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2017.06.26

中国におけるインターネット規制の強化

 習近平政権は成立以来、腐敗取り締まりとともに言論統制を統治の主要手段としてきたが、6月1日に「インターネット安全法」を施行し、規制を一段と強化した。
 一言で言えば、インターネットを通じる活動はすべて国家が定める標準に適合しなければならないとするもので、ネットサービス業者は犯罪捜査に際し「技術的支援、協力」を義務づけられた。「国家の安全」のためという名目で営業秘密や技術が当局に事実上強制的に「召し上げられる」恐れもあるわけだ。また、データの国外持ち出しも規制された。
 この規制は内外の企業に適用され、日本企業への影響も大きい。「インターネット安全法」草案の発表以来、日本を含む多くの国の企業が強い懸念を示す文書を連名で中国政府に提出したが、中国政府は聞き入れず、法を施行してしまった。
 
 新法に基づき、国家ラジオ映画テレビ総局は、新浪微博、ACFUN網站(「A站」)、鳳凰網などの大手サイトが配信した映画や音楽が当局の許可を得ていないとして大量に削除してしまった。これらサイトの映画・音楽番組は全面的な修正を余儀なくされている。
 
 習近平政権がこのように極端な言論統制をするのは「国家の安全」「公共の利益」のためであり、そうしなければならないからだ。つまり、言論統制を厳しくしなければ現政治体制の維持がおぼつかなくなるという恐怖心があるからだろう。
 中国の著名な改革派論客の賀衛方北京大学教授が5月下旬、ソーシャルメディア上での「断筆」を宣言したのも象徴的な出来事であった。同教授は自身の公式アカウントが相次いで閉鎖されたので発信をあきらめざるをえなかったという。
 
 中国で有名な「財新」雑誌の胡舒立編集長は最近香港の飛行場で中国当局に拉致されたとうわさされている。「財新」はかねてから比較的客観的な報道をするので知られており、拉致事件は最近の言論規制強化と何らかの関連があると見るのが自然だろう。中国で最近活発に行われている有力企業の取り締まりを先頭に立って報道したのも「財新」グループであった。
 もっとも、胡舒立は習近平との関係がよいので大胆に発言できるのだといわれたこともあった。では、今回の拉致をどう解釈すべきか、ということも問題になりうる。

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