の関係が友好的であることは極めて重要だが、中国が中国共産党によって統治されている限り日本との間で埋めがたい溝があるのも事実である。その前提で、最適の解を求めていくしかない。
来月、中国共産党は第19回目の大会を開催する。習近平主席の独裁的地位はあらためて確認される。同党による一党独裁体制はますます強固になるが、中国の民衆はどうなるのか。一般の中国人の満足度は高まるか、あるいは不満が高じるか、5年後の第20回党大会のころには今より見通しが効くようになっているかもしれない。
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