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2013.09.09

四つの基本原則と習近平体制

「共識網(あえて訳せばコンセンサス・サイト)」が9月4日に、2008年に書かれた文章を掲載した。張顕揚という理論家がインタビューで語ったことを文章化したものであるが、張顕揚はこれが完成する3年前(2005年)に死亡していた。つまり、このインタビューはかなり以前に、おそらく今から10年くらい前に行なわれていたものと推測される。
その談話がどうして今頃になって出てくるのか。どのような意図、背景があるのか。たんなる歴史回顧でないことは確かである。
張顕揚は1979年1月18日、北京で開催された理論工作会議のことを語っている。160余名が参加し建国以来30年の理論宣伝工作の経験と将来について議論することが目的であった。前年末の中央委員会総会(第11期3中全会)で改革開放政策が決定され、文化大革命の混乱は過去のこととして近代的国家建設の遅れを取り戻そうという時であり、理論工作についても自由な立場から議論できる雰囲気であったらしい。
この会議は2回の休会を挟んで約2ヵ月間続き、後半の会議に出席した鄧小平は「四つの基本原則」を堅持することが必要だと総括した。これは、社会主義の道、プロレタリア独裁、中国共産党の指導およびマルクスレーニン主義・毛沢東思想であり、言わばコチコチの革命路線である。新しい政治情勢に心を弾ませていた参加者は冷水を浴びせられ、会議前半の自由な雰囲気は吹き飛び、以後この会議のことは肯定的に論じられなくなったそうである。
「纏足のようなよちよち歩きではだめだ」と大胆な改革の檄を飛ばした鄧小平のもう一つの側面をしめす一事であるが、この文章は次の言葉で締めくくられている。
「1979年の理論工作会議が解禁になることを望んではいけない。四つの基本原則に新しい説明を期待してもいけない。いつも上ばかり向いている必要はない。」
冒頭に述べたことに戻るが、今日の状況にも関連しているからこそ、「共識網」はわざわざこのような古い話を待ちだしたのであり、習近平体制下の中国で革命路線と経済建設路線をめぐってかなり深刻な意見の違いがあることがっここにも表れているように思われる。
「共識網」はどちらが重要と思っているのか。少なくとも二つの路線のバランスに気を配っていることは明らかであるが、締めくくりにはさらにつぎの後段がある。
「歴史の伝承には官と民の二つの道がある。民間の火はしばしば官によって抹殺されるが、いつか正しく受け入れられる日が来る。これとは反対に、官が強制した欽定の歴史は、いつかかならず唾棄され、歴史の殿堂から駆逐される。胡喬木(元中共政治局員 毛沢東の秘書を務めたり、憲法の起草にかかわった。一般には保守派、すなわち革命的路線を重視するとみられていた)は、「四つの基本原則はもたない。早晩憲法から引きずりおろされるだろう」と語っていた。中共当局にとっては、門を出たとたんにカラスの不吉な声を聞いたのも同然であっただろう」。これを見ると、「共識網」は四つの基本原則をあまり好いていないのかなと思われる。


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