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2017.03.21

(短文)中国の議会(全人代)の民主化度合

 中国の全国人民代表大会(全人代)は3月5日から15日まで開催され、全体としては政府が描いたシナリオ通りに事が運び、2017年の国内総生産(GDP)成長率目標を「6・5%前後」とする政府活動報告や予算などが採択された。
 
 中国の全人代はもともと民主主義国家の議会とはまったく異なり、政府の活動を承認することだけが役割であった。つまり、全人代は中国も民主的だという体裁を示すための行事に過ぎなかったが、いつまでもそれだけではもたなくなり、ある程度は国民に発言させ、それを吸収することが必要になってきた。しかし、問題はどの程度そのような民主化が進んだかである。

 さる3月8日、当研究所HPの「(短文)中国の全国人民代表大会(議会)と国内の不満」では、李克強首相の「政府活動報告」は民衆の不満を取り上げているが、それは一部の問題に過ぎず、腐敗、不公平な資源配分、数字偏重の経済成長、環境悪化、失業など本当に深刻な問題は表に出していないという『多維新聞』(米国に本拠がある中国語の新聞)記事を紹介した。
 
 また、比較的客観的な報道で知られている香港の『明報』紙は、今次全人代で最高法院と最高検察院が行った報告に関し、上海社会科学院応用経済研究所の張泓銘研究員が、報告は昨年国民の関心を集めた3つの案件を完全に無視し、一言も触れていない、それで「法治」と言えるか、と発言したことを報道している。
 第1は、「雷洋」なる人物が買春の容疑で逮捕され拘留中に死亡した事件で、警察により撲殺された疑いがあったが、検察は「軽微」な問題として関与した5人の警察官を不起訴処分とした。
 第2は、長老による比較的自由な発言で知られていた『炎黄春秋』誌への党・政府の介入に関し、雑誌社側は裁判所に訴えたが、受理を拒否された案件だ。
 第3は、山東建築大学の鄧相超教授が毛沢東批判を行ったのに対し、左派勢力から攻撃され山東省政府から参与の地位を解かれ、さらに学校の前で「鄧相超を打倒せよ」を叫ぶデモが行われた件である。

 これらの案件の説明は、おそらく全貌が伝わっていないために、それほど深刻な問題でないという印象をもたれるかもしれないが、中国のインターネットで広く伝えられ、全国的に関心を集めた。
 その意味では、最高法院・検察院報告についての議論にも、全人代を民主化したいという願いが表れているようだが、張泓銘研究員自身は自己の発言があまり広がることに困惑気味であると『明報』は伝えている。要するに、この研究員もいったんは発言したが、政治問題化するのを警戒しているのである。驚くことではないが、全人代民主化の途はやはり遠いようだ。


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